ディスコグラフィーを辿りながらアーティストの歩みを紹介する連載。今回はモータウンから登場したロック・バンド!
モータウンといえばソウル音楽の名門レーベルですが、そのキャッチは〈Sound Of Young America〉ということで、人種を問わずに届く音楽を理想に掲げていました。ゆえに70年代に入る前後には多くの白人ロック系アクトも在籍しており(ニール・ヤングやミートローフも……)、なかでも最大の成果を上げたとされるのがレア・アースです。モータウン内でのレーベル名がバンド名と同じレア・アースだったことを考えても彼らは別格だったのでしょう。今回はヴァーヴ時代の初作からモータウンでの未発表ライヴ盤までがいずれも紙ジャケ仕様/高音質のMQA-CD+UHQCD仕様でリイシューされたばかり。その全8タイトルを改めて紹介しておきましょう! *bounce編集部
最初の5人組でリリースした記念すべき初アルバムにしてヴァーヴからの唯一のアルバム。前身のサンライナーズはよりガレージ感の強いリズム&ブルース・バンドという雰囲気だったが、ここではマイク・セオドア&デニス・コフィをプロデュースに迎えてグルーヴィーかつサイケなロック路線へと踏み出している。それでもシュープリームスの2曲を取り上げた“Stop/Where Did Our Love Go”、ウィルソン・ピケット“6-3-4-5”などプリミティヴなソウル・カヴァーは強力なレパートリーだったようだ。
当時10周年を迎えていたモータウンと契約し、セルフ・プロデュースで作り上げた2作目で、全米12位まで上昇してプラチナ認定に輝くベストセラーとなった。トラフィックの明快なカヴァーがあるほか、翌年にシングル・カットされて全米4位を獲得したテンプテーションズのカヴァー“Get Ready”もここでは21分半の長尺で披露! 今回のリイシューではアルバム後に出たシングル“Generation (Light Up The Sky)”など2曲を追加。US初回盤LPを再現したラウンドトップ型のダイカット紙ジャケも嬉しい。
エド・グスマン(パーカッション)を加えた6人組で放った3作目。再度テンプス曲を取り上げて全米7位になった“(I Know) I’m Losing You”は本家ノーマン・ホイットフィールドが制作にタッチし、その他の曲は熱い“Born To Wander”などを書いたトム・ベアードがプロデュースも担当している。ビートルズ“Eleanor Rigby”のヘヴィーなカヴァーなど幅広い楽曲を収めた佳作だ。今回の復刻では市場にほぼ出回らなかった幻のサントラ『Generation』(69年)からの世界初CD化も含む9曲をボーナス収録!
レーベルのLA移転に伴う転居の影響でギターとキーボードが交代し、アンサンブルがより強化された4作目。ハード・ロック解釈したレイ・チャールズ“What’d I Say”で幕を開け、後にNWAのサンプリングでもお馴染みになるファンキーな代表曲“I Just Want To Celebrate”は全米7位のスマッシュ・ヒットに。メンバー自作曲が増えたり、内ジャケのアートワークをロジャー・ディーンが手掛けていたりトピックも多し。今回のリイシューでは同年のアルバム未収録シングル“Hey, Big Brother”を追加。
レイ・モネット(ギター)とマーク・オルソン(キーボード)を加えた『One World』制作時のラインナップによる初のライヴ盤。ジャクソンヴィルのシヴィック・コロシアム、マイアミのマリン・スタジアム、NYのコーネル大学でのステージからジャム的な“Thoughts”も交えて名演を選りすぐり、ラストにはメンバーたちで共作したスタジオ録音の新曲“Nice To Be With You”も収めた変則的な構成となっている。ベスト盤的な選曲で活き活きとグルーヴの尻尾を伸ばしていく若々しいパフォーマンスが圧倒的だ。
ベーシストがマイク・ウルソに交代し、トム・ベアードとの共同プロデュースで制作された5作目。ここで初めてカヴァー曲がなくなり、ベアード作のシングル曲“Good Time Sally”など2曲を除けばメンバーたちの書いたオリジナル曲メインで構成されている。時代を映した社会派ナンバーから10分超えの大曲“I Couldn’t Believe What Happened Last Night”までストレートなロック志向の高まりが前に出た一作か。今回のリイシューではシングルB面曲の“Love Shines Down”もボーナス収録!
サイケデリック・ソウルの推進者たるノーマン・ホイットフィールドをプロデューサーに迎えた6作目で、テンプテーションズやアンディスピューテッド・トゥルースで名高い“Ma”“Smiling Faces Sometimes”“Hum Along And Dance”など全曲をホイットフィールド作品で固めている。A面は17分を超える“Ma”のみという大胆さ。今回のリイシューでは、フランク・ウィルソンと組んだ翌年のアルバム未収録シングル“Chained”とそのB面曲“Fresh From The Can”など5曲を追加!
2010年代になってから蔵出しされた幻のライヴ盤。もともとフランク・ウィルソン制作で予定されていた74年のアルバムが頓挫した代わりに2LPでラインナップされ、アセテート盤まで作られるも結局は未発表に終わっていたものだ。74年にシカゴのエリー・クラウン・シアターで録音され、2パート構成で20分に及ぶ“(I Know) I’m Losing You”から15分かけて疾走する“Get Ready”、ラストの“I Just Want To Celebrate”へ至る流れは絶品。満員となった会場の反応も絶頂期の勢いを物語る。
レア・アース
60年にサンライナーズ名義で結成されたデトロイトのロック・バンドで、68年に改名してヴァーヴと契約。結成時のメンバーはギル・ブリッジス(サックス/フルート)、ピート・リヴェラ(ドラムス/ヴォーカル)、ジョン・パーシュ(ベース)、ロッド・リチャーズ(ギター)、ケニー・ジェイムズ(キーボード)。69年にモータウンの新設レーベル=レア・アースと契約し、“Get Ready”(70年)や“I Just Want To Celebrate”(71年)などがヒットする。77年にプロディガルに移籍。以降もメンバーを交替しながら活動を継続し、2005年にはミシガン州ロックンロール・レジェンドの殿堂入り。2021年に唯一のオリジナル・メンバーとなったブリッジスが逝去して活動を終了した。