©David Edwards

アーティストの年代記をそのディスコグラフィーを辿ることで紹介する連載。今回は来日公演を控えたこの人気バンド!

 今年3月のベスト・アルバム『Hits To The Head』も記憶に新しいフランツ・フェルディナンドですが、この秋には実に4年ぶり、現体制では初となる来日ツアー〈FRANZ FERDINAND Hits To The Head Tour JAPAN 2022〉が実現。その開催を記念してこれまでのアルバムが紙ジャケ仕様/ステッカー封入/ボーナストラック入りでリイシューされますので、ここで全5タイトルを改めて紹介しましょう! *bounce編集部


 

FRANZ FERDINAND 『Franz Ferdinand』 Domino/BEAT(2004)

シーンがガレージ・ロックからポスト・パンクへと移りゆくなかで発表された初作。NMEの年間ベスト・アルバムに選出された作品だが、前年がホワイト・ストライプスの『Elephant』、翌年はブロック・パーティーの初作という並びからも時代の空気を感じ取れるだろう。〈女の子をダンスさせる音楽を作る〉というテーマのもとでミックスされた、踊れるビートとシンガロングできるメロディーは絶大な相乗効果を発揮。ダフト・パンクのリミックスも大ヒットした“Take Me Out”などにおける、秘めたる関係性をほのめかす歌詞も妖しい魅力を放っていた。ポップ職人のトーレ・ヨハンソンを起用というインディー・スノビズムに固執しない判断は、遅咲きゆえのクレヴァーさによるものだったのか。

FRANZ FERDINAND 『You Could Have It So Much Better』 Domino/BEAT(2005)

1作目の成功を受けての自信とさらなる野心を漲らせたセカンド・アルバム。パワフルかつ整理された音作りを得意とする売れっ子のリッチ・コスティを迎えて、サウンドは前作よりもビッグに。とはいえ、大雑把でチージーな印象はまったくなく、優れたメロディーによって大きな羽を与えていくようなプロダクションが素晴らしい。ギター・バンドとしての地力を発揮したうえで、リズム隊のグルーヴに強靭さが増した本作は、ポップ史における位置付け以上に、〈理想的なセカンド・アルバム〉のひとつだと思う。ニュー・エレクトロが一世を風靡していた時代にも見事に受け入れられ、ジャスティスによる“The Fallen”や、エロール・アルカンが手掛けた“Do You Want To”のリミックスもフロアでアンセム化した。

FRANZ FERDINAND 『Tonight: Franz Ferdinand』 Domino/BEAT(2009)

件のリヴァイヴァルも勢いを失い、尖ったギター・サウンドと角ばったダンス・ビートにはもはや食傷気味という状況に、彼らも悩むところはあったのだろう。前2作のハイペースっぷりとは異なり、約3年という期間を必要としたサード・アルバム。結果、バンドは夜闇へと誘うグルーヴをめざした。〈ハイになろうよ〉〈もう決して家には帰れないよ〉と歌う冒頭の“Ulysses”がナイトクラブの扉を開けると、そこに見えるのはラリー・レヴァンさながらの手つきでディスコ、ダブ、サイケデリック・ロックが繋がれていく、猥雑で快楽的なパーティー。さらに深い沼へとハマりたい人には、本作のプロデューサーであり、いまやインディー・シーンの最重要人物となったダン・キャリーによるダブ盤『Blood』を処方。

FRANZ FERDINAND 『Right Thoughts, Right Words, Right Action』 Domino/BEAT(2013)

ホット・チップのアレクシス・テイラー&ジョー・ゴダード、トッド・テリエ、ビヨーン・イットリング(ピーター・ビヨーン・アンド・ジョン)と複数のプロデューサーを招きながら、コンパクトなポップソング集として不思議と統一感がある4作目。テリエの関わった“Stand On The Horizon”などは中盤以降の北欧ディスコ的な展開を引き伸ばしてもよさそうにも思うが、〈意外と変化に慎重なバンドなんだな〉というのは今回すべてのアルバムを聴き直しての発見だった。2013年といえば、ダフト・パンクの“Get Lucky”を皮切りに猫も杓子もディスコへと向かいはじめた年だったが、このアルバムもそうした時代性を纏った作品と位置付けることもできよう。“Fresh Strawberries”や “Brief Encounters”などブギーな楽曲も楽しい。

FRANZ FERDINAND 『Always Ascending』 Domino/BEAT(2018)

スパークスとのコラボ作『FFS』(2015年)の実現、オリジナル・メンバーのニック・マッカーシーが脱退、新メンバー2名の加入、という動きの多かった数年を挟んでの5作目。カシアスのフィリップ・ズダールを制作陣に迎えたサウンドは、言うなればフレンチ・タッチ×UKニューウェイヴ。エレクトロニックなビートやシンセが目立ち、マッシヴにダンス・ミュージックを鳴らしている。ズダール節とでも言うべき宇宙飛行をしているかのような昂揚感が全編を貫いており、翌年に事故で亡くなった彼の最晩年の作品のひとつとしても忘れがたい。本作後、2021年にドラマーがポール・トムソンからオードリー・テイトへと交代。新体制での新曲“Billy Goodbye”などを含むベスト盤『Hits To The Head』を今年リリースした。

 


フランツ・フェルディナンド
アレックス・カプラノス(ヴォーカル/ギター)、ボブ・ハーディ(ベース)、ディーノ・バルドー(ギター)、ジュリアン・コリー(キーボード/ギター)、オードリー・テイト(ドラムス/パーカッション)から成る5人組バンド。スコットランドはグラスゴーで2001年に結成され、ドミノからアルバム5枚を発表。2021年より現在の編成となり、今年に入って現体制での新曲を含む初のベスト・アルバム『Hits To The Head』をリリースしている。なお、11月18日に一挙リイシューされる5タイトルは、トートバッグ月の完全生産限定5枚組ボックス『Albums(2004-2018)』(Domino/BEAT)でも登場。その後には待望の来日公演も控えている。

 


LIVE INFORMATION
FRANZ FERDINAND Hits To The Head Tour JAPAN
2022年11月28日(月)東京・有明 Tokyo Garden Theater
2022年11月30日(水)大阪・難波 Namba Hatch
https://smash-jpn.com/ff2022/