この映画は断じて世界を旅することで「自分探し」をする映画ではない。夢想家である主人公だが、やむにやまれぬ事情で世界を周る過程では、理想の自分を夢想をする余裕などない。「目的」のために迂回しつつ前進する主人公。この映画の主役は、「目的」のための 「過程」でしかないもの、「寄り道」でしかないものである。もちろん単なる寄り道ではないことに主人公は気づかないところが味噌なのだが。ただ主人公は変わっていく。自分など探してなどいない。なったのだ。そう、それが『LIFE!』(人生!)なのだと、大きな声で言わないあたりがベン・スティラーの上品さだ。デヴィッド・ボウイの名曲シーンが最高。