[特集]Throwback Soul(前編)
R&Bの入手困難盤が大挙リイシュー! ニュー・ジャック・スウィング時代に残された作品の数々をスロウバック目線だけじゃない角度から語ってみました!

 ソウル/ファンク/R&Bシーンにおける定番・裏名盤・入手困難盤を復刻してきた〈Throwback Soul〉シリーズがいよいよ80年代末~90年代へ突入! 今回のラインナップは〈ニュー・ジャック・スウィング/ヒップホップ・ソウル・エラ:ネオ・ソウル前夜編〉という括りで、88~95年リリースの40タイトルが2か月に分けて登場します。今回はその時代からリアルタイムでR&Bに親しみ、同シリーズで一部の解説も執筆する音楽ライターの林剛さんに注目ポイントを語ってもらいました。


 

現代にも受け継がれる当時のR&B

出嶌「この頃のアルバムって、いまでも聴き返すことはありますか?」

林「そうですね、やっぱりカヴァーとかサンプリングで頻繁に使われたりするもの、今回のリイシューでいうと、アフター7の“Ready Or Not”をジャズミン・サリヴァンが“Let It Burn”で使っていたり、トニー・トニー・トニー“It Never Rains (In Southern California)”はデヴィン・モリソンがカヴァーしていたり、そういう時に聴き直すことが多いです。ソウル・フォー・リアルの“Candy Rain”もよくカヴァーされてますね。あと、昨年ビヨンセがロビンSの曲を使ってたじゃないですか。その時に同じ時代だなと思ってシーシー・ペニストンも聴き直したりとか」

出嶌「逆に、今回出るキッパー・ジョーンズがアイズレー・ブラザーズ“Footsteps In The Dark”をカヴァーしていたり、過去のものをリサイクルしていく現象は昔から変わっていない印象ですか」

林「まあ、アイズレーに関してはこの時代から定番だったんだなって今回のラインナップだけでもわかりましたね。キッパー以外に、リフは“Voyage To Atlantis”をカヴァーしていますし」

出嶌「ラジャ・ネーの“Turn It Up”もそうですね。ノーティ・バイ・ネイチャーやボーン・サグズン・ハーモニーと同ネタで」

林「そう、その“Make Me Say It Again, Girl”って本当にサンプリングのネタとしても定番だけど、まさにアイズレー自身が昨年の最新作でビヨンセと一緒にやってたじゃないですか。で、リフの“Voyage To Atlantis”が入っているアルバムにスウィッチ“There’ll Never Be”のカヴァーもあるんですけど、アイズレーも最新作で“There’ll Never Be”をカヴァーしてるんですよね。そこでリンクするのがおもしろいなって。この前Mikikiでヴィドにインタヴューしたんですけど、新作でプリンスとアーニー・アイズレーのギターを絡めたような曲をやってて、そういえばOGパーカーとの曲でも“Between The Sheets”をサンプリングしてたので訊いてみたら、〈アイズレーは基本だから〉って言ってました。まあアイズレーはちょっと特別ではあるけれど、20~30年ぐらい前の曲を引用するっていうのは絶えずある流れですよね」

出嶌「ただ、ネタの繋がりから辿るにしろ、普通に聴かれるにしろ、残るものと残らないものの差が極端になっている印象です」

林「けっこうキッパリ分かれるんじゃないかな。今回のラインナップだと、アフター7とかミント・コンディション、モンテル・ジョーダンやジャネイは普通に定番っていう感じですね。そうやって聴き続けられているものと、一方ではこういうリイシューでもない限りは知られる機会のないものがあって。EVEとかスアーヴェの作品なんかはなかなか振り返るきっかけがないですよね」

出嶌「過去は単純化されていきますからね。とはいえ、今回の40枚はいわゆるヒット作も不発だったものも混在しています」

林「ヒット規模とかじゃなく内容で評価されて選ばれてると思うから、いいラインナップですね。この40タイトルでいろんな括りができますよね」

出嶌「レーベルの括りでいうと、3月に出るものではモータウンやアップタウン発の作品が目立ちます」

林「この頃のモータウンは、MCAのアーバン部門にいたジェリル・バズビーが新社長になって、彼がモータウンに移る時にトゥデイとかをMCAから連れてきたんですよ。後のキダー・マッセンバーグの時代もそうでしたけど、自分の力で黄金期のモータウンを蘇らせてやろうっていう意欲が出ていた頃だと思います。それで言うと、ボーイズはニュー・ジャック版のジャクソン5、グッド・ガールズはシュープリームス、トゥデイはフォー・トップスっていう感じで、新世代のスターを生み出そうっていう気概が感じられた時代の作品が並んでいますね。アナザー・バッド・クリエイション(ABC)はモータウン版ベル・ビヴ・デヴォーという感じでもあって」

 

THE BOYS

テディ・ライリー以降の音

出嶌「特に3月のラインナップはニュー・ジャック・スウィング(NJS)系統の作品がメインで選ばれています」

林「アフター7とアリソン・ウィリアムズに関しては〈Throwback Soul〉シリーズの前回に入っててもおかしくないもので、ブラック・コンテンポラリー~80年代ソウルの流れを汲む作品ですが、基本はNJS時代、テディ・ライリー以降という作品ですね。このあたりって当時から聴いてました?」

出嶌「当時は中高生だったので後追いも多いんですけど、シャニースとかもいたバズビー時代のモータウンには妙に思い入れがありますね。ちなみに唯一リアルタイムで聴いてたのがアリソンで、久保田利伸さん選曲のコンピに“Just Call My Name”が入って、翌年の紅白歌合戦にも出たんで、彼女の『Raw』を山奥で聴いてたのは自分的にデカいです(笑)」

林「『Raw』はいいアルバムですよ。ハーレムの路地裏感みたいなものを新しい世代の音として空気ごとパッケージしたようなアルバムで、これ聴くと本当ちょっと鳥肌が立つんですよね。アリソンはハイ・ファッションとか経歴もある人だし、やっぱりR&Bが昔から変わらず持ち続けてるチャーチの要素がすごく出てて。個人的にはNJSブームが終わりかけの頃に初めてNYに行ったんですよ。もうメアリーJ・ブライジもデビューしていたんですけど、ハーレムのような黒人街でよく流れていたのはアリソンとかフレディ・ジャクソンみたいにもっとオーセンティックなもので。それを体験した時に、ハーレムの持つ雰囲気っていうのは、まさに『Raw』の名が体を表してるなって思いましたね」

出嶌「時代を跨ぐとまた違う路上感が出てくるんですけど、初期デフ・ジャム産のR&Bからは洒落た都会としてのNY感がイメージできます。一方にはバズビー期のモータウンがあり、メアリーを輩出したアップタウンもあり。やっぱ当時はレーベルがあってわかりやすかったですね」

林「アップタウンはまさにストリート版モータウンみたいな感じでした。この頃はもうバリバリR&Bやヒップホップを聴いてたんで、ジェフ・レッドや『Strictly Business』のサントラもリアルタイムで買ってたし、もう意識して聴いてましたね」

出嶌「今回もそのジェフ・レッドやガールズ、クリストファー・ウィリアムズがラインナップされています。で、今回のラインナップを見てまず思い浮かぶのは、ここにいないガイの名前ですよね、やっぱり」

林「特に3月のラインナップは本当にガイ周辺ですね。今回の並びを見ると、ガイで一世を風靡したテディ・ライリーと、その後見人だったジーン・グリフィンがモータウンとアップタウンを跨いでいかに力を持っていたかがよくわかる。そこはバズビーのセンスとか人脈もあったのかもしれない」

出嶌「ガイの初作でミックスに携わっていたティミー・レジスフォードがモータウンの裏方をやっていたのも大きいですね」

林「まさにそうですね。ティミーがいたことによって、やっぱりダンス・ミュージックとしての楽曲が作りやすかったっていうのはデカいと思います」

出嶌「ヒップホップとのリンクやダンス・ブームもあってNJSは一気に広がったと思うんですが、ブルーノ・マーズの“Finesse”みたいに近年もビートのフォーミュラとしてはたまに話題になりますよね。そうしたリヴァイヴァルやオマージュはどう見ていますか?」

林「本気でリヴァイヴァルさせようというよりは、シルク・ソニックが70年代ソウルをベタに再現したのと似ていて、ネタっぽい印象があります。ただ、ビヨンセが新作でハウスやそのルーツに照射していたのと同じ感覚で、黒人が生み出したダンス・ミュージックに光を当てて、新しい世代が受け継いでいくのは美しい流れですよね。テディは先日〈ソングライターの殿堂入り〉を果たしたばかりだし、今回のリイシューはタイミング的にバッチリじゃないでしょうか」

出嶌「そうですね」

林「あと、ちょうどウォールズ・グループの新作にテディをフィーチャーしたNJSの“He’ll Make A Way”が収録されていて、モロにあの時代の音でした。途切れずあったわけじゃないけど、わりと最近また出てきている印象かもしれない」

出嶌「ベーシック・ブラックの新作も出たばかりです」

林「そう、そのベーシック・ブラックのウォルター“ムーチョ”スコットだったり、ジェンツっていうトゥデイの前身にいたバーナード・ベルだったり、アトランタ・ラップ・バンドことARBのティミー・アーサーだったり、テディやジーンの周辺にいたNJS系のクリエイターたちが時代の音を作っていた感じですね。バーナードはマイケル・ジャクソン『Dangerous』(91年)に関わった絶好調の時代ってことになるのかな」

出嶌「今回のリイシューは昨年亡くなったバーナード・ベルの関わった作品が多いので、そういう裏テーマでも聴けたりしますね。で、90年にテディと喧嘩別れをしてからのジーンは失速しますけど、ARBのアルバムに“New Jac City”という曲をやってたり」

林「その喧嘩別れの跡が見えるのがトゥデイのアルバムですね。テディが手掛けた初作に対し、2作目『The New Formula』はジーン主導になってバーナードやザンがやっていて。あと、その『The New Formula』には“Why You Get Funky On Me”のリミックスしか入ってなかったけど、今回のリイシューではサントラ『House Party』に入ってたオリジナルもボートラ収録されていて、これは親切ですよね」

 

SHOMARI

大物たちの初期の仕事

出嶌「ボートラで貴重なヴァージョンが入ってくるのも注目ですね。あと、『The New Formula』には今回ちょいちょい顔を出してくるキャラクターズもいます」

林「かなり初期のキャラクターズ仕事ですね。彼らがトゥデイに提供したNJSっぽい“Gonna Make You Mine”は、ちょうど今回出るウェンディ・モートンの初作に“Step By Step”と曲名を変えて収録されてるんです。こういうのはなかなか気付かれてないかもしれない」

出嶌「全然知らなかったです。日本でのウェンディ・モートンはトレンディドラマで曲が使われたり、ちょっとダイアナ・ロスやホイットニーに近いイメージでしたけど」

林「“If We Hold On Together”的な感じですよね(笑)。彼女は最近オーディション番組の『The Voice』で復活してましたけど、キャラクターズでいうとトロイ・テイラーは現在もR&Bのメインストリームで活躍してるじゃないですか。トニー・トニー・トニーはもちろんだけど、他にも00年代にかけて活躍していく人たちの初期の仕事が含まれているっていう感じですね」

出嶌「NJS前夜に若手だったLA&ベイビーフェイスとジャム&ルイスが大物として90年代を迎える一方、この時期に登場してきたのがフェンデレラやABCを手掛けているダラス・オースティンです」

林「ボーイズIIメンもダラスでしたもんね。ダラスはこの後TLCを手掛けるので、その意味でABCは、性別は違うけどTLCの先駆けみたいな存在かもしれない」

出嶌「ABCのバックにデブラ・キリングスもいますし。このあたりから96年のオリンピックに向かう流れでアトランタの面々も注目されていくことになって」

林「まだ誰もアトランタのシーンとか言ってなかったけど、フェンデレラも00年代にはロイドを送り出しているし、〈アトランタ前夜〉みたいな感じもありますよね」

出嶌「あと、アップタウン系統ではエディFとアンタッチャブルズ周辺の面々、デイヴ・ホールとかも登場してきています」

林「それこそアップタウンはショーン“パフィ”コムズを輩出してますよね」

出嶌「今回のラインナップで言うと、クリストファー・ウィリアムズがパフィ絡みではありますね。そう思うと、いつからかどんな出所の人も器用に同じサウンドを作る感じになったので、ここ10年ぐらいでプロデューサーごとのカラー的な面白さは薄まりましたね。こちらの勝手な幻想も含めての地域性とかレーベルごとの個性みたいなのも昨今は希薄なので、そこはちょっとスロウバックしてしまいます(笑)」

林「プロデューサーやレーベル買いみたいな面白さは大きかったですよ。逆に言うと、それぐらいしか情報がなかった(笑)。当時はちょっとMOR的なプロデューサーが1曲だけアルバムに入ったりすると違和感を覚えたりもしたけど、いまは例えばライアン・テダーがジョン・レジェンドを手掛けたりしても垣根がないですもんね」

出嶌「もちろん今回のラインナップはそういう括りだけで聴くものではないですけどね。その流れとは関係なく純粋にヒットしたポートレートのようなグループもいて」

林「ポートレートはやっぱり“Here We Go Again!”の人気がめちゃくちゃ高いから。いまだによく名前が上がる曲ですよね」

出嶌「あと、当時は単純にヴォーカル・グループが多かったのが改めてわかります。ボーイズIIメンがポップ方面でも大当たりして、ストリートやクラブ方面にはジョデシィみたいな例もあって、その間で成功を狙って消えていった人たちがこんなにいたんだなっていう」

林「ヴォーカル・グループで言うと、さっき名前の出たトニーズも絡んでいるショマリがいいですよね」

出嶌「今回が初の日本盤化だそうです」

林「だから、ショマリはけっこう今回の目玉の1つではあるんじゃないかな。制作陣にラファエル・サディークがいる一方でバーナード・ベルもいるので、強引だけど、まさにNJS時代とネオ・ソウル時代を繋ぐような不思議なアルバムですよね。もしミント・コンディションとかサウンズ・オブ・ブラックネスを未聴の人がいたら当然そっちを真っ先に聴いてほしいですけど、R&Bに興味があってそこそこシーンを捉えてる人ならショマリやキッパー・ジョーンズ、アリソンを聴いてみてほしいなって個人的に思います。盤のレアさとかも含めると、ARBとかいろいろありますが」

出嶌「初CD化じゃなくてもほとんどの盤が初リイシューなので、世代的にはまるで触れたことのない人も多いと思います。3月に出るものでいうとキッパーとトゥデイ、ジェフ・レッド、ARB、マーク・ネルソンは現在も未配信のアルバムですし」

林「そこは重要ですね。まあ、たぶんARBとかガールズを聴いて人生が変わることはないと思うんですけど(笑)」

出嶌「その意味で今回のラインナップは決定的な名盤や名曲だけを摂取したいタイプの人には不向きな作品も多いですね(笑)」

林「確かに。それで言うと、4月のラインナップにあるアーロン・ホールの『The Truth』は……」【次号へ続く】

この時代の定番アルバム。
左から、シャニースの91年作『Inner Child』、ボーイズIIメンの91年作『Cooleyhighharmony』(共にMotown)、マイケル・ジャクソンの91年作『Dangerous』(Epic)

左から、ガイの88年作『Guy』(Uptown/MCA)、ブルーノ・マーズの2016年作『24K Magic』(Atlantic)、ウォールズ・グループのニュー・アルバム『Four Walls』(My Block/SoNo)

この時期の定番。
左から、メアリーJ・ブライジの92年作『What’s The 411?』、ジョデシィの91年作『Forever My Lady』(共にUptown/MCA)

 

THE BOYS 『Messages From The Boys』 Motown/ユニバーサル(1988)

ジェリル・バズビー采配期のモータウンから新生ジャクソン5をめざして登場した少年グループ(4兄弟)のデビュー作。前半3曲はLA&ベイビーフェイスの制作で、メロディアスなニュー・ジャック・スウィング“Dial My Heart”と初期ニュー・エディション的バブルガム・ポップ感を振りまく“Lucky Charm”はR&BチャートNo.1のヒットに。キッズ感丸出しの歌声が愛おしいが、この後、次男ハキームは天才裏方に成長する。 *林

 

THE GYRLZ 『Love Me Or Leave Me』 Motown/ユニバーサル(1988)

後にテリー&モニカとして再デビューを飾るふたりが在籍した女性トリオ唯一のアルバム。キャピトル発ながらアップタウンのロゴも刻まれ、テディ・ライリー制作の“Wishing You Were Here”を含む本作はニュー・ジル・スウィングの先駆け的な一枚と言われる。メイン・プロデューサーのカイル・ウェストが手掛けるハネたアップはジェイドなどへの影響も大。アルB・シュア!制作のバラードも収録。 *林

 

AFTER 7 『After 7』 Virgin/ユニバーサル(1989)

ベイビーフェイスの兄弟メルヴィンとケヴォンたちが結成したヴォーカル・グループの初作。LA&ベイビーフェイスとその一派による制作で、ボビー・ブラウンの前年作に通じるニュー・ジャック・スウィングやディール路線のアップ(今回は2曲の長尺ミックスを追加)が前半から飛び出す。甘く繊細な声が映える後半のメロディアスなミッド“One Night”と胸焦がすようなバラード“Ready Or Not”は彼らの代表曲に。 *林

 

ALYSON WILLIAMS 『Raw』 Def Jam/ユニバーサル(1989)

ハイ・ファッションを経てソロに転向したNYのレディ・ソウルがデフ・ジャムから放った初アルバム。ヴィンセント・ベルがメインで制作した本作からは溌剌としたニュー・ジャック・スウィング~ヒップホップ路線のアップもヒットしたが、スケールの大きい深みのある声が生きたのは、スクール・ボーイズの曲を改題リメイクした“Just Call My Name”などのスロウだ。モーメンツ“Not On The Outside”もカヴァー。 *林

 

DÉJÀ 『Made To Be Together』 10/Virgin/ユニバーサル(1989)

80年代初頭からサルソウルなどで活躍したオーラの男女ヴォーカルが独立~発展したデジャの、メンバー交代を経ての2作目。絶好調期のテディ・ライリー&ジーン・グリフィンが全曲をプロデュースし、後のボビー&ホイットニー“Something In Common”の原型のような甘酸っぱい絶品ミッドのタイトル曲をはじめ、典型的なアップからスロウまで、NJS時代ならではの多彩なフォーミュラが取り揃えられている。 *出嶌

 

JOYCE FENDERELLA IRBY 『Maximum Thrust』 Motown/ユニバーサル(1989)

元ジョージ・クリントン一派で、クライマックスの中核として活躍した才女のソロ・アルバム。後にアトランタR&Bの黒幕となるダラス・オースティンの助力も得たストリート感覚の曲が中心で、ダグ・E・フレッシュを招いた元祖ヒップホップ・ソウル的な“Mr. D.J.”とニュー・ジャック・スウィング路線の“She’s Not My Lover”がヒットした。元同僚バーナデット・クーパーと組んだプリンス風のバラードも披露。 *林

 

BASIC BLACK 『Basic Black』 Sound Of New York/Motown/ユニバーサル(1990)

ガイに去られたジーン・グリフィンがアトランタで発掘した4人組ヴォーカル・グループの初作。メンバーであるウォルター“ムーチョ”スコットの音作りも雄々しい歌いっぷりの良さも着想源は明らかで、同年にガイがディスるのも頷けるほど完成度はメチャクチャ高い。ピート・ロック&CLスムースを迎えた勇ましい“She’s Mine”など強力なNJSチューンが満載され、近年メーガン・ザ・スタリオンがネタ使いしたスロウ“Baby Can We Talk”も聴きもの。 *出嶌

 

JEFF REDD 『A Quiet Storm』 Uptown/MCA/ユニバーサル(1990)

アルB・シュア!に続くアップタウン発ソロ男性シンガーの初作。アンタッチャブルズによる快活な“I Found Lovin’”(ファットバック・バンドのリメイク)などアップもいいが、ジョデシィでデビュー前のデヴァンテが狂おしいメロウ作法で迫る“Giving My Love To You”、クワイエット・ストームの“Brazilian Lady”などのスロウも佳曲揃い。近年は幻の2作目のほうが入手しやすかったのでこれは喜ばしいリイシューだ。 *出嶌

 

KIPPER JONES 『Ordinary Story』 Virgin/ユニバーサル(1990)

ティーズのヴォーカリストが元同僚のレックス・サラスや一派のチャッキー・ブッカーらを迎えて作ったソロ・デビュー作。ファンクネス溢れる骨太な楽曲が並び、JBやスライ、ロジャー、エムトゥーメイなどを称えたファンク讃歌“Carry On...”を歌えば、アイズレー・ブラザーズ“Footsteps In The Dark”のカヴァーも披露する。ボーイズのハキームが制作したニュー・ジャック路線の“Cut Me No Slack”も刺激的だ。 *林

 

SUAVÉ 『To The Maxx』 Capitol/ユニバーサル(1990)

88年にキャピトルからメジャー・デビューしたLA出身のシンガーによるセカンド。マイケル・アンジェロ・ソウルスベリーを含め、後にポートレイトとしてデビューする面々との共同制作で、前作以上に勢い溢れるニュー・ジャック・スウィングがバラードを交えつつ登場する。チャーリー・ウィルソンを招いた“Zero”はガイを意識したのだろう。バック・ヴォーカルにはパフ・ジョンソンやティム・オウエンスも参加。 *林

 

TODAY 『The New Formula』 Capitol/ユニバーサル(1990)

90年代に活躍するビッグ・バブを輩出した4人組の2作目。前作で後見したテディ・ライリーが離れるも、Drフリーズが手掛けた冒頭の“I Got The Feeling”をはじめ、新進のキャラクターズによる2曲など、当時の旬を弁えた軽快なNJSチューンがしっかり用意されている。前身グループ時代の盟友バーナード・ベルによるメロディアスな4曲が好相性で、なかでも本編ラストのスロウ“My Happiness”が素晴らしい。 *出嶌

 

TONY TONI TONÉ 『The Revival』 Wing/Mercury/ユニバーサル(1990)

ラファエル・サディークとドゥエイン・ウィギンスの兄弟を中心にしたR&Bユニットのセカンド。ニュー・ジャック路線の“Feels Good”やバラード“It Never Rains (In Southern California)”など4曲がR&Bチャート首位となったヒット作で、ヴァネッサ・ウィリアムス客演曲を含め、フォスター&マッケルロイの意匠を継ぐ新世代オークランド・ファンクを聴かせる。映画「House Party II」挿入歌などを新規で追加。 *林

 

ANOTHER BAD CREATION 『Coolin’ At The Playground Ya’ Know』 Motown/ユニバーサル(1991)

ベル・ビヴ・デヴォーで成功したマイケル・ビヴンス(ニュー・エディション)がみずから送り出した、キッズ版BBD的なグループの初作。同年のボーイズIIメン仕事で最前線に躍り出るダラス・オースティンがプロデュースの軸を担い、バブみしかないラップを威勢のいいNJSサウンドで豪快にまとめる“Iesha”が全米9位に輝いた。ニュー・エディション“Jealous Girl”のカヴァーもバブルガム好きなら必聴の甘酸っぱさ。 *出嶌

 

ARB 『The Hard And Soft』 Sound Of New York/Motown/ユニバーサル(1991)

ジーン・グリフィンが送り出したトリオによる唯一のアルバム。男女ラッパー+男性シンガーという珍しい編成はジーン版レクスン・エフェクトを作ろうとした雰囲気もあり、ガイが主題歌を歌う映画「ニュー・ジャック・シティ」に当て込んだような“New Jac City”で歌うダリル・アダムス(ベーシック・ブラック)をはじめ、ジーン軍団が要所でサポート。レクスン・エフェクトの翌年作が『Hard Or Smooth』だったのは偶然か。 *出嶌

 

MARC NELSON 『I Want You』 Orpheus/Capitol/ユニバーサル(1991)

ボーイズIIメンの結成メンバーながらもデビューを待てずにソロ転向した男が、ハッシュ系列のオルフェウスに残した初作。ここではマーヴィン・ゲイ“I Want You”のモダンなカヴァーをはじめ、都会的な煌めきを備えた“Cross My Heart”やNJSの“Step To Me”などゴー・ホトダのアレンジ手腕がいい。結果的に古巣のデビュー・ヒットと時期のかぶった本作が不発だったことで、アズ・イェット加入後の成功に繋がった。 *出嶌

 

CHRISTOPHER WILLIAMS 『Changes』 Uptown/MCA/ユニバーサル(1992)

アップタウンに移籍し、制作陣にショーン“パフィ”コムズやジョデシィのデヴァンテ・スウィングらを迎えたセカンド。映画「ニュー・ジャック・シティ」挿入歌を“Dreamin’”と微改題して収録(今回のCDには別ヴァージョンも)しているが、アップやミディアムはヒップホップ・ソウルに接近している。同僚メアリーJ・ブライジとのデュエットや大味な歌をうまく活かしたテディ・ペンダーグラス名曲のカヴァーも話題。 *林

 

THE GOOD GIRLS 『Just Call Me』 Motown/ユニバーサル(1992)

89年の初作がヒットした〈ジル・スウィング世代のシュープリームス〉による2作目。ファーサイドやトニーズとの仕事で知られるLAジェイことジョン・バーンズ3世を中心に、アイク・リー3世&キヤマ・グリフィンらがダンサブルな楽曲を仕立てている。小ヒットした表題曲のようなNJS曲もいいが、いま聴くならいわゆる“Show You The Way To Go”進行の上品なメロウ・グルーヴ“It Must Be Love”が実に麗しい。 *出嶌

 

JACCI McGHEE 『Jacci McGhee』 MCA/ユニバーサル(1992)

キース・スウェット“Make It Last Forever”のデュエット相手として名を上げたソングストレスのデビュー作。そのキースやボビー・ウーテンらが制作を手掛け、バーナード・ベルによるニュー・ジャック・スウィングを含む華やかなアップからキース印のスロウ・ジャムまでを情感たっぷりに歌い上げる。ロバータ・フラックでお馴染みの“The Closer I Get To You”は作者のジェイムズ・エムトゥーメイがプロデュース。 *林

 

PORTRAIT 『Portrait』 Capitol/ユニバーサル(1992)

才人マイケル・アンジェロ・ソウルスベリーを擁するLAの自作自演カルテットによるデビュー作。R&Bチャート3位となったダンサー“Here We Go Again!”や今回2曲の別ミックスが追加された“Honey Dip”など、ニュー・ジャック・スウィングをベースにしたアップが鮮烈な輝きを放つ一枚で、ヴォーカル・ワークもスリリングだ。ジェラルド・アルブライトのサックスを交えた“On And On”などのスロウも聴かせる。 *林

 

SHOMARI 『Every Day Has A Sun』 Mercury/ユニバーサル(1992)

同郷コネティカットのトロイ・テイラーを師と仰ぐラサーン・ラングレイが弟や従兄弟と組んだトリオ。これが唯一のアルバムで、グレン・ジョーンズが声を交えた“Stand For Something”を含め、バーナード・ベルやヴィンセント・ハーバートが手掛けたニュー・ジャック路線の曲が際立つ。一方で、ラファエル・サディークの制作でトニー・トニー・トニーが演奏したオーガニックなソウルも披露する懐の深い一枚だ。 *林

 

WENDY MOTEN 『Wendy Moten』 EMI/ユニバーサル(1992)

後にアダルト・コンテンポラリー界で成功するメンフィス出身シンガーの、全英8位を記録した“Come In Out Of The Rain”収録のデビュー作。ニコス・ライラスの弁えた音作りも含めてゴスペル仕込みな歌いっぷりの狙いどころは完全にホイットニーだ。バラードの“So Close To Love Song”はもちろん、キャラクターズ作の明るいアップ“Step By Step”(鍵盤はルイス・レスト)もその角度から改めて聴かれるべきかも。 *出嶌