
[特集]Throwback Soul(後編)
R&Bの入手困難盤が大挙リイシュー! ヒップホップ・ソウル時代に生まれた作品の数々を、スロウバック目線だけじゃない角度から語ってみました!
ソウル/ファンク/R&Bシーンにおける定番・裏名盤・入手困難盤を復刻してきた〈Throwback Soul〉シリーズ。今回は〈ニュー・ジャック・スウィング/ヒップホップ・ソウル・エラ:ネオ・ソウル前夜編〉という括りで、88~95年リリースの40タイトルが2か月に分けて登場します。というわけで今月もその時代からリアルタイムでR&Bに親しみ、同シリーズで一部の解説も執筆する音楽ライターの林剛さんに注目ポイントを語ってもらいました。
ポストNJS世代の音
林「それで言うと、アーロン・ホールの『The Truth』は……」
出嶌「世代的には決定的な名盤なんですけど、なぜかアルバムはサブスクだと穴空き状態なので、この機会に評価のギャップは埋まってほしいです。で、今月紹介するのはラインナップのうち主に93~95年産の作品ですが、ここがいわゆる〈ヒップホップ・ソウル・エラ〉ということで、ニュー・ジャック・スウィング(NJS)のブーム後に来たムーヴメントということになりますね。もともとはメアリーJ・ブライジの登場時に付けられた〈クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル〉というキャッチから広まった言葉という感じでしょうか」
林「そうですね。端的に言うと、ヒップホップのトラックに、ラップではなく歌を乗せたもの。打ち込みやサンプリングによるループ感のあるトラックにR&B由来のヴォーカルを乗せて表現した音楽をそう呼びました。単純に〈ヒップホップとソウルの融合〉ということでは、例えばデフ・ジャムにいたオラン“ジュース”ジョーンズやアリソン・ウィリアムスのようなシンガーが80年代からやっていたわけですが、ヒップホップ世代あるいはポストNJS世代のシンガーとしてその先頭に立ったのが、メアリーJ・ブライジだったということになります」
出嶌「先月紹介したポートレートの『Portrait』(92年)とかもNJS風味でありつつ作りはヒップホップ・ソウルの曲があったり、それで言うと92~93年が時代の変わり目という感じになりますね」
林「そうなんですよね。アーロンの“Don’t Be Afraid”はサントラ『Juice』(92年)に入ってるオリジナルが好きだったんですけど、93年だとボム・スクワッドはもう旬な雰囲気ではなくなっていましたし」
出嶌「はい。とはいえ、この『The Truth』みたいな作品は後にも先にもない気がします。フォロワーという意味では直系のジョデシィやR・ケリーがもっと傑作を残していますけど、アーロン自身の次作も含めてこの謎の魅力は出せてなくて」
林「わかります。ここでのアーロンは気合い入りまくってますよね。ガイが解散してNJSが終わった後に、もう一人でそのシーンを引っ張っていくぐらいの意気込みを感じます。一方のテディ・ライリーはブラックストリートを結成するけど、ビートよりハーモニーを重視した方向になっていって」
出嶌「ブラックストリートも“Baby Be Mine”(93年)の頃はややNJSの延長でしたけど、この『The Truth』はそれともまた違うんですよね。歌も音もゴツゴツしてる」
林「ゴツゴツしてますね。プロデュースしたヴァッサル・ベンフォードの力も大きかったのかもしれないです。当時はアーロンとセットでジェイドの“Don’t Walk Away”がすっごい好きで、誰のプロデュースなんだろうと思ったらヴァッサルの名前があって、あ、この人が好きなんだなと思って。このゴツゴツした音ってテディとも違うし、ガイのカラーをキープしながら新しい時代に向かっていくような勢いを感じました。それで言うと、例えば“Open Up”はむしろヒップホップ・ソウル的というか、同時期に出たブラック・ムーンの“Who Got The Props”と同じロニー・ロウズ“Tidal Wave”をサンプリングしてたのでよく覚えてるんですけど、その意味でも『The Truth』はNJSとヒップホップ・ソウルの架け橋みたいなアルバムだったのかな。ニュー・ジャックな俺を貫いてヒップホップ・ソウルに向かうような、前のめりな感じがパワーとなって現れている作品ですよね」
ヴォーカル・グループの隆盛
出嶌「遅れてきたNJSというか、今回のリフとかも時代の変わり目を感じます」
林「それで言うとブリック・シティの“Say U Like”はいまだとシングルが何万もするぐらい人気ですけど、94年当時は遅れてきたNJSって感じでした。これを手掛けたテディ・ライリー一派のJ・ディブスは今回リイシューされるジョーの初作でも“I’m In Luv”を手掛けていて、NJSブームを絶やさないというくらいの気概を感じましたね」
出嶌「ただ、ボーイズIIメンの『II』と同じ年でもありますからね」
林「彼らの影響は本当に大きかった。ブリック・シティも他の曲は“Old Fashion Love”とかバラードなので、恐らくボーイズIIメン路線で売り出そうとしたんでしょう。ただ、94年にはモータウンのトップがジェリル・バズビーからアップタウン創業者のアンドレ・ハレルに交代する前後のゴタゴタがあって、あまりプロモーションされなかったのかもしれない」
出嶌「そうでなくてもモータウン自体がオールド・ファッションな印象を脱却できなかったのかもしれません。同時期のフォー・ラヴァーズ・オンリーとか、その後のマインド・ボディ&ソウルとか、不幸な作品が多い時期に思えます」
林「ソウルトリーとかもいましたね。で、今回のラインナップでいうと、BBOTI(バッド・ボーイズ・オブ・ジ・インダストリー)も〈音楽業界の悪童〉みたいな雰囲気のグループ名ですけど、このネーミングってボーイズIIメンに対抗するっていう意識があったんじゃないかな。このBOYZのスペルもそうだし、しかも彼らのアルバムの前年にはボーイズIIメンがベイビーフェイス作の“End Of The Road”(92年)で大ブレイクしてるんですよね。それもあってBBOTIもベイビーフェイスの“Where Will You Go”をカヴァーしてたり。いかにいろんなグループがボーイズIIメンを意識してたかも感じられますね」
出嶌「まあ、〈悪童〉路線の筆頭にはジョデシィがいて、他にもシルクやシャイ、イントロもチャートで成功していて、単純に男性グループがめちゃくちゃブームだった時期ですよね。R・ケリーがグループの体裁でデビューしたみたいに、そっちのほうが需要があったというか」
林「エディFとアンタッチャブルズの『Let’s Get It On: The Album』(94年)に収録されているポーシェもそうですね。この後にラフェイスからデビューするドネル・ジョーンズが組んでいたグループで」
出嶌「エディFはヘヴィ・D&ザ・ボーイズの一員としてアップタウンに在籍しているのに、 この時点でリーダー作をモータウンに残しているのというのが、さっきのジェリル・バズビーの話にも繋がりますね」
林「そう、正式にハレルが就任するのは95年末ですけど、94年の時点で前任のバズビーと交代劇があったという話をちょっと読んだんで、まさに体制が切り替わる時だったのかもしれないですね」
出嶌「逆に当時のアップタウンはメアリーの『My Life』がバッド・ボーイ体制の作りだし、ジョデシィはデス・ロウに接近してて」
林「そう、ソウル・フォー・リアルもヘヴィ・Dが後見したグループで、アップタウンとはいえちょっと違うじゃないですか。もともとのアップタウン人脈はこの後モータウンに合流していくんですね」
出嶌「エディFもアルB・シュア!もモータウンに移って、ヒップホップ・ソウルど真ん中なホレース・ブラウンやラデイを手掛けたりしていく」
林「でも、ジェフ・レッドとかもそうなんですけど、アンタッチャブルズ周辺の連中はやっぱり地元愛が強いんだなって思いますね。ヘヴィ・Dもピート・ロックもNYのマウントヴァーノン出身でまさに〈アップタウン〉なんですけど、その勢力が本当に強かったんだなって」
出嶌「アンタッチャブルズの面々はこの時代に欠かせない名前でしたね。なかでもデイヴ・ホールはマライア・キャリーやマドンナのヒップホップ・ソウル路線を推進して」
大物プロデューサーたちの初期仕事
林「あと、後の著名クリエイターの初期仕事という話は先月もしましたけど、今月分ではBBOTIのアルバムに、ジャジー・ジェフ率いるア・タッチ・オブ・ジャズの下で、まだヴィクター・エマニュエル・クックと名乗っていた頃のヴィクター・デュプレーと、ジェイムズ・ポイザーが関わっているのも重要です。以降のネオ・ソウル~ネオ・フィリーの時代にジル・スコットやミュージック・ソウルチャイルドで有名になる人たちの最初期の仕事ということで。当時はジャジー・ジェフの名前が売りだったはずですけど、いま聴けばデュプレーがメインでやってるのもわかる。結果的にはポイザーのほうがビッグネームになりましたけど。当時はネットもないし、その後のことなんて当然わかるわけないから、今回のリイシューでは現代の目線からの解説を読んで知れることも多いんじゃないですかね」
出嶌「それで言うと、いちばん大物になったのはアーロンやフロント・ページなどショーン・ホールとのコンビ時代の仕事が出てくるトリッキー・スチュワートですね。同じチームのクーク・ハレルももう一緒にいるし」
林「クーク・ハレルはマニー・ロング“Hrs & Hrs”のヴォーカル・プロデュースも手掛けてたり、いまもR&Bの重要人物ですね。それ以前にリアーナと大成功してますし」
出嶌「あと、エグゼクティヴとしては3ボーイズ・フロム・ニュー・アークのヴィンセント・ハーバートも成り上がりましたね。一方でLAリード&ベイビーフェイスのラフェイスやダラス・オースティンのラウディみたいにこの時期は大物プロデューサーがレーベルを設立する例も多かったですね」
林「ジャネイを送り出したケイ・ジーのイルタウンもそうですね」
出嶌「そのなかでは、ジャム&ルイスがA&M傘下に設立したパースペクティヴの作品が今回は多めにラインナップされています」
林「ジャネット・ジャクソンやタブーの仕事で成功を収めたジャム&ルイスですけど、パースペクティヴではもうちょっと生っぽいグルーヴ感のある仕上がりが多くて。同時期のジャネットも“That’s The Way Love Goes”(93年)でそうなっているし、NJS以降のモダンR&Bがメタリックな打ち込みではなくなってきた頃の音ですね。あと、セルフ・コンテインドの度合いが高めというか、今回入ってないボビー・ロス・アヴィラなんかも含めて、自分たちで音作りもして裏方としても活躍していくような人たちが多いのは特徴ですね」
出嶌「ジャム&ルイスの右腕的な存在として活躍したり、刺激する役割でもありました。サウンズ・オブ・ブラックネス(SOB)にはジェイムズ“ビッグ・ジム”ライトもいて」
林「ロー・キーのランス・アレクサンダー&プロフェッサーTもそうでしたね。ミント・コンディションのストークリーたちはさっき名前挙げたソウルトリーとかも手掛けてましたから」
出嶌「バンド形態の2組をフックアップしたのも、80年代にザ・タイムをやっていたジャム&ルイスならではですし、そういう意味でもジャム&ルイスなりのスロウバック気分があったのかもしれないですね」
林「そうかもしれない。SOBもミント・コンディションもミネアポリスで昔から活動していて、ジャム&ルイス的には地元勢をフックアップしてメジャーに送り出す手助けをする意図もあったんでしょうね」
現代に繋がるヒップホップ・ソウル
林「でもこうやって俯瞰すると、やっぱりプロデューサーという存在が幅を利かせていた時代なんだなと思いますね。プロデューサー・ミュージックだったんだなって」
出嶌「今回のリイシューが比較的ダンサブルな方面に着目したものであるように、時代的にも必然的にサウンド志向というか、ダンス・ミュージック/クラブ・ミュージックとしての機能性が求められていた時代というのはあるかもしれませんね。近年は演者によりフォーカスした聴かれ方が主流になっている一方で、ヴォーカルの生々しさみたいなものはやっぱり違うのかなと思います。たぶん現代のほうが実力のあるアーティストは多いと思んですけど。やっぱりこの時代の歌はいいなと思いました」
林「アーロン・ホールなんてもう圧倒的ですからね。ただ、ケラーニのライヴに行った時にも思ったんですけど、楽曲は抑揚をあまりつけない今風でもライヴではやっぱりガッツリ歌えるなって、特にメジャーな人ほどそう感じます。メインストリームでやれてるような人はだいたい歌えるし、昔と比べてレヴェルも高いと思うので、ネオ・ソウル系とされるシンガーもそうですけど、やっぱりそれだけの歌力はあるんだなとは思いますけどね。作品に引っ張られるとボソボソ歌ってるイメージが強くなるかもしれないけど(笑)」
出嶌「聴き方や聴かれ方も違うし、音源の機能も違うのかもしれないですね」
林「ゴスペル、チャーチ直系のシンガーがそのルーツを丸出しにして成立した時代だったというか、それをプロデューサーがちゃんとコンテンポラリーな形で引き出せていた、その時代ならではのセンスがあったんでしょうね。映画『天使にラブソングを2』で注目を浴びたタニア・ブラウントもまさにそれを象徴するような人ですね。他にもジョヤなんかは当時メアリーの二番煎じっぽいイメージだけで捉えられていた感じだけど、いま聴くと最高でし。やっぱりエモーションというか情熱というか、そういうもので引っ張っていく、 心に響く歌が今回のいろんな作品で楽しめると思います」
出嶌「ラインナップの最後にモンテル・ジョーダンのデビュー作がくるのも象徴的なんですけど、95~96年ぐらいになるとヒップホップと並列の作り方が当たり前になって、もうわざわざ〈ヒップホップ・ソウル〉と形容されなくなっていきますよね。00年代にアシャンティが出てきた時やデビュー時のアリアナ・グランデとかもそうでしたけど、以降の周期的な90~00年代R&B回帰は、二重三重の意味でそのままヒップホップ・ソウル時代のリヴァイヴァルとも言えるし、逆に言うと現代と地続きな音は、ちゃんと今回のラインナップからも感じられるということですね。」
林「90年代以降のR&Bはヒップホップと結びつきながら進化、発展し続けているので、広義では大半がそれぞれの時代の〈ヒップホップ・ソウル〉とも言えるわけですよね。ネオ・ソウルだって、ヒップホップ・ソウルの生音表現的なニュアンスもありますし。狭義では、メアリー直系のキーシャ・コールやK・ミシェル、最近だとメアリーのツアーに参加したクイーン・ナイジャやエラ・メイあたりに受け継がれていますけど、何よりメアリー本人が『Good Morning Gorgeous』で現代におけるヒップホップ・ソウルをやっていて。ラフな言い方ですけど、今回リイシューされたような作品と現代のR&Bは繋がっているんですよね。なので、音としては懐かしいかもしれないけど、旧世代が懐古するためだけの音楽ではないことを改めて強調しておきたいです」
出嶌「はい。今回の〈Throwback Soul〉のテーマが〈ネオ・ソウル前夜編〉となっているように、以降のネオ・ソウル方向にももちろん繋がっていくわけで」
林「『Brown Sugar』前という意味ですよね。トニーズやミント・コンディションはまさに前夜だし、人脈的にはBBOTIもそうだし。あと、3ボーイズ・フロム・ニューアークのアイク・リー3世はエリカ・バドゥのデビュー作にも関わっていたので、その意味でネオ・ソウル前夜と言えなくもない……これは強引ですけど(笑)」
出嶌「夜明けが来るのかどうか、シリーズの続きにも期待したいです!」
この時期の定盤。
左から、ボーイズIIメンの94年作『II』(Motown)、TLCの94年作『CrazySexyCool』(LaFace/Arista)、ジョデシィの93年作『Diary Of A Mad Band』(Uptown/MCA)、マライア・キャリーの93年作『Music Box』(Columbia)、ジャネットの93年作『Janet.』(Virgin)、ブラックストリートの94年作『Blackstreet』(Interscope)
その後のヒップホップ・ソウル。
左から、アシャンティの2002年作『Ashanti』(Murder Inc./Def Jam)、エラ・メイの2018年作『Ella Mai』(10 Summers/ Interscope)、メアリーJ・ブライジの2022年作『Good Morning Gorgeous』(Mary Jane/300)

(3月のリイシュー作ですが、構成の都合で今月ご紹介!)カンザスシティとミネアポリスを出自とする自作自演バンドの初作。初期トニーズや同時期のジョー・パブリックに通じる雰囲気で、ラップやチャントでアゲるイケイケ系からスマートなNJSまでを小気味良く聴かせ、後見人ジャム&ルイスの手助け無用な実力を見せる。より評価されたのは後半に固められたスロウのほうで、R&Bチャート首位に輝いた“I Got A Thang 4 Ya!”やジェントルな“Hey There Pretty Lady”など美曲揃いだ。 *出嶌

ガイ解散を経て放ったソロ・デビュー作にして、比肩するもののない大傑作。導入の“Prologue”から野性的でクールなヴォーカルが降り注ぎ、“Do Anything”へ至る流れでKOされてしまう。ヴァッサル・ベンフォードやボム・スクワッドらの容赦なくパーカッシヴなビートに豪快なアドリブも交えた歌唱が正面衝突するストロングスタイルの内容で、なかでも女声と掛け合うレイニー・スチュワート製の“Pick Up The Phone”が濃厚だ。抑制の効いたスロウ“I Miss You”がヒットした。 *出嶌

映画「黒豹のバラード」のサントラに収録された“One Night Of Freedom”で脚光を浴びた男性グループの唯一のアルバム。雄々しいラップで回す“Badd Boyz Of The Industry”や濃密なスロウ“Nasty”、当時のG作法を取り込んだ“Da Choice Is Yours”の狙いどころはモロにジョデシィだが、童顔のカヴァーやマーク・ゴードンによる“Why Does Love Hurt (So Badd)”の正統派な佇まいもよく似合う。ジャジー・ジェフ軍団が制作したほか、セルフ・プロデュース曲も良し。 *出嶌

ジョニー・ギルに通じるストロングな喉を持つシンガーのセカンド・アルバム。ボーイズのハキームが手掛けた“No 1/2 Steppin’”を筆頭に、キヤマ・グリフィンとアイク・リー3世が手掛けた“Can I Touch You”、主役自身の制作による“I’ll Do Anything”など、ブーム終焉間近のニュー・ジャック・スウィングに挑んでいるのが頼もしい。スロウも、エルトン・ジョン名曲のカヴァーやクラブ・ヌーヴォーのヴァレリー・ワトソンを迎えた“24/7”など好曲が揃う。 *林

ジャイヴ移籍以降はバラディアーとして人気を集めていくジョーのデビュー・アルバム。本人のメイン・プロデュースで、後年に繋がるスロウ・バラードもあるが、J・ディブスの手を借りたニュー・ジャック・スウィング“I’m In Luv”のようなアップを歌う当時21歳のフレッシュな歌唱が眩しい。今回のリイシューでは、人気のミッド・チューン“All Or Nothing”にTOTOの名曲をMCライト経由でミックスした〈Poor Georgie Porgie Mix〉など2曲を追加。 *林

ジャム&ルイス主宰のパースペクティヴから登場した、ツイン・シティが誇る自作自演バンドのセカンド・アルバム。同時期のトニー・トニー・トニーに通じる“Nobody Does It Betta”のような躍動感のあるアップから、今回のリイシューでスティーヴ“シルク”ハーリーのリミックスもボーナス収録されている“U Send Me Swingin’”などのバラードまでを、ストークリーがドラムを叩きながら伸びやかな声で歌う文字通りの快作だ。生楽器の瑞々しい響きにも感じ入る。 *林

ニュージャージー出身の5人組によるセカンド・アルバム。バーナード・ベルやキャラクターズらの制作で、ベルのオリジナルとウォルター“ムーチョ”スコットによるリミックスの2種を収めた“Judy Had A Boyfriend”など、トゥデイやベーシック・ブラックの延長線上にあるニュー・ジャック・スウィングが披露される。一方でアイズレー・ブラザーズやスウィッチのバラードもカヴァー。この後メンバー3名はメン・オブ・ヴィジョンに加入する。 *林

テディ・ライリーと80年代から縁のあるラヴァバが後見した男性トリオによる唯一のアルバム。シャイ風のアカペラや快活なアップ“Say U Like”、甘酸っぱい“Darlin, Darlin”、スティーヴィー・ワンダーのカヴァー、ややナスティな“I’ll Go Lo”までどこを切っても名唱が並ぶが、看板となるのはジェントルなハーモニーを軸にした“Old Fashion Love”など折目正しいスロウだ。圧巻の美声を響かせるマーク・ミドルトンはこの後ブラックストリートに加入する。 *出嶌

ハウスのデビュー曲“Finally”(91年)がダンスフロアを超えて世界的にクロスオーヴァー・ヒットしたオハイオ出身シンガーの2作目。彼女自身の志向も受けて全体のバランスをR&B寄りに整え、ややマライア風味の瑞々しい“I’m In The Mood”などがポップに仕立てられている。ブライアン・マックナイト作の甘いバラード“Forever In My Heart”、サー・ジンクスによるメロウ・チューン、デヴィッド・モラレス製のメロディアスなハウスまでパンチのある歌唱力が冴え渡る一枚だ。 *出嶌

カシーフやSWVの楽曲でペンを交えていたジーナ・ゴメスを含む女性クァルテット(略称E.V.E.)が日英のみでリリースした本国未発表のデビュー作。近年はマニー・ロングの出世に貢献したクーク・ハレルがレイニー・スチュアートと手掛けた“Groove Of Love”、マーク・ネルソンらが制作した“All Because Of You”など、滑らかで弾力性のあるヒップホップ・ソウルが並ぶ。ガソリン・アレイの同僚シャイを迎えたミッド・バラードも上々だ。 *林

エディ・Fがネヴィル・ホッジやピート・ロック、スパンク・ビガ(近年はポップ・スモーク仕事でお馴染み)ら地元の仲間と組んだヒットメイカー集団、アンタッチャブルズのオムニバス的なリーダー作。関係が拗れる前のビギーと2パックがマイクを回す“Let’s Get It On”の収録作として知られる一枚だが、イントロやチェンジング・フェイセズといった人気グループやフェリシア・アダムズ、ラフェイスに移籍するマッド・ドラマやドネル・ジョーンズの初期音源などどれも貴重だ。 *出嶌

ニュー・ジャック・スウィングとヒップホップ・ソウルの中間をいく3人組グループのデビュー作。ドレッド・スコットがラップで客演した“Somethin’ About Your Lovin’”、ソウルショック&カーリンとカットファーザーが手掛けた“Like You Used To Do”などのミッド・ダンサーのほか、トリッキー・スチュアート&ショーン・ホールらの制作曲も含め、裏声を交えたヴォーカル・ワークが素晴らしい。スタイリスティックスの名曲“You Make Me Feel Brand New”もカヴァー。 *林

ジャマイカにルーツを持ち、ラガ・フレイヴァーのR&Bを歌うシカゴの女性シンガーによるファースト。後見人のジャム&ルイスが数曲を手掛け、アイズレー・ブラザーズ“Make Me Say It Again Girl”を速回しで引用したグルーヴィーな“Turn It Up”がサントラ『A Low Down Dirty Shame』にも収録されて人気を集めた。オート&チェロキーが手掛けた“Hot & Ready”などでのダンスホールの交え方も絶妙だ。ローズ・ロイス“I Wanna Get Next To You”のカヴァーも披露。 *林

ヘヴィ・Dが送り出したダリリンプル4兄弟から成るボーイズ・グループのデビュー・アルバム。最年少のジェイソンによる幼さの残る声を活かし、ATCQと同じミニー・リパートンの曲を引用して大ヒットした仄暗くも甘酸っぱい表題曲、ギャップ・バンドをネタ使いした“Every Little Thing I Do”など、トラックマスターズが制作に絡んだ親近感のあるヒップホップ・ソウルを歌っていく。ビル・ウィザーズやパティ・ラベルの名曲カヴァーも披露。 *林

SOUNDS OF BLACKNESS 『Africa To America: The Journey Of The Drum』 Perspective/A&M/ユニバーサル(1994)
70年代からミネアポリスで活動してきたアンサンブルの、ジャム&ルイス指揮下での2作目。“Walk On By”を敷いた“Everything Is Gonna Be Alright”、インピーチ使いのスムースな“I’m Going All The Way”などヒップホップ・ソウル的な意匠も絡め、アン・ネズビーのリードと荘厳なクワイアが繰り広げる音絵巻は多彩だ。アフリカン・ドラムから“Strange Fruit”、ハイ・サウンドやカーティスへのオマージュなど黒人音楽の流れを辿るような作りは、レトロ・ソウル調の作品が珍しくなくなった現代に聴いてこそジャストな部分は多いかも。 *出嶌

映画「天使にラブ・ソングを2」(93年)でローリン・ヒルと讃美歌を歌っていたワシントンDC出身のソングストレスによるデビュー作。スティーヴ“シルク”ハーリーが制作したスウィング感のある“I’m Gonna Make You Mine”を筆頭に、フレディ・ジャクソンとの“Is It Love”、LTDのカヴァー“Love Ballad”など、ゴスペル経験に裏打ちされたシャープな歌声が高らかに響きわたる。バック・シンガーも同郷のステイシー・ラティソウなど豪華だ。 *林

フィリーのテンプル大学で出会ったリネー・ネフヴィルとジーン・ノリスの女性デュオがケイ・ジー(ノーティー・バイ・ネイチャー)の援護で出したファースト・アルバム。マイケル・ワイコフのメロウ・ダンサーを下敷きにした“Hey Mr. D.J.”やパトリース・ラッシェンの曲を引用した“Groove Thang”などのスタイリッシュなヒップホップ・ソウルを歌う一方で、後にジャズ方面で活躍するふたりの鍵盤奏者/コンポーザーとしての才能を発揮したジャジーなスロウも聴かせる快作だ。 *林

ジャケットでもメアリーJ・ブライジのフォロワーを印象づけたデトロイトのシンガーによるデビュー・アルバム。ヴィンセント・ハーバートを含む3ボーイズ・フロム・ニューアーク一派の制作で、ヤング&カンパニーのディスコ・ヒット“I Like What You’re Doing To Me”のリメイクやパトリース・ラッシェン曲使いでジョマンダ絡みの“Gettin’ Off On You”など、翳りのある歌声も含めて臆面なくMJBを意識したヒップホップ・ソウルが並ぶ。 *林

スリック・リックの“Children’s Story”をベタ敷きした“This Is How We Do It”がデビュー・シングルにして全米No.1を記録した、LA出身の長身シンガーのファースト・アルバム。R・ケリー丸出しなスロウ“I’ll Do Anything”などもいい出来だが、クーリオを迎えた“Payback”など制作陣が同時期の西海岸ヒップホップと重なる部分が多く、いわゆるウェッサイ的な心地良さが全編に流れているのもポイントだ。スムースなサマー・チューン“Somethin’ 4 Da Honeyz”が極上。 *出嶌
