ライヴの現場が徐々に活況を取り戻すなか、静岡から新しい波が押し寄せている。その熱波の名前はfishbowl。作詞家/作曲家のヤマモトショウがプロデュースを手掛ける、静岡在住の4人組アイドル・グループだ。有志が選ぶ〈アイドル楽曲大賞2022〉の〈インディーズ/地方アイドル楽曲部門〉で1位に輝いて話題を呼んだディスコなサウナ讃歌“熱波”をはじめとする昨年の精力的な活動を経て届いたのが、今回のセカンド・アルバム『王国』。サッカー王国・静岡にちなんだそのタイトル(とディープ・パープルをオマージュしたジャケット)のユーモアは、“熱波”のセリフ〈ね〉や陽気な満腹ファンク“完食”での〈uhhhh shock!!〉といった耳に残るキャッチーなフックにも表われており、そのようなヤマモトらしいヒネリの効いたポップソングが本作には満載されている。
「fishbowlにはかわいい曲もかっこいい曲もあるし、いい意味でアイドルっぽくない曲もあって幅が広いので、いろんなジャンルを楽しむことができて。どれも好きですけど、特に“風花”は初めてのロック・バラードで、私が大好きなBUCK-TICKに近づけたような気がしてめっちゃテンションが上がりました(笑)」(久松由依)。
「私は“尻尾”が好きです。ハロウィン・ソングとして作られたんですけど、fishbowlとしては大人っぽい曲なので、ショウさんに艶っぽくなる歌い方や細かいニュアンスをアドバイスしてもらいました」(新間いずみ)。
「私はやっぱり“熱波”が好きです。初めてラップが入った歌でもあるし、〈ね〉とコーラスの〈パ、パラッパ〉が合わさって〈熱波〉に聴こえる遊び心もおもしろくて。ライヴでもファンの方と一緒に飛んだりして盛り上がれて、私たちにとって大切な曲です」(大白桃子)。
「“茶切 dope side”は、私がショウさんに〈英語でもラップをやってみたい〉とか、大好きなBTSの“FIRE”みたいに〈サビ前で(音が)止まる曲が欲しい〉ってお願いして作ってもらいました」(木村日音)。
一方で4人それぞれの特色が出た歌唱も魅力で、もっとも高音が出る久松、逆に特徴ある低音が耳を惹く新間、愛らしい歌声の大白、ラップで切り込み役を任されることの多い木村、それぞれが楽曲ごとに彩りを与えている。
「4人の歌声が全然違うので、聴き分けができるし、ユニゾンもあるところがいいなって思います」(新間)。
「いずみの低音は、歌い出すとお客さんが〈おっ!〉ってなるんですよ。桃子はいい意味でボカロっぽい」(木村)。
「ボカロしか聴いてこなかったから。私は歌うのがけっこう苦手なので、歌うのは他の3人に任せて……(苦笑)」(大白)。
「“熱波”で木村がラップしはじめると、勝手にポケモンマスターみたいな気持ちになるんです。〈行けー、木村!〉みたいな(笑)」(久松)。
今作のリリースに伴っては初の単独ツアーを開催し、引き続き地元に密着しつつ、いよいよ金魚鉢の外へ力強く泳ぎ出そうとしているfishbowl。彼女たちが起こす大波の先にどんな景色が待っているのだろうか。
「ライヴ面だと、下のセットからびょーんと飛び出たり、花道を歩くのが憧れです。このお仕事をやるからには、そこまでいけたらいいなって」(新間)。
「私は韓国でライヴをやることが個人的な目標です」(木村)。
「ライヴの規模を大きくしていくのもそうですけど、目標としては〈静岡といえば?〉と訊かれたときに名前の挙がるグループになりたくて。 〈富士山〉 〈お茶〉の次に〈fishbowl〉が自然に出てきて、そのあとに〈さわやか〉のハンバーグが入るくらい(笑)」(久松)。
「ゆくゆくは静岡の経済を握れるようなグループになりたいです。いまは県教育委員会やJR東海も応援してくださっているので、fishbowlで静岡を支配する計画は着々と進んでいます(笑)」(大白)。
fishbowl
大白桃子、新間いずみ、久松由依、木村日音から成る静岡のアイドル・グループ。テレビ静岡公認の〈しずおかアイドルプロジェクト〉によるオーディションを経て2021年1月に6人組として結成され、同年6月にシングル“深海”でデビュー。9月にはシングル『踊子/朱夏』、12月にはファースト・アルバム『主演』『客演』をリリースする。2022年3月より現体制となり、6月にシングル『熱波/白線』を発表。以降も配信などを重ね、このたびセカンド・アルバム『王国』(payayaam)をリリースしたばかり。