87年にメジャーデビューしたBUCK-TICKの35周年を祝う動きについては、2023年の第1弾リリース『太陽とイカロス』のレビューでお伝えしたとおり。同シングルのリリースから2週間後、3月22日に連続リリースの第2弾になるニューシングル『無限 LOOP』が発表された。来週、4月12日(水)には、23作目のオリジナルアルバム『異空 -IZORA-』がついにリリースされる。少々遅くなったが、『無限 LOOP』についてもレビューしてみよう。

“太陽とイカロス”は星野英彦が作曲だったが、今回の“無限 LOOP”は今井寿が作曲。BUCK-TICKの多くの曲を手がけてきたコンビだ。プレスリリースによると、〈BUCK-TICKの新たな一面と言えるようなポップなサウンドメイキングとなって〉いる。

一聴して思い出したのは、一風堂のヒット曲“すみれ September Love”(82年)だった。土屋昌巳によるこの名曲は、言うまでもなく日本のニューウェーブやニューロマンティクスを代表するナンバーで、エレガンスと色気、独特のループ感、80年代らしいドラムマシーンやシンセサイザーのサウンドが、いま聴いても強烈なインパクトを持っている。97年にヴィジュアル系バンドのSHAZNAがカバーして再ヒットしたことも、よく知られているだろう。BUCK-TICKと土屋の関係性や音楽的なルーツを同じくしているところも大きいことを思えば、この連想は不自然ではないはずだ。

イントロの数秒は、ノイジーでインダストリアルな、ほとんど打音のような電子音。それをドラムやギターのキメが切断して、〈南風が君を誘う〉という歌詞のとおり、風が吹き抜けるような櫻井の歌が不穏さを吹き飛ばす。歪んだベースと電子音は鳴りつづけているのだが(間奏で一気に前景化する)、櫻井の歌の圧倒的な華麗さと透明感のあるギター、そしてかわいらしいシンセサイザーのシーケンスが爽やかだ。ヘビーな音との対比は、負の欲動を正のエネルギーが押さえつけているかのように感じらる。サビに至ってはスティールパンのような音も聞こえ、トロピカルなムードさえあって驚いた。

マニピュレートを担当したのは、このシングルでリミックスも担っている横山和俊。横山のブログによると、〈今井さんの作曲のきっかけは、ひとつのシンセフレーズから延々と繰り返される曲〉だった。だからこそ、反復が基調になっているのだろう。そして、〈それがB-T史上初と噂の爽やかなシティポップにな〉り、〈でも裏では歪んだ音も使ってます〉としている。横山によるかなり詳細な制作日誌も残されているので、裏側を知りたいファンはぜひチェックを。

とにもかくにもビートや展開の面でループ感の強い曲だからこそ、メロディーを駆け上がっていくような櫻井の歌の伸びやかさとエレガンスが強烈に映えている。思いを寄せる人の美と愛を歌い上げるセクシュアルな歌詞もあいまって、櫻井のボーカルにおけるもっとも美しい特質が引き出されているのではないだろうか。

歌詞はどこか一方向的かつ断片的で、思いを寄せる人がどこか遠くに存在しており、〈途切れ途切れ〉の夢のなかでしか会う(見る)ことができない、しかもその人のもとへ一向にたどり着けないような関係に読める。野田智雄が監督したミュージックビデオでは、鏡や(目覚めても終わらない)夢、反復、増殖、螺旋階段、万華鏡といったモチーフが〈無限 LOOP〉感を表現しており、どこかクリストファー・ノーランの映画のようでもある。目的地や目的の相手にたどり着けない、迷宮にさまよい込んだ悪夢のような(だが爽やかな)“無限 LOOP”の世界が表されている。

カップリングされているリミックスは、よりトロピカルで、ラテン風のテイストとリズムが加えられており、かなりダンサブルでポップだ。このリミックスについては〈ノリノリ、アッパー、リミックスというよりはリアレンジ、歌を活かす、ややこしくしない〉というオーダーが今井からあったそうで、横山は〈アニイさん(ヤガミトール)のドラムテイクを使ってリズムパターン(特にスネアの位置)を変える〉ことをとっかかりに、〈南国を意識し〉、〈パーカッションやシンセを追加して、より跳ねる感覚でアレンジしてい〉ったという。そして、変化を表現するため、〈最後に12インチロングver.的な導入部を作〉った。そんな工夫が、“無限 LOOP”という曲の別の魅力を引き出している。

『太陽とイカロス』とあわせて、BUCK-TICKの快調さを力強く伝えるこの『無限 LOOP』。『異空 -IZORA-』への期待を高め、リリースがとにかく待ち遠しくなるシングルだ。

 


RELEASE INFORMATION
リリース日:2023年3月8日
品番:VICL-79009
タワーレコード全国各店/タワーレコード オンライン限定特典:オリジナルクリアファイル(A4サイズ)
価格:1,320円(税込)
初回生産分のみスリーブケース仕様(2023年4月末生産分まで)/シングル、アルバム3作購入者対象応募シリアルナンバー封入

TRACKLIST
1. 無限 LOOP 作詞:櫻井敦司/作曲:今井寿
2. 無限 LOOP -LEAP- 作詞:櫻井敦司/作曲:今井寿
Remixed by 横山和俊

 

BUCK-TICK 『異空 -IZORA-』 Getting Better/ビクター(2023)

リリース日:2023年4月12日(水)

■完全生産限定盤A(SHM-CD+Blu-ray)
品番:VIZL-2169
価格:6,050円(税込)

■完全生産限定盤B(SHM-CD+DVD)
品番:VIZL-2170
価格:5,500円(税込)
・Blu-ray/DVD収録内容:“太陽とイカロス” MUSIC VIDEO/“無限 LOOP” MUSIC VIDEO
・オリジナルアルバムCDにボーナスディスクが付属したスペシャルパッケージ仕様
・すべてのCDプレーヤーで再生できる高品質CD〈SHM-CD〉を採用
・ボーナスディスクには映像コンテンツを収録したディスク(Blu-ray/DVD)を付属
・シングル、アルバム3作購入者対象応募シリアルナンバー封入
・SHM-CD/Blu-ray(DVD)の収録内容をスマホで簡単再生できるプレイパス®対応

■通常盤(SHM-CD)
品番:VICL-70274
価格:3,300円(税込)
・オリジナルアルバムCD
・すべてのCDプレーヤーで再生できる高品質CD〈SHM-CD〉を採用
・シングル、アルバム3作購入者対象応募シリアルナンバー封入
・SHM-CDの収録内容をスマホで簡単再生できるプレイパス®対応

■完全生産限定アナログ盤(2枚組)
品番:VIJL-60287〜8
価格:5,500円(税込)

・オリジナルアルバム全2枚組LP、180g重量盤
・ホワイト・ヴァイナル仕様
・オリジナルポスター封入
・シングル、アルバム3作購入者対象応募シリアルナンバー封入
・アナログレコードの収録内容をスマホで簡単再生できるプレイパス®対応

■完全生産限定カセットテープ
品番:VITL-65546
価格:3,080円(税込)
・シングル、アルバム3作購入者対象応募シリアルナンバー封入
・カセットテープの収録内容をスマホで簡単再生できるプレイパス®対応

TRACKLIST
1. QUANTUM I 作曲:今井寿
2. SCARECROW 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
3. ワルキューレの騎行 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
4. さよならシェルター destroy and regenerate-Mix 作詞:櫻井敦司 作曲:星野英彦
5. 愛のハレム 作詞:櫻井敦司 作曲:星野英彦
6. Campanella 花束を君に 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
7. THE FALLING DOWN 作詞:今井寿 作曲:今井寿
8. 太陽とイカロス 作詞:櫻井敦司 作曲:星野英彦
9. Boogie Woogie 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
10. 無限 LOOP -IZORA- 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
11. 野良猫ブルー 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
12. ヒズミ 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
13. 名も無きわたし 作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿
14. QUANTUM II 作曲:今井寿

 

INFORMATION
BUCK-TICK SUNDAY LIVE STREAMING

2023年2月5日(日)~2023年4月16日(日)
毎週日曜日20:00より生配信(アーカイブ配信は行いません)
YouTube(BUCK-TICK公式チャンネル):https://www.youtube.com/c/BUCKTICK_official

 

LIVE INFORMATION
BUCK-TICK TOUR 2023 異空 -IZORA-

2023年4月19日(水)東京・J:COMホール八王子 開場/開演:17:30/18:30
2023年4月23日(日)栃木・宇都宮市文化会館 大ホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年5月13日(土)香川・観音寺 ハイスタッフホール 大ホール(観音寺市民会館) 開場/開演:17:00/18:00
2023年5月14日(日)岡山・倉敷市民会館 開場/開演:17:00/18:00
2023年5月20日(土)京都・ロームシアター京都 メインホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年5月21日(日)兵庫・神戸国際会館こくさいホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年5月27日(土)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年6月3日(土)愛知・名古屋 日本特殊陶業市民会館フォレストホール(旧:名古屋市民会館) 開場/開演:17:00/18:00
2023年6月10日(土)石川・金沢 本多の森ホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年6月11日(日)長野・長野市芸術館メインホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年6月17日(土)大阪・オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)開場/開演:17:00/18:00
2023年6月18日(日)大阪・オリックス劇場(旧:大阪厚生年金会館)開場/開演:17:00/18:00
2023年6月24日(土)広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール) 開場/開演:17:00/18:00
2023年6月25日(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年7月1日(土)北海道・札幌カナモトホール(札幌市民ホール)開場/開演:17:00/18:00
2023年7月9日(日)宮城・仙台サンプラザホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年7月15日(土)群馬・高崎芸術劇場 大劇場 開場/開演:17:00/18:00
2023年7月17日(月・祝)静岡・静岡市民文化会館 大ホール 開場/開演:17:00/18:00
2023年7月22日(土)東京・有明 東京ガーデンシアター 開場/開演:17:00/18:00
2023年7月23日(日)東京・有明 東京ガーデンシアター 開場/開演:17:00/18:00
前売り:9,900円(税込)
一般発売:2023年3月25日(土)10:00〜