タワーレコード新宿店~渋谷店の洋楽ロック/
つねにリスナー視点を大切にした語り口とユーモラスな発想をもっと多くの人に知ってもらいたい、読んでもらいたい! ということで始まったのが、連載〈パノラマ音楽奇談〉です。第16回は、7月12日が〈ドゥーワップの日〉だったということで、ドゥーワップについて綴ってもらいました。 *Mikiki編集部
7月12日はドゥーワップの日
さる7月12日は〈ドゥーワップの日〉だったそうです。1981年7月12日に、シャネルズやザ・キングトーンズらが出演した〈第1回ジャパンドゥーワップカーニバル〉というイベントが開催されたことに由来するようですが、この機会(と言いつつもう過ぎちゃったけど)にドゥーワップについて書いてみようと思います。なにしろ僕はドゥーワップが大好きなのだ。と、唐突に告白してみたものの、〈それ何? ドーナツみたいなもの?〉という方もいるかもしれません。むしろ2020年代のいま、知っている人のほうが少ないことは否めないでしょう。そこで今回はドゥーワップとは何なのかを簡単に説明しつつ、後半では私的なドゥーワップ体験を綴ってみようと思います。
ドゥーワップとは貧しい10代の黒人たちが街角で生んだシンフォニー
ドゥーワップを一言で説明するならば〈1950年代前半から1960年代初頭にかけてアメリカで隆盛した黒人コーラスグループの俗称〉ということになるでしょうか。リードボーカルとテナー+バリトン+ベースのバックコーラスというのが基本的な編成で、大抵は4、5人で組まれています。その特徴かつ最大の聴きどころは〈ドゥワッドゥワッ〉とか〈シュビドゥビ〉とか〈ワッパドゥ〉といった、それ自体に意味を持たないバックコーラスにあります。
ドゥーワップグループの多くは〈金はないけど夢はある。楽器はないけど声はある〉という感じの若く貧しいティーン層が中心で、スラムなどの街角でコーラスの練習をしていました。まぁ、夢といってもたぶん女の子にモテたいとか小遣いを稼ぎたいとかいうささやかなものじゃないかとは思いますが……。それをまたマイナーレーベルなどが低予算でレコード化していたため当然ながら音作りもシンプルで素朴なものが多いわけですが、それゆえひたすらピュアでタイムレスな魅力に溢れた音楽であるともいえます。一発屋やシングル1枚で消えちゃったようなグループも星の数ほどいますが、その泡沫さも愛おしいではないですか。
ドゥーワップは街角で生まれたために〈ストリートコーナーシンフォニー〉と呼ばれることもありますが、ストリート発信の黒人文化という意味ではヒップホップのグランパ的な位置づけと考えても決して間違いではないと思います。