〈かっこいい〉の何たるかはトレイシーとベンに教わった。それは、何者にも媚びず、みずからへの純粋な信頼を持つこと。軽やかな足取りと繊細さを両立させること。パンクの心を抱きながら、アコースティックやバカラック流ポップス、クラブ・ミュージックと感性の赴くままに音楽性を更新してきたEBTG。コロナ禍を契機として23年ぶりに再始動したデュオの新作が、かくもフレッシュだとは、誰が予想しえただろう。物憂げな歌と電子音を重ねるフォーマットは変化せずとも、低音や声への意匠はまさしく2023年サウンド。音楽を愛する者、いや現代に暮らす者としての現役感にただただ驚かされる傑作だ。