82年に発表したファースト・アルバム『North Marine Drive』で、ネオアコ・ファンのハートを掴んだベン・ワット。その後、後に妻となるトレイシー・ソーンと結成したエヴリシング・バット・ザ・ガールで、イギリスを代表するポップ・デュオとしてブレイク。解散後はDJとして活動していたが、2014年に32年ぶりのソロ・アルバム『Hendra』をリリースして以来、コンスタントに作品を発表し、前作『Fever Dream』(2016年)以来4年ぶりとなる新作『Storm Damage』を1月末にリリースした。
前作まで試みられていたバーナード・バトラー(スウェード)とのツイン・ギター体制から打って変わって、セルフ・プロデュースによる『Storm Damage』では、アップライト・ピアノ、ダブル・ベース、アコースティックとエレクトロニックのハイブリッド・ドラムなどを用いた編成にシフト。こうした新しい方向性について、ベン・ワットは「新しいアプローチが必要だった。音楽的に同じことを繰り返すことは、自分が持つ鋭い感覚に対する冒涜だと感じることがある。そのエネルギーを表現する新しい方法を探さないといけないんだ」とコメント。さらに「政治に対する怒りや、個人的な悩みを抱えていて苦しんでいた時期に作った」という本作は、厳しい現実に向き合い、ヘヴィーだが希望を感じさせる。今やUKロックの重鎮となったベン・ワットが新境地を切り開いたアルバムだ。
『North Marine Drive』は、なぜそれほど魅力的なのか。ベン・ワットという音楽家の魅力とはどんなところなのか。そして、『Hendra』から『Storm Damage』へと至る、〈21世紀のベン・ワット〉の新しいモードとは。
『North Marine Drive』が〈究極の一枚〉だという曽我部恵一が、4月の来日公演も控えるベン・ワットというネオアコのレジェンドについて語ってくれた。