明日なき世界に向かって、パンクの生ける伝説はスピリットと伝統を熱く轟かせる。ファースト・アルバムから30年、通算10枚目のアルバムがついに登場!
多様なパンク復権のなかで
近頃、日本の若いバンドマンが名前を挙げるマシン・ガン・ケリーに加え、ヤングブラッドら、新しい世代のアーティストの台頭と共に〈パンク〉がふたたび盛り上がっている。そんなパンク・リヴァイヴァルを追い風に2019年に再結成したマイ・ケミカル・ロマンスをヘッドライナーに迎え、今年3月、6年ぶりに開催された〈PUNKSPRING〉や、そのExtra Showsとして横浜、大阪、東京の3都市で実現したインタラプターズの単独公演ともに盛況だったと聞く。
また、示し合わせたわけではないと思うが、この1年の間にシンプル・プラン、パラモア、オール・タイム・ロウ、フォール・アウト・ボーイといった00年代のポップ・パンク・ブームをリードしたバンドたちがシーン最前線に戻ってきたことをアピールするように新作をリリースしたことも、パンク・リヴァイヴァルを勢いづかせることに一役買ったに違いない。
いや、00年代のバンドだけではない。NOFX、オフスプリング、ホット・ウォーター・ミュージックら、前掲バンドたちの1つ上の世代と言えるバンドたちもファン待望の新作をリリースして、健在ぶりをアピールしている。そして、トム・デロングが復帰して全盛期のラインナップに戻ったブリンク182もそのラインナップでは10年ぶりとなる新曲“Edging”を発表した。現在、彼らは来年の春まで日程が発表されている長いツアーの真っ最中だが、すでに新作にも取り組みはじめているという。
そのように、パンク・リバイバルは、いわゆるY2Kにとどまらない活況を呈しはじめた。このたびランシドが6年ぶりにリリースする10枚目のアルバム『Tomorrow Never Comes』は、そんな状況をダメ押しで印象づけるに違いない。なぜなら今回の新作は、『...Honor Is All We Know』(2014年)と『Trouble Maker』(2017年)に続いて、ランシドが三たびバンドの原点であるパンク・ロックをストレートに鳴らした作品だからだ。また、前2作には収録されていた彼らの持ち味の1つであるスカ・パンク・ナンバーが今回は1曲も収録されていないことを考えると、原点回帰というテーマを追求するうえで、さらにもう一歩踏み込んだと言うこともできるだろう。プロデュースは『...And Out Come The Wolves』(95年)と『Life Won’t Wait』(98年)以外の全アルバムを手掛けてきたエピタフの社長兼バッド・レリジョンのギタリスト、ブレット・ガーヴィッツが引き続き担当している。