結成12周年記念公演〈RYUTist 12th ANNIVERSARY LIVE〉を2023年9月8日(金)に東京・渋谷のSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで開催することを発表したRYUTist。キュートでエッジーかつユーモラスな新アーティスト写真とビジュアルにも注目です。そんなRYUTistの宇野友恵さんが本について綴っているのが、この連載〈RYUTist宇野友恵の「好き」よファルセットで届け!〉です。第24回の一冊は、津村記久子さんの脱力系エッセイ集「まぬけなこよみ」。友恵さんが読書体験から得たヒントとは? *Mikiki編集部

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ステキってなんでしょうか。

きれいなもの? ときめくもの? すばらしいもの?
どれもきっと間違ってはいないのに私は最近この言葉に悩まされていました。

 

事の発端は、先日の〈RYUTist HOME LIVE〉でのこと。
MCでスタッフさんがその場で出したお題についてメンバー3人で話すというミニコーナーが突如はじまりました。
今月7月24日でデビュー12周年を迎えるというのに、トークだけは成長が芳しくないということで、かねてより苦手にしていたトークスキルの強化を図る為に用意してくださったのでした。
その第1回目のお題が〈ステキの定義〉だったのです。

普段のMCは入念に話すことを決めている私たち。このMCは、完全にフリートークで挑みました。
まず、なんと致命的なことか。〈定義〉を知らない(〈なんとなく〉は知っていた)3人娘というスタッフの意図に反した事実を知らしめることになりました。お見苦しい。
最初から難易度高めのお題に苦戦していました。
その後、〈丁寧な生活ができる〉〈所作が美しい〉〈容姿が可愛い〉などとそれぞれが思うステキを挙げ、ぐだぐだと話し合って、ちょっと盛り上がったような気もするけど、合格印は押してもらえなかった様子でした(当然)。

 

そして、私はあの日以来〈ステキ〉という言葉に敏感になりました。
元々、この言葉はすぐれているがゆえに、自分の引き出しに入れておくとすぐに使ってしまう恐れがある為、回数制限とまではいかないけど、意識はしていた言葉でした。

それ以降この一件で引っかかってしまったかのように、さらなる出来事が起こりました。
喫茶店に行った時、音楽を聴いた時、〈ステキ〉の3文字が頭に浮かぶと即座にステキ警察がピピーッとあらわれ、〈あんたまた言ってるよ〉〈それは本物の真のステキか?〉〈どんなステキだ?〉と尋問される。
ステキ……ステキ……ステキテキステキ……。

もうなにがなんだか、取り憑かれたようにわからなくなってしまいましたが、最近読んでいた津村記久子さんの「まぬけなこよみ」でヒントを得ました。

津村記久子 『まぬけなこよみ』 朝日新聞出版(2023)

 

この本は担当編集者が毎回〈季節のことば〉の候補を出し、それをテーマに津村さんが書いた七十二候のエッセイを歳時記のようにまとめたものです。

頭から読んでもいいし、現在の季節から読み始めても楽しいです。
春の雛人形、夏の茅の輪くぐり、秋のキンモクセイ、冬のコンビニおでんなど。
読めば、テーマに合わせた自分の思い出も蘇ってきましたし、津村さんの肩の力が抜けた文章が心地よかったです。

季節に関して実は間違っていたことやうろ覚えの記憶、何気ない呟きまでもが正直に記してあり、それすらも話の展開のパーツのひとつとなっていました。
この津村さんの文章から感じた脱力感こそが、自分に足りないものなのではないかと思います。

私はなんでも正解を求めがちです。凝り固まった頭で正解を一生懸命探しても見つかるはずはありません。そもそも正解なんてないというのに。それすら忘れていたなんて、あさはかなことです。
ステキと思ったらそれがステキ。ステキかどうか疑いをかけたり、真のステキを追い求める必要もない。
どうステキなのか伝える術をたくさん持っていた方がいいとは思いますが。