坂本龍一の言葉、彼の音楽を採譜した楽譜とその音楽の分析を綴じ込んだこの本の、騒々しい昨今のメディアにはない静けさが、教授の時として凛とした音楽の表情を思い出させる。本は〈キーボード・マガジン1999年6月号から2001年7月号に渡って連載された「selected songs of Ryuichi Sakamoto」を中心に編集したもの〉の再発だ。本を監修したキーボード・マガジンの編集部から分析を依頼されたのは作曲家渋谷慶一郎だ。雑誌の性格上、インタヴューにはレコーディング時に使用した機材についての話が多数登場し、現場の歴史が記録され、譜面を解く渋谷の言葉は、教授の音楽を差異の反復へ誘い出す。