ソロ・デビュー35周年記念ライヴ〈Arcadia ~理想郷~〉と〈星路〉
オーケストラとバンド、それぞれの魅力を特別映像とともに

 1987年にシングル“All I Do”でソロ・デビューしてから35年、それを記念したライヴ〈Arcadia ~理想郷~〉と〈星路〉の2作品をセットにしたスペシャルボックスになる。前者の正式タイトルは、〈billboard classics 玉置浩二 35th ANNIVERSARY LEGENDARY SYMPHONIC CONERT 2022 “Aradia ~理想郷~”〉。このタイトルからわかるように大友直人が指揮する群馬交響楽団との共演で、会場は壮麗な富士山を臨む河口湖ステラシアターだ。野外で聴くオーケストラの演奏で歌う玉置浩二の名曲。“カリント工場の煙突の上に”の心の叫びのような熱唱が空高くへと響いていく。もう何度billboard classicsシリーズでオーケストラと共演しているのだろうか。“CAFÉ JAPAN”ではジャズのような即興を交えつつ、まるでオーケストラが奏でる音楽の海を自由に泳ぎ回るように歌う。楽譜から解放された歌。一音一音に魂を込めつつ、感情の赴くままに歌っていく。時おりマイクを外して肉声で歌うのだが、その声は観客の胸により熱く響いていたに違いない。

玉置浩二 『玉置浩二 35th ANNIVERSARY CONCERT Special Collections “Arcadia” & “星路(みち)”』 コロムビア(2023)

 そして、正式タイトルを〈玉置浩二 Concert Tour 2022 故郷楽団 35th ANNIVERSARY ~星路~〉とする後者は、意外な映像から始まる。玉置浩二30歳、お父様64歳の時に親子で、宗谷岬から地元旭川まで300キロを10日間歩き続けたドキュメンタリー映像が流れる。「ミック・ジャガーって知っている?」という問いに、「肉じゃがか」と答える会話に、小雨が降ると、巨大なふきの葉を傘替わりにする姿。親子のほのぼのとした様子と、100キロ徒歩の過酷さ、さらにゴールした自宅で号泣するお父様と抱き合う姿。コンサート会場でも流れた映像だが、なぜこの映像を今あらためて紹介するのだろうか。ご自身が当時のお父様と同じ年齢の64歳になったことが関係しているのだろうか。個人的にはその100キロの歩みが玉置浩二の音楽人生と重なって映った。アーティストとして挑み続けている音楽の道に見えてきた。

 そのドキュメンタリー映像に続くコンサートは、2022年に全国28公演行われたツアーのなかの仙台サンプラザホールでの模様が収録されている。こちらはバンドとの公演だけれど、バンドの編成がユニークで、キーボード、ギター、ヴァイオリン、チェロ、パーカッション、ベース。自身はギターを抱えて、セットリストは両者で一部曲が重なり、お約束のようにアンコールでは“田園”と“メロデイー”が歌われるのだが、オープニングナンバーも同じ“カリント工場の煙突の上に”なので、聴き比べることが出来る。バンド編成ではさすがホームグラウンドといった貫禄があり、彼が歌の主導権を完璧に握っているパフォーマンスを楽しめる。

 〈Arcadia ~理想郷~〉と〈星路〉に音楽的な違いはもちろんだけれど、オーケストラとは同志、バンドとは仲間、奏でられる音楽からそんなステージ上の絆の違いが感じられる。そして、2作品を通して思うのは、天から歌というストーリーを紡ぐ才能を与えられたアーティストだということ。その魅力をたっぷり堪能できる映像作品である。

 


玉置浩二(Koji Tamaki)
1958年、北海道生まれ。1982年、〈安全地帯〉としてデビュー。“ワインレッドの心”“恋の予感”“悲しみにさよなら”など80年代の音楽シーンを席巻。ソロ活動で作詞も手がけ始め、“田園”“メロディー”をはじめとする多くのヒットを生み出す。2012年には、オリジナルレーベル〈SALTMODERATE〉を発足。2015年・2016年、国内外の主要オーケストラと共演するビルボードクラシックス公演を実施。2016年6月、バルカン特別編成交響楽団に管弦楽作品“歓喜の歌”を謹呈。2020年、第71回NHK紅白歌合戦に24年ぶりの出場を果たす。2021年には、〈PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2021「THE EURASIAN RENAISSANCE “ОТТЕПЕЛЬ(オーチェペリ)”」〉、〈КАПЕЛЬ(カペーリ)〉公演、バンド編成による〈玉置浩二 Concert Tour 2021 故郷楽団~Chocolate cosmos〉を敢行。2022年にはソロデビュー35周年そして安全地帯デビュー40周年を迎えた。

 


LIVE INFORMATION
玉置浩二 Concert Tour 2023 故郷BAND~田園~

2023年8月26日(土)香川・ハイスタッフホール(観音寺市民会館)大ホール
2023年8月27日(日)愛媛・愛媛県県民文化会館メインホール
2023年8月30日(水)神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
2023年9月2日(土)福島・けんしん郡山文化センター(郡山市民文化センター)
2023年9月7日(木)神奈川・カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)
2023年9月9日(土)栃木・宇都宮市文化会館
2023年9月12日(火)・13日(水)大阪・フェスティバルホール
2023年9月19日(火)・20日(水)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
2023年9月22日(金)北海道・旭川市民文化会館 大ホール
2023年9月26日(火)長野・長野ホクト文化ホール 大ホール
2023年9月29日(金)石川・本多の森北電ホール(旧:本多の森ホール)
2023年10月1日(日)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2023年10月4日(水)愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
2023年10月7日(土)鳥取・米子コンベンションセンター BiG SHiP
2023年10月12日(木)・13日(金)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2023年10月15日(日)岡山・岡山芸術創造劇場 ハレノワ大劇場
2023年10月20日(金)熊本・熊本城ホール 大ホール
2023年10月21日(土)福岡・北九州ソレイユホール
2023年10月26日(木)新潟・新潟県民会館
2023年10月30日(月)岩手・トーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館)
2023年11月3日(金・祝)兵庫・アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)大ホール
2023年11月4日(土)滋賀・びわ湖ホール 大ホール
2023年11月8日(水)福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
2023年11月9日(木)広島・広島文化学園HBGホール
2023年11月15日(水)静岡・静岡市民文化会館 大ホール
2023年11月18日(土)神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
2023年11月19日(日)東京・東京国際フォーラム ホールA 他
https://saltmoderate.com/news/detail/20274