昨年の秋からスタートしたNHK連続テレビ小説「ばけばけ」は、作家・小泉八雲ことラフカディオ・ハーンとその妻・セツをモデルに、〈怪談〉を愛する夫婦の何気ない日常を描いた物語だ。主演の髙石あかりとイギリス出身の俳優トミー・バストウが演じるトキとヘブンが紆余曲折の果てにようやく結ばれ、ひとつ屋根の下で家族としてともに歩み出した後半のストーリーはひときわ大きな話題を呼んでいる。

そんな「ばけばけ」のモデルである八雲とセツにまつわる書籍をはじめ、ドラマをより一層楽しむことができる関連作品の数々を昨年紹介したが、その後発売が決まったものも含め、まだまだ見逃せないアイテムが目白押しだ。そこで今回は、「ばけばけ」ファンにぜひ手に取ってほしい品々を新たに紹介していこう。

まずは、2026年1月29日(木)にNHK出版から刊行されるムック本「連続テレビ小説 ばけばけ Part2(1)」。昨年9月に発売された「連続テレビ小説 ばけばけ Part1(1)」に続くドラマガイドの第2弾で、今回は髙石あかりとトミー・バストウの巻頭対談が実現している。また、吉沢亮、北川景子、岡部たかし、池脇千鶴ら出演者へのインタビューや、トキとヘブンの新居である武家屋敷や山橋薬舗などのセット解説、阿佐ヶ谷姉妹が語る脚本家・ふじきみつ彦の作品の魅力、さらに今後のあらすじまで、視聴者にはたまらないコンテンツが満載だ。

ふじきみつ彦, NHKドラマ制作班, NHK出版 『連続テレビ小説 ばけばけ Part2(1)』 NHK出版(2026)

また、ドラマを見進めるにつれ、改めてセツと八雲の歩みに興味を持った人におすすめしたいのが、八雲の曾孫であり、小泉八雲記念館館長でもある小泉凡が上梓した新書「セツと八雲」だ。セツと八雲の軌跡はもちろん、「ばけばけ」の主人公・松野トキの名前の由来になっているという八雲の晩年のあるエピソードや、八雲の代表作「怪談」の表記が「KWAIDAN」となっている理由、そんな「怪談」をはじめとする夫婦の出会いによって生まれた作品の魅力が語られている。家族だからこそ知り得る逸話の数々は興味深いものばかりだ。

小泉凡 『セツと八雲』 朝日新聞出版(2025)

そして、そんな八雲に寄り添い続けたセツ自身による回想記「思ひ出の記」にもぜひ注目したい。これはセツが八雲との13年8か月にわたる結婚生活を綴ったもので、夫婦の間だけで通じる〈ヘルンさん言葉〉を駆使した会話など、2人ならではのユニークな日々は、文豪・小泉八雲の〈人間〉としての実像を伝えてくれる。なおハンバート ハンバートが歌う「ばけばけ」の主題歌“笑ったり 転んだり”は、メンバーの佐藤良成が「思ひ出の記」を繰り返し読んで書き上げた一曲だ。まさにドラマの世界観を支える一冊と言っていいだろう。

小泉節子 『思ひ出の記』 ハーベスト出版(2024)

ハンバート ハンバート 『ハンバート入門』 SPACE SHOWER(2025)

また、風景や人柄などが神々の国・出雲に似ているというアイルランドで幼少期を過ごした八雲は、首都ダブリンで幽霊に出会ったそう。そんな八雲が怪談に興味を抱くに至った謎を、曾孫・小泉凡や、「ばけばけ」の舞台である松江市出身でドラマにも出演している佐野史郎らとともにかの地を訪ねて紐解いた紀行文「小泉八雲 育んだ国 アイルランド訪問記」は、他とは一味違う視点で八雲の人物像を理解する手掛かりとなるに違いない。

川島典子 『小泉八雲 育んだ国 アイルランド訪問記』 山陰中央新報社(2025)