小坂忠のメモリアル・アルバムに寄せる愛娘Asiahの想い

 ロック、R&B、ゴスペルを包括した独自の音楽で数多くの音楽ファンから愛され続けたSSW、小坂忠。昨2022年4月に癌のために惜しまれつつこの世を去ってしまった彼のメモリアル作品ともいうべきアルバム『THE LAST SESSION~with Chu’s Friends』が10月25日に発表される。未発表音源“F.W.Y”や、鈴木茂とのユニット〈茂忠〉による“まだ夢の途中”などの他、1976年に演奏された“どろんこまつり”がボーナストラックとして収められたCD。そして2021年に開催されたライヴ・パフォーマンスの模様を収録したDVD。AudioとVisualの両面で小坂忠のリアルな息遣いが感じられるアルバムについて、小坂の愛娘であり父と同じくSSWとして活躍するAsiahに話を聞いた。

小坂忠 『THE LAST SESSION~with Chu’s Friends』 コロムビア(2023)

 「このアルバムを手にして思うことは、50年以上に亘るキャリアの中から選び出した貴重な演奏を収めた作品を作ってくださったことに対する感謝の気持ち。これだけの作品にまとめあげるというのは大変な労力だったと思います。それと同時に感じるのが、父に対する皆さんからの大きな愛情。父が音楽家として幸せな人生を送れたことを実感しています」。その彼女の想いが溢れ出るのが、2015年に父とデュエットで歌った“音楽を信じる We Believe in Music”と、2022年に配信で発表され、あらためてアルバムに収録された“Just Like You”の2曲だ。両曲からは、小坂忠のスピリットが次世代に継承されていることを感じる。

 「“音楽を信じる~”は、長年親しくしてくださってる村井邦彦さんの曲で最愛の父と一緒に音楽への愛情を歌うことのできた感慨深い曲です。“Just Like You”は、父の音楽仲間だった佐橋佳幸さんが、〈たった今、忠さんに贈る曲が降りてきた! ぜひ歌ってほしい〉と言ってくださった曲。そのメロディを聴いた途端、父への想いが溢れ出てきて書きあげることのできた作品です。寝たきりで寝室の天井しか見ることのできない父に溢れる緑を見せたいとの母の一心で連れて行った軽井沢での思い出や、息を引き取る直前までギターを手放そうとしなかった音楽への強い情熱、もう少しで訪れる温かな春の中で一緒に日差しを浴びたかったという願いなどが次々に浮かんできて。そうした父への気持ちを伝えたくて、今年の父の日に配信の形で発表したんです。父親との絆を感じる人って多いと思うんです。全国のお父さんたち、そしてお父さんを愛する皆さんにも聴いていただきたいですね」