新作『FACE』の中に見い出せる時代の顔役たち
90年代の音楽がリヴァイヴァルしつつあるなか、80KIDZの2人が立ち返ったのは、彼らが10代の時に出会った90年代後半から2000年代初頭にかけての音楽シーン。そこで混在していたロックとクラブ・ミュージックを橋渡ししたのが、英国にあって、ニューウェイヴをルーツに持つマッシヴ・アタックや、大ネタのサンプリング/ゲストをフィーチャーしたブレイクビーツを特徴とするビッグ・ビートの2大巨頭、ケミカル・ブラザーズとファットボーイ・スリムだろう。
その一方で米国でベックに象徴されるオルタナティヴ・シーンが映画監督のソフィア・コッポラやスパイク・ジョーンズを介して、フレンチ・タッチと呼ばれた仏国のポップ・アクトたちとリンク。ベンジャミン・ダイアモンドやダフト・パンクのようなフレンチ・ハウス・アクトからサイケデリック・ポップやダウンテンポに軸足を置いたエールまで、その幅広い音楽性がスマートかつ洗練されたセンスで繋がれたことを筆頭に、リスナーは細かいサブ・ジャンルを意識することなく作品を楽しむ、いい意味で混沌とした環境があった。
そんな時代に音楽観が育まれたからこそ、リスニング・オリエンテッドなアプローチ――ポップスとクラブ・ミュージックを同じ目線でカヴァーする楽曲と、その豊かなヴァリエーションを特徴とするアルバム『FACE』は、80KIDZにとってのスタンダードにあたる――そう言えるのではないだろうか?
▼関連作品
左から、マッシヴ・アタックの98年作『Mezzanine』(Melankolic/Virgin)、ケミカル・ブラザーズの2002年作『Come With Us』(Virgin)、ファットボーイ・スリムの2000年作『Halfway Between The Gutter And The Stars』(Skint)、ベックの2002年作『Sea Change』(Geffen)、ダフト・パンクの97年作『Homework』、エールの98年作『Moon Safari』(共にVirgin)
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