
THE KING OF THE KINGS OF RHYTHM
〈ティナ・ターナー〉を作った男、アイク・ターナー
現代の観点で照らさなくてもアウトな気質の持ち主として語られるアイク・ターナーながら、そうであってもティナのキャリアを語るうえで彼の名を欠かすことはできないし、彼がポップ音楽の歴史に果たした役割は変わらない。1931年にミシシッピ州クラークスデイルで生まれた彼はハードな環境の中でピアノやギターの演奏を修得し、戦後まもない40年代後半に友人たちとキングス・オブ・リズムを結成している。バンドのサックス奏者であるジャッキー・ブレンストンが歌って51年にレコードになった“Rocket 88”は〈ロックンロール最初の1曲〉とされることも多いエポックメイキングな曲で、そのバンドにやがて君臨するティナが〈ロックンロールの女王〉と呼ばれたのは真っ当なのかもしれない。
ブルースやブギウギ、初期のロカビリーを我流で血肉化したアイクの演奏は独自のルートでロックンロールやリズム&ブルース、ソウル、ファンクに辿り着き、それは60年にアイク&ティナを結成してからより研ぎ澄まされていった。並行してコーラス隊のアイケッツやバンドのキングス・オブ・リズムでの作品も出し、ボリック・サウンド・スタジオ設立後は制作に没頭していくが、ティナに去られてからは時代の流れもあって完全に失速。91年の〈ロックの殿堂〉入りも獄中で迎えるなどトラブル続きの日々を送る。2005年にゴリラズとコラボし、2006年の最終作『Risin’ With The Blues』でグラミーを受賞して失地回復するも、ブラック・キーズとのコラボ話も進んでいた2008年にドラッグ禍で逝去している。*轟ひろみ
左から、アイク・ターナーの編集盤『Trailblazin’ The Blues 1951-1957』(Jasmine/OCTAVE)、アイク・ターナー&ザ・キングス・オブ・リズムの69年作『A Black Man’s Soul』(Pompeii/OCTAVE)、アイク・ターナーの80年作『The Edge』(Fantasy)、ゴリラズの2005年作『Demon Days』(Parlophone)、アイク・ターナーの2006年作『Risin’ With The Blues』(Zoho Roots)