何かと話題の超人ルイス・コールとジェネヴィーヴ・アルターディの組んだ超絶ポップ・ユニットの新作がいよいよ到着! このコンビネーションだけの魔法が奏でる永遠とは?
夏の〈フジロック〉で評判となる一方、星野源と若林正恭(オードリー)によるNetflixのトーク番組「LIGHTHOUSE」のオープニング用に作られた星野の“Mad Hope”にサム・ゲンデルと共に客演するなど、さまざまなトピックに事欠かないルイス・コール。その来日に先駆けては2019年の『Live Sesh And Xtra Songs』を日本独自仕様でフィジカル化し、さらには未発表&デモ音源集『Some Unused Songs』の配信といったリリースも続いていたが、それに続いて登場したのがジェネヴィーヴ・アルターディと組んだ、ノウワーでは実に5年ぶりとなるアルバム『Knower Forever』だ。
互いに互いを影響源と語るルイスとジェネヴィーヴのコンビネーションは、もちろんその間も途切れたことはない。近作『Quality Over Opinion』(2022年)に至るまでルイスの作品には常にジェネヴィーヴがいるし、彼女のブレインフィーダーでの2作目『Forever Forever』(2023年)にもルイスの名前は当然あった。彼の昨年の来日公演ではジェネヴィーヴがオープニング・アクトを務め、彼女は先述の〈フジロック〉でもルイスと共にステージに立っている。ここ最近のジェネヴィーヴはブラジルの新世代ギタリストとして脚光を浴びるペドロ・マルチンスとの絡みでも注目されている(エクスペンシヴ・マグネッツとしてコラボ作も残している)わけだが、そうやって活躍中の両名を最大限にクリエイティヴな形で結びつけ、融合しているのがノウワーという場なのだろう。
今回の『Knower Forever』は、そんな二人が引き起こした化学反応の最新レポートだ。壮麗なオーケストレーションによる冒頭のタイトル・トラックこそルイス独力の仕事ながら、同曲をイントロダクションとしてそこから流れ込む本編はいずれもジェネヴィーヴの個性的なヴォーカルを擁し、ルイスと共作した楽曲となる。怒涛の超絶ドラミングで演奏を牽引するルイスを支えて、彼の来日メンバーにも名を連ねたライ・ティスルスウェイト(キーボード)をはじめ、お馴染みのサム・ウィルクス(ベース)、プリンスの影響を受け継ぐモノネオン(ベース)、さらにはジェイコブ・マン(キーボード)、サンパサウルスでも知られるポール・コーニッシュ(キーボード/ピアノ)ら主役それぞれと親交の深いミュージシャンたちが参加。多くの曲で演奏する彼らに加え、サム・ゲンデル(サックス)やチキータ・マジックことイシス・ヒラルド(キーボード)らも要所で存在感を見せている。
サム・ウィルクスの特徴的なベースが導く“I’m The President”ではポールのピアノ・ソロが印象的だし、ニューウェイヴ的な痙攣で突っ走る“The Abyss”や“Nightmare”などではモノネオンがタイトに並走する。グルーヴィーというよりはリズミックな演奏の妙と、浮遊感を纏ったジェネヴィーヴのアトモスフェリックな歌声との好相性は言わずもがな。かと思えばルイスのピアノと弦だけをバックにゆったり歌う“Same Smile, Different Face”があったり、アダム・ラトナー(ギター)のプレイが光るフュージョン・ロック風の“Do Hot Girls Like Chords?”があったり、スリルと耳馴染みの良さが一体となって迫る様子は圧倒的だろう。
このようにヴォーカリスト × プロデューサーという掛け算以上の成果を引き起こすのがノウワーだ。フィジカル化にあたってのボーナス・トラックとなる“Bonus Track”の人を食ったようなノリに至るまで、楽曲群のまろやかな先鋭性が作品全体のポップな美点に繋がっている。アルバム名の意味なども気になるところだが、まずはこの音そのものを存分に楽しみたい。
左から、ノウワーの2018年作『Life』(Knower)、ルイス・コールの2022年作『Quality Over Opinion』、ジェネヴィーヴ・アルターディの2023年作『Forever Forever』(共にBrainfeeder)、ジェネヴィーヴが参加したペドロ・マルチンスの2023年作『Rádio Mistério』(Heartcore/MOCLOUD)
左から、ルイス・コールの2019年作『Live Sesh And Xtra Songs』(Brainfeeder/BEAT)、『Knower Forever』に参加したサム・ウィルクスのニュー・アルバム『Driving』(ASTROLLAGE)、サム・ゲンデル&マルセラ・シトリノウィッツの2023年作『Audiobook』(Psychic Hotline)、チキータ・マジックの2019年作『It’s Different』(rings)、モノネオンの2023年作『Jelly Belly Dirty Somebody』(Diggers Factory)