KNOWERでも活躍するハイパー・ドラマーにしてモンスター級の才人が、メトロポール・オーケストラと共演。現時点での集大成にして総決算!
LAを拠点とするルイス・コールは、サンダーキャットも全幅の信頼を寄せるハイパー・ドラマーであり、女性ヴォーカリストのジュネヴィーヴ・アルターディとのデュオ=ノウワーでも活躍するモンスター級の才人。第65、67回のグラミー賞にもノミネートされた実績の持ち主でもある。そんなルイスの最新作『nothing』は、3年連続となるブレインフィーダーからのリリース。それもなんと、世界有数のポップ&ジャズオーケストラであるメトロポール・オーケストラとの共演作だ。28名のストリングスを含み、多い曲で60人を超えるサウンドは気宇壮大にして重厚長大。これまでになくスケールの大きな音世界が展開されている。ルイスと同オーケストラは2021年から、ジュールズ・バックリーの指揮で幾度となく共演しているという。
「オーケストラとジュールズから連絡が来て、彼らのための音楽を作曲してみないかと打診を受けたんだ。僕は前々からオーケストラ用の音楽を書きたいという思いがあったから、すごく興奮したね。彼らはあらゆる種類の音楽に対してオープンだ。オーケストラと言えばクラシック音楽を演奏するというのが一般的だけど、彼らは新しい音楽、あらゆるタイプやスタイルの音楽を演奏するし、グルーヴも自由自在なんだ」
メトロポール・オーケストラは、参加作がグラミー賞に24回ノミネートされ、そのうち4回受賞している。創設は1945年で、エラ・フィッツジェラルド、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、エルヴィス・コステロなどのレジェンド達と共演歴がある。ちなみに、本作にはジュネヴィーヴも参加しているし、ノウワーに近い曲も入っている。つまり、ノウワーとルイスのソロ作の境界線は徐々に曖昧になり、相互に侵食したり、影響しあったりするようになっているのではないか。
「確かにそうだと思う。ノウワーの曲も、このメトロポールのアルバムと同じくらいの時期に書いていたから、2つの間に似たようなサウンドが入っていても不思議じゃないんだ。ノウワーは今よりエレクトロニック指向で、自分のソロはそうじゃなかったと思う。でも、確かに今はその2つの世界が段々と混ざり合ってきているんだ。自分の好きなものが自分で分かってきて、それがあらゆるサウンドに波及しているというかね」
ルイスの父はクラシックが好きで、ストラヴィンスキー、ヒンデミット、バッハ、モーツァルト、ショパンなどを愛聴していたという。ルイスにも、当然その影響はある。例えば、エドガー・ヴァレーズに憧れていたフランク・ザッパが晩年特にそうだったように、自分を(古典的な意味での)〈作曲家〉という意識で新作に臨んだのでは? という問いにも首肯してくれた。ところで、ジュネヴィーヴはルイスのことをコントロール・フリークと冗談交じりに発言しているが、それは本作を聴くとある程度当たっているのかもしれない、と思えてくる。
「間違いなく完全にコントロール・フリークだね。そこはもう率先して自己申告するくらい(笑)。いいアイデアが浮かんだらそれをちゃんと形にしたいし、思った通りにリアライズしたい。他の誰かの意見によって自分のヴィジョンを変えるというのは、僕にとっては難しいことなんだよね。今回も97%が作曲されたもので、誰かがソロをとっている時でも、その背後では完全に書かれたものが演奏されていたりするんだ」
超人ルイス・コールの、現時点での集大成にして総決算。そう本作を位置づけることも可能なのではないだろうか。それほど濃密で濃厚なサウンドが横溢している。
「集大成? 実際そうだと思う。この15年間音楽を作って学んできたことが本当に役に立った。もっと前にやっていたら意味をなさなかったと思う。この15年間で様々な音楽を書いてきて、かつ、これまでの人生経験も役立っている。あらゆる努力と全人生の集大成っていう感じは、確かにあるね」
ルイス・コール(Louis Cole)
ロサンゼルスを拠点とするシンガーソングライター/プロデューサー。プレイヤーとしてもメインのドラム、曲作りで主に使うというキーボードなど多くの楽器を自ら演奏する。ジャズを学び、トニー・ウィリアムス、ジャック・ディジョネット、ネイト・ウッド、キース・カーロックといったドラマーたちに憧れた超絶ドラマーでもある。