【はっぴいえんどを松本隆と鈴木茂が語る】第3回　嘘をつけなかった〈素灯り〉のバンドとその解散

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はっぴいえんどの台所事情

松本「はっぴいえんどの解散が決まってプロデュースをやっていた時は楽しかったよ。でも、一銭も入らなかったから商売にはならなかったね」

安田「その頃まで、ほとんど音楽で儲けたことがないわけですね」

松本「いや、儲かっているよね?」

鈴木「まあ、普通に……」

安田「おぉ!　そこはちょっと訊きたいです」

松本「基本給料が5万円だったね。当時のサラリーマンがどのくらいもらっていたか分からないけど」

鈴木「5万円ってさ、エイプリル・フールの給料でしょ?　小坂忠さんが5万円の給料袋をちらつかせて、細野さんを拉致していったの（笑）。それまで僕と林と細野さんとでバンドやっていたのに、エイプリル・フールに行っちゃったわけ。はっぴいえんどになってから基本給料というのはなかったと思うんだけど、でも結構ライブをやってたよね。学園祭とかで」

松本「大体1ステージやると5万。メンバー4人とマネージャーの石浦（信三）との5人で分けていたね」

鈴木「岡林さんのライブをはっぴいえんどでやってくれたら30万円払うと言われて、楽器を買うためにやったんだよね。だからそのくらいの金額までは、はっぴいえんどではなかなか集められなかったのかもしれないね」

安田「お2人と細野さんは実家住まいで、一人暮らしは大滝さんだけですよね」

松本「大滝さんは苦しかったと思う。

この間、若林に行って辛島（いづみ）さんと〈風街探訪〉ということで聖地巡りをしたんだよね。大滝さんの部屋はどこかな?って探したんだけど、30分くらいかけて〈大体この辺だった〉というのは分かったけど、もう本人がいないから分からない」

安田「よく松本さんの家でミーティングをされていたんですよね」

松本「僕の家にはよく集まっていたよ」

鈴木「ミーティングって僕はあんまり記憶が……」

松本「嘘だぁ（笑）! 〈バンドなんだから、もっと音を出して練習しようよ!　これじゃ会議バンドだ!〉って茂が文句を言っていたよ（笑）」

鈴木「そんなことあったかなあ（笑）?　でも確かにみんなアイデアがあって、それぞれミュージシャンでありプロデューサーだったから、別に練習しなくても楽屋で打ち合わせするだけでよかった。

だから大滝さんの“はいからはくち”なんて何バージョンあったか分からないくらい毎回演奏が違いますよね」

松本「また変えるのかよってね（笑）」