安定感で終わらない作風
先述したように2曲の先行シングルは売れっ子のルイス・ベルとサーカットがジャスティンと共同で制作。この座組みではモダンなディスコの“My Favorite Drug”や“Imagination”など都合5曲を華やかに手掛けているが、蓋を開けてみればプロデュースの主軸として代替不能な才気を見せているのはやはり盟友ティンバランドであり、彼のチーム出身のデンジャだ。ティンバ × デンジャとの仕事では先述した2作目『FutureSex/LoveSounds』が最大の成果なのは言うまでもないが、今回のティンバは長尺の“Technicolor”や“Infinity Sex”など展開の変わる『FutureSex/LoveSounds』的な作法や、シグネチャーのビートをあしらった“What Lovers Do”に取り組み、デンジャは冒頭の“Memphis”やデヴィッド・ボウイ“Fame”を思わせるファンク“Play”(ライアン・テダーも共作)、ファイアボールDMLを招いてアマピアノを消化したような“Liar”、トビー・ノウィーグェとのどこかプリンス風味なトラップ・ゴスペル“Sanctified”などで振り幅の広さに寄与している。
また、ティンバ組との絡みも含めて7曲を手掛ける気鋭のエンジェル・ロペスとフェデリコ・ヴィンドヴァーは、アルバムの華やかな導入となるハウシーな“Fuckin’ Up The Disco”とカクテル・ディスコの“No Angels”といったダンサブルなポップ・チューンをキャッチーに制作。それら2曲を含む3曲にはカルヴィン・ハリスも関わり、他にもジャスティンと制作チームのY’sを組んでいたロブ・ノックスがいたり、注目のR&Bシンガーであるケニオン・ディクソン(先日のグラミー賞ノミネートも記憶に新しい)が美しいスロウ“Alone”の共同制作も含めて多くの曲を共作していたり、過去のジャスティン像の延長線上にある安定感のみならず、初顔合わせの面々も多く交えた新鮮な瞬間も数多く用意されている。なお、ラスト前に控えるのは改めてインシンクの仲間を招いた“Paradise”だ。映画の素材としてのパートタイムなリユニオンではなかったことに安心しつつ、ボーイズ・バンド然とした折目正しさが嬉しいナンバーのハマりっぷりにグループの今後を期待する人も多いだろう。
……と、恐らく昨今のアルバム観としてはいろいろ重厚すぎる全18曲のラストを飾るのは、ルイス・ベルとサーカットによる素朴なスロウ“Conditions”。これまでの過ちや弱さも踏まえたうえで〈スーパーマンというよりクラーク・ケント〉〈バットマンというよりブルース・ウェイン〉な自分自身をさらけ出しながら、冒頭曲にも繋がるような歌い口で身近な人に愛を捧げる一曲だ。年輪を重ねたアーティストとしての姿を率直に見せながら、彼はまた前へ進んでいく。
ジャスティン・ティンバーレイクの過去作品を紹介。
左から、2002年作『Justified』、2006年作『FutureSex/LoveSounds』(共にJive)、2013年作『The 20/20 Experience』『The 20/20 Experience(2 Of 2)』(共にRCA)
関連盤を紹介。
左から、ジャスティンの共作曲を含む2023年のサントラ『The Color Purple』(WaterTower/Gamma.)、『Everything I Thought It Was』に参加したファイアボーイDMLの2023年作『Playboy』(YBNL Nation/Empire)、ジャスティンが参加したDJキャレドの2021年作『Khaled Khaled』(We The Best/Epic)