出版業界を描いた作品は数多くあれども、著者の死後にしか発刊しないというユニークな出版社〈死後出版〉を舞台に繰り広げられるヒューマンドラマ。どうして〈遺作〉にしなくてはならないのか、自分の感情に責任を持ちながら執筆をし続ける著者各々の理由や葛藤が丁寧に描かれていく。著者の心情をくみ取りながらも、その本や著者自身にとって最善な方法は何かを追い求め、編集者としての才腕をふるう主人公。時に読み手の思い込みや先入観が覆されるそのストーリーは、まるでミステリーを読み進めていくかのような心地よさが。登場人物たちの伏線がどのように回収されていくのか気になるところ。