Photo by Musaccio & Ianniello
©Warner Classics

作曲家自身のオーケストレーション版と、オペラ作品に転用した歌唱付き版の珍しく貴重なヴァージョンの録音!

 イタリア随一のコンサート・オーケストラ、ローマ聖チェチーリア国立音楽院管。このオーケストラの音楽監督にパッパーノが就任して19年経つ。

 この蜜月のコンビがロシア音楽の名曲を録音した。1曲目はリムスキー=コルサコフの“シェエラザード”。じつに色っぽく、すこぶる細やかな演奏だ。持ち前の色彩美も冴え渡り、この作曲家のオーケストレーションの魅力を存分に引き出すのだ。

ANTONIO PAPPANO, ORCHESTA DELL’ACCADEMIA NAZIONALE DI SANTA CECILIA 『R=コルサコフ:シェヘラザード、ムソルグスキー:はげ山の一夜(1867年原典版&1880年版)』 Warner Classics(2024)

 第1楽章では、波を表す伴奏音形がさまざまな楽器に受け継がれる。音色を変え、出したり引っ込めたり。波の変化によって、時間の流れやそこで起こる出来事を鮮やかに印象づけてくれる。

 オペラ作品を思わせる能弁な表現にも注目。たとえば、第2楽章はヴァイオリン独奏のシェエラザードの主題に始まり、ファゴットのカランダール王子の主題に繋がるが、それらはまるでオペラの登場人物のようにくっきりとした表情を付けて描かれる。カランダール王子は、なぜかパパゲーノを思わせる3枚目のノリなのだが。

 第3楽章では、タメのあるリズムと蠱惑なポルタメントをさりげなく使った中間部の直後、最初の主題がしめやかに帰ってくるときに空気が一変する瞬間の尊さ。終楽章は、まさに色彩のリズムによるフェスティバル!

 ムソルグスキーの“はげ山の一夜”は、リムスキー=コルサコフの編曲版によって知られているが、原曲のほうを収録。その音詩「はげ山における聖ヨハネ祭前夜」は、まさに奇々怪々なる音楽。やたら饒舌で目まぐるしい変化、よく知られる編曲版がずいぶんシンプルで、大人しく思えてしまう。パッパーノは、鮮やかな色彩をちりばめながら、この曲のもつ異様なテンションを目いっぱいかき立てる。

 一方、この原曲をオペラのなかに転用したバージョン、歌劇「ソローチンツィの市」から“若者の夢”も収録。児童合唱も加わった合唱が怪しげな呪文を唱え、バス・バリトンのソロも入る。豊饒にして怪奇。オペラ指揮者としての面目も躍如だ。

 


LIVE INFORMATION
英国ロイヤル・オペラ 2024年日本公演 “リゴレット”

2024年6月22日(土)神奈川県民ホール
開演:15:00

2024年6月25日(火)神奈川県民ホール
開演:13:00

2024年6月28日(金)NHKホール
開演:18:30

2024年6月30日(日)NHKホール
開演:15:00

英国ロイヤル・オペラ 2024年日本公演 “トゥーランドット”
2024年6月23日(日)東京文化会館
開演:15:00

2024年6月26日(水)東京文化会館
開演:18:30

2024年6月29日(土)東京文化会館
開演:15:00

2024年7月2日(火)東京文化会館
開演:15:00