ブラジル・ポピュラー音楽(MPB)を半世紀余りにわたって牽引するジルベルト・ジル、16年ぶりの来日公演決定!
シコ・ブアルキ、同い年のカエターノ・ヴェローゾ、ミルトン・ナシメントと共に、ボサノヴァ以降のブラジル・ポピュラー音楽(MPB)を半世紀余りにわたって牽引しているジルベルト・ジル。6月26日に82歳を迎えたが、今も現役バリバリだ。そして2024年9月末、16年ぶりの来日公演を行なう。
バイーア州の古都サルヴァドールで生まれ、ドリヴァル・カイミ、ルイス・ゴンザーガ、ジョアン・ジルベルトといったバイーアや北東部出身の音楽家を聴いてきたジルは、20代でビートルズなどロックの影響も取り入れた、トロピカリズモと題するポップ・カルチャーのムーヴメントを展開。その先鋭性ゆえに当時の保守的な軍事政権に睨まれ逮捕され、盟友カエターノと共に約2年半のロンドン亡命を余儀なくされた。しかしジルは異国の地でロックやR&Bなどを、ブラジルに帰国後はファンク、レゲエ、アフリカの音楽などを貪欲に取り入れて、音楽の幅を広げてきた。アフロ・ブラジル文化の揺籃の地、バイーアで生まれた人間の本能に基づく行動だろう。
初来日した86年以降、何度かジルにインタビューしてきた。ステージではパワフルな陽のオーラが全開だが、オフ・ステージでは静かなる哲学者のたたずまい。発言はつねに前向きで、強固な信念に裏づけられていて、さまざまなことに強い興味を示す。88年、サルヴァドール市議会議員に当選したジルは環境問題に取り組み、2003年にはブラジル政府の文化大臣に就任。60歳を越えて音楽家と政治家の活動を両立させてきた。
2015年、リオでジルとカエターノ・ヴェローゾのアコースティック・デュオによるコンサートを聴いた。70歳を越えたジルの歌声には、さすがに以前と比べると衰えがうかがえたが、低域から高域まで出し惜しみせず歌い、怪鳥のような叫び声も交えて満場のオーディエンスとコール&レスポンスするパワフルなパフォーマンスは圧巻。そしてジルのギターワークはさらに深化し独創性を増し、彼の音楽の新たな武器となっていた。ぜひ、このコンサートのライヴ盤『Dois Amigos, Um Século De Música』(DVDもあり)と、2014年に発表したジョアン・ジルベルトへのトリビュート・アルバム『ジルベルトス・サンバ』を聴いて、ほとばしる創造力を体感してほしい。
歩みは止まらない。2018年に発表した新作『OK OK OK』は、曲も歌詞も味わい深く、ソングライティングは全く老いと無縁。いい具合に肩の力が抜けた歌声から、クリエイティヴな老境を迎えた充実感が伝わり、自作の新曲を録音したジルのオリジナル・アルバムの中で今世紀の最高傑作と断言できる。
2021年には、世界的に有名なブラジルの写真家、セバスチアン・サルガド夫妻が主宰する熱帯雨林再生団体の活動を支援する新曲“REFLORESTA(再び森林を)”を発表した。社会派としての活動も、衰えを知らない。
80歳を迎えた2022年、ジルと息子、娘、孫たちとのファミリー総出演による音楽とトークのホーム・パーティー「Em Casa Com Os Gil」が配信チャンネルで放送され、同名のサントラ・アルバムもデジタル・リリースされた。
ジルの子供と孫の大勢が音楽家として活躍しており、今回の来日公演に同行する4人編成のバンドのメンバーも、今あげた4枚のアルバムのプロデューサーでもある息子のベン・ジル(ギター)をはじめ、息子と孫たちだ。息子のジョゼ(ドラムス)と孫のジョアン(ベース)は、もう一人の孫と一緒にジルソンズ(Gilsons)という名のバンドを組んでいて、とても人気がある。孫娘のフローラ(キーボード)はミドルティーンだ。
今回の来日公演では、ジルの数々の名曲を本人と家族が歌うアットホームな雰囲気の、そしてブラジル人の特徴である家族の絆に貫かれたコンサートを楽しめるに違いない。
LIVE INFORMATION
ジルベルト・ジル “Aquele Abraço Japan Tour 2024”
ブラジル・ポップスの巨星、16年ぶりの来日。
出演:Gilberto Gil(ヴォーカル/ギター)/ Bem Gil(ヴォーカル/ギター/ベース)/ Jose Gil(ヴォーカル/ドラムス)/João Gil(ヴォーカル/ギター/ベース)/Flor Gil(ヴォーカル/キーボード)
KYOTOPHONIE2024 AUTUMN EDITION
2024年9月26日(木) 京都・ロームシアター京都 メインホール
https://kyotophonie.jp/
2024年9月27日(金)東京・めぐろパーシモンホール 大ホール
開場/開演:17:30/18:30
https://www.gilbertogil2024.jp/
第35回高崎音楽祭
2024年9月29日(日)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
http://www.takasakiongakusai.jp/
Aquele Abraço Japan Tour 2024 オフィシャルウェブサイト:https://www.gilbertogil2024.jp/