この文章がみなさんのもとへ届いている頃には茹だるように暑い毎日が続いているかもしれないが、これを書いているのは6月下旬、涼しく過ごしやすい日もあれば、陽の光が心地よく降り注ぐ日もある。たまの猛暑日も、夕方になれば気温はグッと下がり、自転車で風を切りながら当てもなくどこまでも行きたくなる。グラデーションカラーのちょうど何色とも呼べない部分のように曖昧で、予想のつかない天気が好きだったりする。

 少し前、友人から勧められて、韓国のロックバンド、シリカゲルのアルバムと出会った。強烈なギター・リフを聴いた時は、稲妻に打たれたかのような感覚になり、しばらくずっと耳に残ったままだった。

 2023年12月にリリースされた『POWER ANDRE 99』は、電子音楽やギター・ロック、クラシックなど多様なジャンルが取り入れられていて、低音ヴォーカルも相まった実験的なサウンドが特徴。それでもアルバムを通して聴いてみると、全18曲が実は1曲でした、と言われても納得できてしまうくらいの統一感があり、彼らのライブを実際に体感しているかのようだ。

 また、彼らのインタビューやSNSをチェックすると、別のバンドにも参加しているメンバーがいたり、ソロとしても活動の幅を広げていたりする様子が伺える。個々で自由に動きつつも、それぞれが影響を受けている要素を持ち寄って、さらに音楽を追求する場として、シリカゲルというバンドがあることに感じる尊さ。作り込まれたアートワークも魅力で、ミュージックビデオにはメンバー自身も積極的に出演し、CGやイラストなどのあらゆる手法を用いて可視化・拡張されたサイケデリックな世界観に惹き込まれる。

 季節が移り変わっていく時期に聴きたくなる、気まぐれで刺激的なサウンド。

 6月の来日公演はスケジュールと被っていたり、抽選に外れたりして観に行くことができず残念だったが、韓国に渡ってでも必ず彼らに会いに行ってみたい。

 


【写真と文】hana:8人組のHIP HOPユニット、lyrical schoolでMC/ヴォーカルを担当。lyrical schoolは現体制で初のアルバム『DAY 2』(ビクター)が好評リリース中。今夏も8月3~4日の〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉など各所のライヴに出演予定です。その他の最新情報は〈https://lyricalschool.com/〉にて。