

〈青春〉という言葉を聞いて、いちばんに頭の中に思い浮かべるのは、〈汗〉。今回は、真夏のステージに立つ者にとっては輝く勲章のような〈汗〉についての話をしたい。
中学生の時、バドミントン部に入っていた。筋トレとランニングから始まる放課後の週3日・数時間のハードな練習が、夏休みになるとほぼ毎日・半日間に拡大し、私は感情を押し殺しながらゾンビのように登校していた。シャトルが飛んでしまうため、クーラーも扇風機も使えない体育館は、蒸し風呂よりも酷い熱気で満たされていた。少しでも足を止めてしまうとその暑さに気を取られてしまうため、休憩もほどほどに身体を動かし続けた。滝のように汗を流しながら、1リットルの水筒を何度も空けては水を補充しに行き、練習を終える頃には、綺麗に整えていたぱっつんの前髪はびしょ濡れになって、片方にまとめるしかなくなった。今日も地獄を乗り越えた、と達成感を感じつつも、同級生にその額を見られるのが本当に嫌で、そそくさと早歩きで家に帰っていた。


大人になったいま。いつかの対バンライヴで、自分たちの出番の前にステージから降りてくるアイドルさんたちが水を被ったような姿になっているのを見て、〈そういえば、私っていつから汗をかかなくなったんだ?〉と、ふと思った。意識していないと水をそんなに飲まなくなり、代謝も悪くなったのか、真夏でも大抵のライヴでは、顔が汗で濡れることがほぼなかった。メンバーから汗をかかないことを羨ましがられる時もあれば、がむしゃらだったあの頃を思い出しては、少し寂しく感じる時もあった。
しかし、8月の頭に開催された〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉で、久々にあの感覚を味わうことができた。灼熱の野外ステージで気持ちよくパフォーマンスができた後、鏡に映る、汗で額に張り付いた前髪を見た。いまだけを生きることができたような気がして、何だか誇らしくなった。
〈青春〉をテーマにした、私たちlyrical schoolの『LIFE GOES ON e.p.』が、7月30日にリリースされた。私たちの曲を聴いている時や、ライヴに遊びに来てくれている時だけは、暑さや嫌なことなど何もかも忘れて、一瞬一瞬だけを楽しんでほしい。

【写真と文】hana:8人組のHIP HOPユニット、lyrical schoolでMC/ヴォーカルを担当。lyrical schoolでは新しいEP『LIFE GOES ON e.p.』(ビクター)をリリースし、8月のワンマン〈BEST PITCH〉も終了したばかり。イベントやフェス出演はまだまだ続いていますので、最新情報は〈https://lyricalschool.com/〉にて!