
続けさせてくれてありがとう
――キャリアがこれだけ長いと、ファンのかたが見に来る周期もさまざまになると言いますか。
「一度離れちゃったかたが戻ってくる可能性ってあるのかなと思っていて」
――それがなかなか難しいんですよね。
「はい。でも、長くやっているとまた戻ってきてくれるというのがわかって、自分たちでもびっくりしました。よっ、久しぶりー、みたいなことが起きるんです。サイン会もしたんですけど、県外のかたも新潟まで来てくださったりして。逆に3ヶ月前に知ったかたはどうして好きになったんだろうと思ったり(笑)」
――膨大な積み重ねがあるから、アクセスの経緯はさまざまですよね。
「いろんなきっかけになるような映像があったりするので。だから、新規です、というかたには、なにで好きになってくれたんですか、という興味が湧きます(笑)」
――それも続けているからこそですよね。人を惹きつける音楽のアーカイブが豊富にあったとしても、例えばですけど、今たまたまYouTubeでEspeciaと出会った人がいたとして、いいなと思っても、グループを見ることはできないわけで。Negiccoはいるじゃないですか。それは大変なことだと思います。
「います(笑)。でも、自分たちはそういう感覚になれなかったんですよ。結婚した時点で応援されなくなっても仕方がないと思っていたから。でも、みんなは応援してくれて。そしたら今度は〈出産するから待っててください〉になり(笑)。それでもみんなに言ってもらえるのが、続けてくれてありがとう、という言葉で。私たちからすると〈続けさせてくれてありがとう〉なんですよ。どれだけ感謝しても感謝しきれない、神様みたいなファンの人たちだと思います」
――続けさせてくれてありがとう、なんですね。
「子供が生まれて、お休みの期間があったりして思うことは、自分たちもNegiccoがなかったらどうなっちゃってたかわからないということなんですよ。育児は楽しいけど大変だったりするなかで、Negiccoがあるからリフレッシュできるんですよね。それなのに今日は寝坊しちゃって申し訳ないんですけど……(※インタビュー当日、開始時間が予定より少し遅れました)」
――それは問題ないです(笑)。切り替えのスイッチがあるのはいいことですよね。Negiccoがあるから大変な育児もやれるし、育児があるからNegiccoを頑張れるみたいな、どちらの拠り所にもなっているんですね。
「3人とも同じ歳の子供を生んだというのもあって、前よりも会話が増えて、もう毎日LINEしてる状態なんです(笑)。お互いの大変さを乗り越えるための出来事を子供がくれたというのも不思議な感じです。こんなふうになるとは想像してなかったし、3人で計画してもできることでもないし、奇跡的だなと思ってます」
今の自分たちが歌うからこそ意味のある歌詞
――アルバム収録曲の話もすると、3人の人生が反映された歌詞が多いと感じました。アルバム書き下ろしの曲についてうかがっていきたいと思います。ノンブラリの山本きゅーりさんが作詞・作曲、ノンブラリが編曲した1曲目の“まるばつさんかくしかくとわたし”からそれは顕著で。
「(手元のメモを読みながら)ゆっきー(Negiccoのディレクター・雪田容史氏)からすると、ザ・ネギな、ネギズシティポップみたいな感じで、でもそこまでネギネギはしてなくて……あれ? これは違うやつか?」
――どうしましたか(笑)。
「すみません! 私は初めて聴いた時、『まんが日本昔ばなし』のエンディングテーマみたいだなと思いました。ゆっきーからすると、『みんなのうた』に出てきそうな歌を、というオーダーをしていたみたいです。『What A Wonderful World』というアルバムを、代表する……曲で……」
――めちゃくちゃメモを読み上げてますね(笑)。
「線引いたところを見失っちゃって(笑)。ああ、ここだ! 最後にいただいた曲だったんですけど、曲をお願いする時にアルバムタイトルが『What A Wonderful World』だと唯一伝えたのがノンブラリさんなんです。要は『What A Wonderful World』を代表する、『みんなのうた』に出てくる歌という曲みたいです」
――と、雪田さんが言っていたと。
「はい。試聴会でゆっきーが言ってたことをメモしました(笑)」
――それを代読するだけだとこのインタビューもあんまり意味がなくなっちゃいますよ(笑)。
「一番記憶力のあるぽんちゃがいないので、今後のインタビューはNao☆とKaedeにかかってると言われていて。私はこのメモ頼りでいきます(笑)。
その裏話を聞いた時は、そうだったんだと思いました。Negiccoの3人に子供が生まれて、普段の生活があるなかで、このタイトルを知った上で作ったというのがしっくりきました」
――『What A Wonderful World』はいいタイトルですよね。たくさんの人が子育てを経験したりもしながら日々を暮らしているわけじゃないですか。それを考えると、世界ってなんてすごいんだと素朴に思うんです。
「思います! 私はひとりでもあわあわしてるのに、ふたり、3人と育てているかたもいるし、これから世に赤ちゃんを産むお腹の大きい女の子を見たりすると、このあとあの体験をするんだなと思ったりするんです。だから世界を見る目が変わったというか。
歌詞は相談とかも特にしなかったのに、まるで自分たちの心を代弁してくれているような感覚がものすごくあります。いろいろ考えたあとに〈そうだ 花を買いに行こう〉となったりするのは、女性ならではの共感できる視点だなと思ったりとか」
――そのくだりもハッとしました。
「歌詞にしてもらったことで、自分たちにはこういう気持ちがあったよなと改めて気づくこともできました。それは今までの経験を経てないとわからなかったかもしれない。
アイドルの女の子が大人っぽい歌詞の曲を歌うと、背伸びしている感じを出すというのはありだけど、大人ぶってもしょうがないよ、とかよく言われたりするじゃないですか。私ももちろん言われたことがあるんですけど。今の自分たちが歌うから納得してもらえる歌詞というのはすごくあると思います」