(左から)吉田豪、Kaede

2023年7月20日に結成20周年を迎え、『午前0時のシンパシー』(2020年)以来3年ぶりの新作であるミニアルバム『Perfect Sense』を配信リリースしたNegicco。8月13日(日)にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で記念公演の開催を控える3人に、プロインタビュアーの吉田豪が5年ぶりの個別ロングインタビューをおこなった。初回はKaede編をお届け。 *Mikiki編集部

Negicco 『Perfect Sense』 Fall Wait(2023)

 

ひとりで歌うことが楽しい

――本当にお久しぶりです!

「お久しぶりです。5年も空いてると思わなかったですね」

――そうなんですよ。このインタビュー企画自体が2012年に始まって、それから2014年、2016年ときて、2018年に『MY COLOR』が出るタイミングで取材したのが最後で。イベントもアイドル対バン的なものにそんなに出なくなって、コロナもあって、まったく会う機会がなくなったという。ソロのライブは1回行きましたけど挨拶もしないで帰ったりで、実は3人が結婚してから会うのは初めてなんですよね。

「そうだったんですか!」

――なので会わなかった期間を掘り下げていきたいんですが、ちょうど活動の方向が変わっていくタイミングだったと思うんですよ。オリコンのベスト10入りを狙うような世界からは脱却したというか。

「そうでしたね」

――ネギの活動が落ち着いてきて、それぞれがソロをやり、プライベートも変化があり。この期間、Kaedeさんは一番マイペースだった印象です。

「ホントですか? どうしてだろう?」

――ソロが一番順調だったからですかね。

「そうですね。2019年ぐらいからソロを始めますって形になったのかな? で、すぐコロナ禍に入って、おやおやっていう感じで。ソロのツアーを組んでいただいて、ちょっとやり始めたぐらいから状況が変わってきて、どうしましょうって事務所と話をしつつ」

――まずソロ活動に力を入れたのは何がきっかけだったんですか?

「〈今後、Negiccoの活動もそうだけど、個々でやりたいことある?〉って言われたときに、私はソロで生誕祭とかやらせてもらってて、ひとりで歌うことが楽しいっていう気持ちがあるので、そういうのもこれから積極的にやっていきたいですっていう話をして、〈じゃあ来年からソロやる?〉っていう話になったんですけど」

――そもそもネギの活動がいままでと流れが変わってきたわけですけど、そのことについての話し合いはあったんですか?

「毎年、秋ぐらいになんとなく来年の方向性を話すミーティングがあって。で、〈来年どうしたい?〉っていう感じがありました」

――5年前のインタビューで印象的だったのが、ずっと悩んでいたKaedeさんがちょうど突き抜けた時期だったんですよ。

「そうですね、覚えてます」

――〈いまは活動がすごい楽しい!〉ってモードになってて、逆にぽんちゃ(Megu)が闇に落ちていたという。

「あ、そうか。その印象はあります。〈ふたりの話、聞いてあげてください〉みたいな感じだった気がする(笑)」

――そうそう(笑)。そして、Nao☆ちゃんがリーダーらしく、ちゃんとしてきた時期でもあって。

「そうですよね」

――だから、なんとなくソロでやるようになっていく流れはわかるんですよ、かえぽ(Kaede)はいろいろ楽しくなってきて、やりたいことが見えてきて、Nao☆さんは結婚して、ぽんちゃは体調不良で、Negiccoの活動のモードを変えようみたいな話し合いがあったのかなって。

「5年前……そうですよね」

――そしてKaedeさんには過去のことを次々と忘れていくという欠点があって(笑)。

「どんどん忘れますね(笑)。5年前か……Nao☆ちゃんの(突発性)難聴の話と(子宮)内膜症の話もその時期ぐらいにしてて。なのでそれぞれやれることをやっていく、みたいなことになったのがそのときなのかな?」

――頑張って思い出してください!

「フフフフ」

――やっぱり2年ごとにやらないと忘れますね。

「ですね(笑)。いままでと同じことを続けててもダメだから個々でやろうっていう話だったんじゃないかなと思います」

 

私と結婚したいと思ってくれる人がいるわけない

――その時期、Negiccoを辞めようと何度も思った人が、なんで変わってきてたんですかね。

「たぶん自信がついてきた。ライブやったあとに、〈どうしよう、辞めなきゃいけない。こんなパフォーマンスじゃダメだ〉ってヘコむことがほぼなくなってきた時期で」

――歌の不安定さがなくなって。

「そうですね、歌にばっかり〈どうしようどうしよう〉ってなるんじゃなくて、周りを見たり、ダンスもうちょっとこうしたらよくなるかなっていうのも意識しながらやれるようになってきたのがそのくらいの時期だったのかな。とにかく、うまくいって楽しいっていうことが繰り返しできるようになってきた時期だったのかな、たぶん。

それもあって、もっとスキルアップしたいっていうのがあって、じゃあ来年からソロを、みたいな感じだったと思います」

――ホントに好きな人たちと好きな音楽を作る活動をマイペースでやれていた感じがするんですよ。

「そうですね」

――ただ、このインタビュー企画ではずっと金銭的な不安や年齢的な不安について毎回言い続けてきたわけじゃないですか。2012年の時点で言ってたわけですけど、あれから10年以上経って、だいぶそのへんはクリアされたんですか?

「うーん……そうですね、とりあえず明日の食べものがないみたいなことはないので」

――その頃はあったんですか(笑)。

「実家で暮らしてたからなかったんですけど(笑)。すごく余裕があるかと言われると余裕はないですし、ホントに最低限のものしか買わないような生活で。子供が生まれたこともあるんですけど。自分のために何か買ったりっていうことは少なくなったかもしれない」

――とはいえ、Negiccoがすごいと思うのは、さっきも3人で並んでると、主婦が3人いるようにはまったく見えなかったんですよ。

「ハハハハハハ! ホントですか?」

――これはなんなんだろうっていう。

「でも、よく言われますね。〈変わらないね〉って」

――相変わらずの呑気な空気感で。

「なんでだろう(笑)」

――もうちょっと所帯じみた感じとか出るものかと思ったら、撮影のとき強風をバリアするために他のメンバーが身体を張ってピョンピョンしてたりで、相変わらずのNegiccoだなと思いました。

「ハハハハハハ! ただ、こないだサイン会でファンの方に〈マダム感が出たね〉って言われて、マダム感ってなんだろうと思いましたけど」

――その辺りの流れもじっくり聞いてみたいんですけど、アイドルグループがオリジナルメンバーで20年続いて、しかも全員が結婚&出産して復帰するという、かなり画期的なことをやってるのは間違いないじゃないですか。ただ、この道を進むまでに迷いは相当あったと思うんですよ。どういう流れで進んでいったんですか?

「Negiccoを続けたいという気持ちはずっとあったので。そのうえで、でもどうする? みたいな。Nao☆ちゃんが最初にパーンと行ってくれたのは大きかった気がします。2018年のインタビューのときは結婚願望なんてぜんぜんなくて、みたいな話をしてたと思うんですけど」

――とりあえず2016年のときは〈いま結婚とかはまったく見えてないし、現実的じゃないから、そこで悩むことはない〉って感じで。

「ホントにそのときはなんにもないというか」

――2018年では「宮城のほうのおばあちゃんには〈いつ就職していつ結婚するんだ〉って言われます」「〈彼氏いないなら紹介するよ〉みたいなことまで親戚に言われて(笑)」「ぜんぜん結婚願望もないんですけど」って言ってました。

「そうそう、そんな感じだったんです。何もない状態だし、結婚って自分とは縁の遠いものだとその時点では思ってたので。そこから急に……結婚したくないわけじゃなかったけど、私としたいと思ってくれる人がいるわけない、みたいな」

――そこにもネガティブさがあった(笑)。

「いまも結婚はしてるんですけど、いまだに結婚してくれたんだなって思うときがあるんですよ、あまりにもいろんなことができなさすぎて大丈夫かなって」

――ホントに感慨深いのが、2011年のT-Palette Recordsの設立会見に出た5人が全員結婚したんだなっていうことで。

「そうですよね、バニラビーンズのリサさんもお子さん生まれたりで」

――独身はボクだけですよ(笑)。

「ハハハハハハ! ……あれ?」

――この置いていかれた感。

「先に先に行きました(笑)」

 

みんなで子供を連れてきて仕事を

――最初にNao☆さんの話を聞いたときはどう思ったんですか?

「Nao☆ちゃんはずっと結婚も考えてる感じというか、結婚したいみたいな話は昔からしてたので、いつかは結婚するだろうなと思ってたし、すると決めたら貫き通す芯のある子なので、よかったねっていう気持ちでいました」

――周りが過剰に心配してた気がするんですよね、タワレコの嶺脇育夫社長から何から。この業界で最初のケースに近いようなものだったから、これを発表して大丈夫なのかっていう。

「みなさんそうですよね、そういうことは辞めるタイミングとか辞めたあとっていうことが多いなかで」

――いまでこそでんぱ組(.inc)なりももクロ(ももいろクローバーZ)なり、いろんな人たちが結婚した後もアイドルを続けているけど、かなりチャレンジングな第一歩だったわけで。だから〈ももクロが切り開いた「既婚アイドル」〉という記事に、〈切り開いたのはももクロじゃなくて、でんぱ組やNegiccoだと思います!〉ってボクもツイートしてたんですけど。

「そうですよね、だから豪さんと嶺脇さんにNao☆ちゃんのイベントに出てもらって(2019年4月13日に新潟・ジョイアミーア、14日に東京・代官山LOOPでNao☆生誕&結婚報告イベントを開催)」

――それも炎上対策で場を和ませるためだとか聞いてましたからね。

「そう、どういう反応が返ってくるかまったく読めなかったので」

――あれが思ったより平和にやれたから、これは大丈夫なのかなってことになったんでしょうけど。

「そのときに、たぶんTwitterだったと思うんですけど、〈かえぽだったら……〉みたいなことを書いてる人がいて、この人いつか大丈夫かなと思ったり(笑)」

――ダハハハハ! まあ、いろいろありますよね。あの時点で「全員祝福してる空気にはなってるけど全員ではないはずだ」みたいなことを嶺脇社長が言ってたりして。祝福したあとに、風呂でファンの気持ちになって泣いたという嶺脇社長らしいエピソードもありますから。

「フフフフ、優しい。そうですよね、嶺脇さんはそっちの人というか、ファンの人の気持ちをわかるから」

――頑張って「おめでとう」と言ってるファンの気持ちにシンクロしちゃったという。でも、Negiccoがこの道を切り開いてくれたのがよかったことだけは間違いないと思ってます。

「3人結婚したときに、たぶん豪さんがツイートしてくれてた気がするんですけど、〈そういう演出〉みたいな、なんだっけな? 忘れちゃった。そういう見せ方をしたいためにみんなが結婚したみたいなよくわかんないニュースがあって、それ相手に失礼だろ、と」

――ああ、ありましたね(「現代ビジネス」の記事で〈アイドル飽和状態での競争激化から、より個性を強める多様化の現象があり、Negiccoはメンバー全員が結婚という大胆路線をとった〉〈Kaedeさんも、他のアイドルをプロデュースしたり〉という不可解なことが書かれていたのが引っ掛かってツイート)。

「Negiccoが結婚してるイメージをつけるためにとか、よくわからないことを」

――1年ずつ結婚をずらしつつ、子供は同じタイミングで作り、みたいなことが戦略でできるかよっていう。

「そうなんですよ! 〈私もアイドルをプロデュースしてる〉みたいなこと書いてましたけど、なんだっけ、忘れちゃいました」

――ただ、前から言ってたことがちゃんと現実になってるなと思ったんですよ。2018年のインタビューで、ボクが「みんな三十路になったらいついつまでにアルバムリリースしなきゃ、みたいなことに縛られず、たまーにシングル出して、たまーになんかやるとかでもぜんぜんいいと思うんですよ」と言って、かえぽが「楽屋に子連れで来て」って返してたんですけど、ほぼ現実になってるわけじゃないですか。

「すごいですよね。いまも見る人がいないときはみんな子供を連れてきたりするので。現実ですね(笑)」

――ボクと10年以上仕事しているアイドルが増えてくると、いろんなところで感慨深さを感じるわけですよ。でんぱ組のインタビューで古川未鈴ちゃんが初めて子連れで現場に来て、取材しながら子供が泣くとそっち行って、メンバーがあやしたりしてるのを見たり。子供を交えた3ショットとか撮ってると、人生いろいろだなと思って。ましてや、こんなにいつ辞めるかわからない空気を出し続けてた人が。

「ハハハハハハ!」

――毎回インタビューするたびに、〈実はあのとき辞めようと思って〉みたいな話が出てきて、〈また!?〉みたいな。

「ハハハハハハ! でも、この5年はなかったです」

――わからないもんですよね。

「ただ、20周年は迎えられましたけど、この先のことはホントにまだ何もわからないので。未知です。やりたいと思ってもやれなくなる環境もあるかもしれないっていうのは覚悟しつつ、でもやり続けられるならやれたらいいなと思ってます」

 

そのまんまの3人がステージの上で出てる

――コロナもあって、結婚によってどれくらいの影響が出るかが、そんなにリアルには感じづらい状況ではあったと思うんですよね。

「ああ、そうかもしれない」

――それ次第で末永く活動していけるかどうかも見えてくる。

「そうですね。たしかにNegiccoがあのペースでやってたら目に見えてたかもしれない」

――わかりやすくモードチェンジして、よかったんだと思いますよ。あそこで武道館やってたら、おそらく燃えつきてた気がして。

「ですよね、そう思います」

――たとえば、アップアップガールズ(仮)が無理して武道館をやったのは、あの時期しか出来なかっただろうし良かったとは思うんですけど、その結果ほとんどのメンバーがいなくなったのは、どこかでやり尽くした感が出ちゃったと思うんですよね。

「たしかに。ここまでやってまだやれるっていうのは……でもここ最近、よりそのまんまの自分が3人ともステージの上で出てる感じがして。よく見せようっていう感じじゃなくて、素の自分、剥き出しの自分みたいな。うまくいかないところも込みで、笑いながら楽しくやってる感じがすごくいいなと思ってて」

――それまでは肩に力が入っていた?

「その感じからは抜け出したのかな。もちろん緊張することはするんですけど、ゆったりやれてるというか」

――ソロの経験がプラスになったんですかね?

「歌に関してはそうかもしれない。ソロでやったことでかなり歌いやすくなったところはあります。ただMCはぜんぜん伸びてないですね(笑)。しゃべりはまだまだダメだな」

――3人で支え合わないと難しい。

「ホントにふたりが支えてくれてるっていう感じ。ひとりだと淡々と言わなきゃいけないことを言う、みたいな感じになっちゃうんで」

――インタビューのたびに肉体的な限界みたいな話もさんざんしてたじゃないですか。そこも多少は変わってきたんですかね。そんなにライブが激しいモードでもなくなってきてるだろうし。

「そうですね、そこは自分たちの頑張りはもちろんあると思うんですけど、この前の新潟県民会館も、ちゃんとここで休めるよっていうエリア、曲間のインタールードみたいな感じでやってくださったりして、曲順でうまくやれてるので。そこも無理をしない、みたいな。3時間のライブだったんですけど、そういう配慮があってやれた感じです」

――メンタルも体力もあまり強くはない人たちが、ちゃんとマイペースでやれる状況が作られてきたっていうことなんですかね。

「そうですね」

――前ほどメンバーと密に会わない時期が続きましたけど、淋しかったりはしました?

「けっこう連絡は取り合ってたから。あんまり会わなかったけど、でもたまに3人で集まったときは〈お、Negiccoだ!〉みたいな感じはあったかもしれない。ソロが多かったので、久しぶりに会うと、〈あ、この感じだよね、雰囲気いいよね〉みたいなのはありました。

Nao☆ちゃんの活動は緩やかにっていう感じだったし、ぽんちゃはソロで自分の歌い方を確立したなっていう感じがして。一時すごい悩んでた時期があったので大丈夫かなと思ってたけど、ぽんちゃの新しい歌い方、新しい魅力が出てきてすごくいいなと思ってました」

――それぞれよかった気がします。あと、これも感慨深かったのが、RYUTistとの交流が始まったことでもあるんですよ。

「そうですね。正直どんな感じで関わればいいのかわからなかったんですけど(笑)。どう思われてるのかもわからないし。事務所から合同でオーディションしますって聞いたときはけっこうビックリしました、おぉっと思って」

――妹分グループを作ります、みたいな。

「RYUTistは(横山)実郁ちゃんの存在も大きいのかなって。社交性があるというか」

――彼女が加入してあきらかにグループが変わりました。

「グイグイ来る感じで(笑)」

――RYUTistとの関係については触れていいのかわからないぐらいの感じがありましたから。最初の頃はイベントでも共演してたけど。非常に書きづらいですけど、新潟の「Jさん豪さん」に2組が出たとき忘れられない光景があって。いつも現場にいるような人たちは新しいグループが好きだから、デビューしたばかりのRYUTistの物販に並んで、ネギが暇そうにしてたのを間近で見ちゃって。

「あぁ……ぜんぜん覚えてないです(笑)」

――すごい気まずくなったんですよ。で、その後ぐらいからRYUTistとの共演もなくなっちゃったという。

「Negiccoとしても新潟拠点でやってきてて、同じ新潟に新しいグループができて、Negiccoがまだぜんぜん成功してないから、関わり方が難しかったというか。新しいグループが出てきても積極的に関わって、それこそNegiccoのファンがいなくなったらどうしよう、みたいな気持ちもたぶんあったと思うし。

そこはNegiccoはNegiccoだっていう自信を3人とも持ったからちゃんと関われるようになったのかなっていう気もします」

 

辞めないでいてくれてありがとう

――Tパレ感謝祭がまだ続いてたら(2017年1月に終了。2017年8月に系列のPENGUIN DISCにRYUTistが所属)、なんらかの交流が始まっていたはずだったんですけどね。そのことからもわかるように、この5年間はアイドルシーンが勢いをなくしていった時期でもあり、そういうフェスをやりにくくなった時期でもあって。そう思うと、ちゃんと生き抜いてこうやって新作を出せてるだけでもすごいんですよ。

「そうですよね。だから、東京拠点にしてライブがメインとなってたらたいへんだったのかなって思います。新潟で暮らして新潟でマイペースにやれてたのは大きいと思うし、私はソロでも3ヶ月置きとかでバンバン音源を出したりしてたので、ライブは積極的にできなくても新しい話題があるのはありがたいと思ってもらえて」

――もともとコロナ禍に向いてる感じのライフスタイルだし。

「はい、みんな騒ぐタイプのライブじゃないので(笑)」

――いまアイドルの世界は若くてキラキラした人たちが中心になってきてるから、こういう人たちに頑張ってほしいんですよ。

「そういう意味では、〈まだやってるんだ〉っていう声があんまり聞こえなくなってきたのがよかったなと思って。ちょっと前だとわりと〈Negiccoまだいたんだ〉みたいに言われちゃって。アイドルってわりと短く儚くっていうのが多いのかなと思った時期もあったけど」

――そうじゃない道を活動で示しつつ、小西康陽さんが“お久しぶりです・お元気ですか”という、またエグい歌詞の曲を書いて(笑)。

「ハハハハハハ! すごいですよね、あの歌。最初に聴いたときは尖ってるなーと思って。自己紹介ソングが20周年でまた出来上がるという」

『Perfect Sense』収録曲“お久しぶりです・お元気ですか”

――〈だけど私たち、/将来、どうなるかな/10年後も私たちって/アイドルなのかな〉って状態から、〈いつの間にか/私たちも/子供が生まれたのです〉〈私たち ここからどこまで/行けるのか〉になるまでを曲として発表するスタイル(笑)。ちなみに、かえぽも結婚とか出産に不安はあったんですか?

「もちろんありました。ホントにファンの人ぜんぜんいなくなっちゃうんじゃないかと思って。誰も応援してくれなくなったらどうしようっていう不安はありましたけど、そうなったらそうなったで辞めるきっかけになるかもしれないと思ってたし、実際に離れた方も少なくはないので、どうなっちゃうのかなとは思いました」

――少なくはなかったんですね。

「それでも応援してくれてるのを実感して活動を続けることにしたんですけど。〈続けてくれてありがとう〉っていう声がいっぱい聞こえてきたときに、そんなふうに言ってもらえるんだと思ったし、すごいことになってるなって自分で思いました(笑)。なんだか不思議な気持ちになって」

――昔ほど頻繁にライブに行くのは難しくても、たまにやるぶんにはつき合います、みたいなモードの人は意外と多いはずなんですよね。

「そうですね、新潟県民会館もすごくたくさんの人がいらっしゃって。記念だから行っとこ、みたいな人ももちろんいると思うので、そのあとのことはわからないけど、とりあえず新潟県民会館は観に行こうかなって人が。

〈辞めないでいてくれてありがとう〉はホントにすごく刺さったというか。そんなふうに言ってくれるんだなって。自分たちの環境の変化も全部理解したうえでそうやって言ってくれて、ホントにありがたいことだなと思います」

――3人が相変わらずの空気感で相変わらずのいい曲を歌ってくれたら、それだけでいいんですよ。

「フフフフ、そうですね」

――あまりにも主婦感が出すぎると独身のファンがちょっと気まずくはなるだろうけど、そのバランスがあればいいだけだと思います。

「それも前例がないから」

――誰もがどのバランスでやっていいかわからずにいる。でも、他にも結婚する人たちが出てきて勇気づけられたんじゃないですか?

「結婚とかですか? そうですね、(高城)れにちゃんはホントよかったなと思いました」

――画期的ですよね、結婚してから水着写真集とか。

「え、そうなんですか!? すごい!!」

――スタダ(スターダストプロモーション)は基本的に水着やらないはずなのに、〈いまそういう方向の攻め方!?〉っていう。

「スポーツ新聞社に挨拶回りとかしてたって聞いて、おもしろいなーと思って」

――前例がないことをいろんな人たちが手探りでやってる状態で。

「アイドルさんってだんだん長く続ける人が増えてる感じなんですかね」

――増えてますね、30歳を過ぎてもふつうにやれる時代になったというか。それを思うと、2012年のインタビューのときまだ結成9年で「年齢が……」「若さで比べたら絶対に勝てないですし……」とか言ってたのはなんだったのかっていう。

「そうか、そこから11年経ってる(笑)」

――それが結成20年って!

「Negiccoという名前を改名するかみたいな話になったときに、〈でもNegiccoっていう名前で20年30年やるわけじゃないしね〉って話した覚えもあるので。ずっといるじゃん(笑)」

――どこかでカッコいい名前に変えるつもりだった?

「それか解散するかっていうつもりでみんな話してたと思うんですけど、やってますね(笑)」

――やってますよ。

「(坂本)真綾さんとのイベントのときも、〈15周年目指せたらいいよね〉みたいな話をしてた気がするけど、もう通り越して」

 

子供を犠牲にして仕事はできないけど、依存しすぎてもよくない

――これまでのインタビューを読み返してて、あの話には触れてなかったんだっていうことがあったので、あえて踏み込んでみます。あまり知られていないけど、Negiccoに大きな危機があったっていう。

「……ありましたっけ?」

――ありましたよ! あまり大きな声では言えないヤツ。2011年に〈もう熊さん(熊倉維仁)と一緒にやるのは限界です〉みたいな連絡がNao☆ちゃんからボクのところに来たことがあったんですけど……。

「あ、それで個人的に嶺脇さんと会ったんでしたっけ?」

――そうです。とりあえずボクが説得しつつ、嶺脇社長に〈ネギの相談に乗ってあげて下さい〉って連絡して。

「たしかにあったかも、〈もう無理!〉みたいになって。その記憶はあります、Nao☆ちゃんが嶺脇さんと個人的に会ってご飯を食べながら話す、みたいな。〈この事務所じゃダメだからどっか行く!〉みたいな。どこに行くんだろうって(笑)。ありましたね」

――実は2回ぐらいそういうトラブルでボクが間に入って動いたことがあって、ちゃんと大人の話ができるのはぽんちゃ、かえぽどっちだろうと思ったりして。それが、いまこうやって平和にやってるのを見るとしみじみしますよ。雪田(容史)さんもタワレコを辞めて新潟に行き、マイペースな活動ができる状況がどんどん作られていって。

「そうですね、ホント熊さんだけだったらけっこうヤバかった(笑)」

――ダハハハハ! そうだったんですね(笑)。

「ヤバかったんじゃないかな。でも、熊さんがいたからこそマイペースの軸があるんですけどね」

――もちろん。いまとなっては何がそんなに大きな引き金だったのか思い出せないんですけど。

「思い出せない。Nao☆ちゃんに聞けば覚えてるかもしれない」

――あとで聞きます。そして、いまやNegiccoはそうやってボクが介入する必要もないぐらいちゃんとした状態になって。かえぽにとってのこの5年間は安定、順調、平和って感じだったわけですよね。

「そうですね、穏やかに暮らせるようになりました、波というかハラハラすることがなくなって」

――お子さんが生まれるとどうしてもそれが人生の中心になって、睡眠時間も削られてメンタルやられたりもするみたいですけど、そこは大丈夫ですか?

「どうしても身支度をしなきゃいけなくて子供に〈ちょっと待っててね〉って言っても泣いてたりするとき、私はこの仕事をやってていいのかなって思っちゃうときはあります。

子供のその状態を犠牲にしてまで仕事の準備してるときにどうしようってなったことはありますけど、あんまり依存しすぎてもよくないなと思って。ホントかわいくて、かわいいかわいいってなってるんですけど、いつかは巣立つんだよなと思うと、いまはちっちゃいからなるべく欲求を満たしてあげたい気持ちはあるけど、あんまり介入しすぎないように心がけなきゃなと思ってて」

――……まさか、かえぽとこういう話をするようになるとは。

「ハハハハハハ!」

――人は親になってもそうは変わらないって感じですかね。

「ホントそうです、ダメさがまた際立つというか(笑)」

――そんなにダメなんですか?

「ダメだと思いますね。ホントに助け合ってやってる感じ。何もかも得意じゃないので。

ただ人を頼れるようになったというか。前は周りには絶対迷惑かけないようにって感じがあったんですけど」

――ひとりで何でも処理できるわけないですからね。

「そうですそうです。それができるようになって。親戚だったりとか、〈ご飯も作れないときは食べにおいで〉って言ってくれたりもするので。向こうの両親やおばあちゃん、おじいちゃんにすごい支えられてて」

――まだNegiccoの現場に子供が、みたいな状態はないんですか?

「ラジオは何回かそれぞれ連れてきたりしてます」

――奇跡ですからね、3人の子供がみんな同い年って。

「ホントそうですね。欲しいなと思ったタイミングでみんなちゃんと来てくれたのがよかったなって思います」

 

(左から)Kaede、Nao☆、Megu

子供が客席で観てる光景を見れたらいいな

――そして今回の新譜で本格的に活動再開するわけですけど。

「3人のレコーディングも久しぶりで。新譜どうでした?」

――めちゃくちゃいいですよ!

「ホントですか? ……よかった。

私は“サークルゲームのなかで”が心配だったんですよ、あの曲調をどうやって歌うんだって自信がなくて。ミトさんが来てくださって〈こういうふうに試してみたらどう?〉とか、いろいろ話をしていくなかで、こうやればいいのかなってだんだんつかめて。

『Perfect Sense』収録曲“サークルゲームのなかで”

ソロではラップみたいなことはやってないので、ホントどうやっていいかわからなかったし、前に“ナターシア”っていう曲(サイプレス上野とロベルト吉野によるラップ曲。『Melody Palette』収録)を出していて、あれは曲だけいただいてconnieさんにレコーディングをやってもらったんですけど、ひどくて(笑)」

2015年作『Melody Palette』収録曲“ナターシア”

――ひどくて(笑)。

「これどうしよう、みたいな。あれが作品になってるのはいまだに恥ずかしくて。

だから、どうしようと思ったんですけど、“サークルゲームのなかで”が来た時点で〈この曲はたぶんMeguメインで歌う感じになると思います〉って言われて、あーよかったと思って。そしたら歌割りを見たらみんなそんなに変わらなくて、どうしようと思ったんですけど。

でも、また新しい歌い方ができるようになってよかったなと思いましたし、ミトさんの提案で3人の子供の声も曲のなかに入ってて。私は子供が初めて笑ってくれたときの音をお送りしたんですけど、そういうのが形になったのがすごくよかったです」

――クラムボンといえば最近、原田郁子さんのインタビューをしたんですけど、あの人もかなりのネガティブガールでしたね。

「え、ホントですか!? そんな感じしなかったけどな」

――ひたすらそこを掘り続けるインタビューをしてめちゃくちゃおもしろかったですよ、ずっと〈私は人前に立つべき人間じゃない〉って話しかしてなくて。

「原田さんがそんなふうに思ってるんだ!」

――程よい位置でマイペースにやってる人に見えるんですけど、みなさんいろいろあるんだなっていう。

「うん」

――この5年間のあまり知られていない活動だと、SOLEILのカバー(V.A.『MAGICAL CONNECTION 2020』収録)も好きでしたよ。

「ああ! ありがとうございます! “Pinky Fluffy”。なんで私なんだろうと思いながら、ありがたいお話で」

――もともとNegiccoは3人とも声質がいいとは思ってましたけど、だからこそそれぞれのソロがちゃんといいんですよね……と、かえぽソロを聴いていると本当に思います。

「ありがたい! ファンの人が〈いやソロじゃなくて3人が観たいんだよ〉ってつぶやいてるのを見ちゃうと、〈だよね、わかるわかる〉って思うんですよ、私も3人は好きだから」

――もちろんネギはいいんですけど、また別のよさですからね。

「逆にサイン会とかで〈ソロまだなの?〉って言ってくれる人もいるので、それもありがたいんですけど」

――最近、新たな目標は見えてきたりしました?

「最近ときどき言ってるのは、自分の子供が母がNegiccoだっていうことを絶対いまはわかってないと思うんですよ。なので子供が、お母さんはそういうことをやってるんだっていうのをわかるくらいまでは現役でいられたらいいなって」

――そんなの、あと数年の話じゃないですか。

「いや、わかんないですよ。急に腰を痛めてとか、喉がとかもあるかもしれないし。子供が客席で観てる光景を見られたらいいなって思ってます」

――それは確実に叶うと思いますけどね。

「いや、できますかね?」

――この感じの活動であれば。無理せず、ちょっと身体がおかしくなったとしても、〈それなら待とう〉ってなる体制じゃないですか。

「……イケますかね」

――ぜんぜん余裕ですよ!

「頑張ります」

――サトウ食品のCMを観て「ママ!」とか言うぐらいになるのも、まだ先ですか?

「ぜんぜんです。まだ9ヶ月なので。テレビを見せたりはするけど、あれが母だっていうのはわかってないです。お正月ぐらいにはわかるようになってるかもしれない」

――何年できるかわからない感がまだ出てきてますけど、無理せず続けていける道しかないと思ってますよ。

「工夫はしないといけないですけどね。10年前のようにバリバリやることは難しいと思うし、自分たちもそうだしファンの人たちもそのペースを望んでないと思うので(笑)」

――もちろんそうです。なので、のんびりいきましょう!

「のんびりと。ときどきライブやってリリースがあって」

――ライブも座れたほうがいい、みたいになっていくわけで。

「ホントに。新潟県民会館もみんな自然に座ろうとしてて、〈あ、座っていいよ座っていいよ〉って感じになって(笑)。そんな感じでいいなと思いました」

 

アイドルの解釈をNegiccoが少しずつ拡大してるのかな

――そういうことです。ちなみに、いまのアイドルの世界ってどう見えてます? 自分たちとはだいぶ遠くなっちゃった感覚ですか?

「そういう話は最近けっこうされますね、〈アイドルってなんだと思います?〉みたいなのは」

――lyrical schoolも男女混合グループになったりとか、同時期に切磋琢磨してたような人たちが変わっていったり、そもそもいなくなっちゃったりとかで、そのままなのはhy4_4yhぐらいですからね。

「そっか! そうですね。〈結婚してたらアイドルじゃない〉みたいなことを思ってる人もいると思うんですけど、アイドルの解釈をNegiccoが少しずつ拡大してるのかなとは思ってて。〈違う!〉って言う人もいると思うけど、ファンの人はそれもいいじゃないかって思ってくれるので」

――いろんなアイドルが存在していいわけで、既婚者アイドルは違うと思うあなたは独身のアイドルを推せばいいですよって話です。

「フフフフ、そう。だからアイドルを飛び抜けたとは思ってないというか、そういうアイドルもいるよね、みたいな感じでいいのかなと思ってます」

――いろんな人たちがいて、徐々に幅が広がっていくのはいいことのはずなんですよ。男女混合も既婚者もありだし、恋愛とは無縁のアイドルもいていいし、あなたはあなたの好きなアイドルを推せばいいだけで、〈これはアイドルではない〉という制限はないってことだと思ってます。

「パフォーマンスがすごく落ちたりするとまたちょっと違うとは思うんですけど。いままでのように自分たちの好きな音楽を、好きでいてくれる人たちのために歌ったり踊ったりし続けてたら、それはアイドルでいいんじゃないかなと思うので」

――むしろ〈前よりちゃんと歌えてるはずですよ〉ぐらいの。

「フフフフ、歌いやすくなってますよって。ホント不安でした、出産してから声が変わるって話はよく聞いてたから大丈夫かなと思ってたけど、練習を始めたら意外と保ってて」

――この感じがどこまで保てるかの戦いをしてほしいだけですよ。

「衰えたら衰えたでそこも楽しんでいただいて」

――老けた老けないとかの話じゃなくて、この雰囲気が重要ですから。〈ああNegiccoだな〉っていう、この平和な感じが保てれば。

「ああ、この空気感を守り続けられればいいかな」

――それができれば成立すると思ってます。前に「ネギは看板を下ろさなくてもイケるのかなっていう気はしてるんですよ。解散しますみたいなことじゃなくて、個々でいろいろやりたいことが出てきても」ってボクが言ってたんですけど、有言実行できてるんですよ。

「フフフフ。どこまでやれるか楽しみです」

 


RELEASE INFORMATION

Negicco 『Perfect Sense』 Fall Wait(2023)

リリース日:2023年7月20日
フォーマット:デジタル(サブスク、DL)先行リリース
品番:FAWA-0020

TRACKLIST
1. Make Up Promenade 作曲・編曲 長谷泰宏(ユメトコスメ)
2. お久しぶりです・お元気ですか 作詞・作曲・編曲 小西康陽
3. Neggy‘s House 作曲・編曲 南葉洋平(The Recreations)
4. それって魔法かも? 作詞・作曲・編曲 オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
5.ル・ルーラは愛の言葉 作詞・作曲・編曲 connie
6. サークルゲームのなかで 作詞・作曲・編曲 ミト(クラムボン)

 

LIVE INFORMATION
Negicco 20th Anniversary Live

~MY LIFE is Negicco~ supported by サトウ食品
at LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

2023年8月13日(日)東京・渋谷 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
開場/開演:17:00/18:00
出演:Negicco

 


PROFILE: Negicco
2003年に結成された新潟発アイドルユニット。メンバーはNao☆、Megu、Kaede。〈にいがた観光特使〉を務める。今年2023年7月20日で結成20周年を迎えた。