春の訪れを告げるように咲いた優しくて新しい歌。グソクムズとThe Recreationsを迎えたニュー・シングルには、いつもとはちょっと違う表情の彼女が微笑んでいて……

 Negiccoの3人が各々ソロ活動を展開するなか(そのなかにはプライヴェートでのおめでたいニュースもあり)、シンガーとしてコンスタントにリリースを重ねてきたKaede。2年以上に及ぶコロナ禍での不安は当然ながらあるはずだが、それでも着実に足跡を残せているのは、歌に対する情熱はもちろんのこと、Negiccoとしてのキャリアを含むこれまでの活動で得てきた信頼があって歓迎されているもの。曲を届けるたびに新しいときめきを運んでくれる彼女だが、4か月ぶりとなるニュー・シングル“光の射すままに”では、うららかなメロディーに乗せて春の匂いを運んでくれた。

Kaede 『光の射すままに』 T-Palette(2022)

 「いままで春っぽい曲があまりなかったので、こういうぽっかぽかな感じイイなあって思いました。ただ、最初は表現するのが難しいなあと。声質的に秋とか冬向けっていうか、明るめの曲が歌えるかなってあまり自信がなかったんですけど、そこは曲を作ってくださったグソクムズさんが〈笑った感じで歌ってみようか〉とかわかりすやく教えてくださったので、出来上がりを聴いてみてもいままでとはちょっと違うイイ感じで歌えたなって思いました」。

 その音楽性を〈シティフォーク〉と謳い、最近注目度を増している4人組バンド、グソクムズ。洗練されたサウンドは都会的なそれと言える一方で、メロディーの佇まいは都会の喧噪から少し離れたのどかさと叙情を湛えたもの。“光の射すままに”では演奏にも参加し、彼ら特有のグルーヴも楽曲に注がれている。

「ソロの曲では、作っていただいた作家さんが実際にレコーディングに来ていただくこともあったり、曲だけいただいてconnieさんが付くこともあったんですけど、いずれにしてもきっちりディレクションしてもらうというよりは、自然と、〈Kaedeさんらしく〉って言ってくださることが多くて。その点、今回の“光の射すままに”は、グソクムズさんのメンバーが新潟まで来て、ディレクションもしっかりやってくださったので、自分だけで表現しようとしてできたものっていうよりは、ディレクションが最後までしっかり入ったうえでの歌。またちょっと新しいKaedeを見せられたかなって思ってます」。

 ジャケット写真になっている旧新潟県副知事公舎(〈FRENCH TEPPAN 静香庵 別邸 涵養荘〉として営業している)をはじめ、新潟市美術館、新潟市歴史博物館など、地元新潟の風情ある建物で撮影されたMVも素敵で、アートワーク含めて和める一枚。カップリングには、こちらも春めいたナンバー“カラッポで満たして”を収録。手掛けたのは、作詞作曲から演奏、プロデュースまですべてセルフで行う南葉洋平のソロ・プロジェクト、The Recreations。曲のテンポ感は、自転車に乗って春の風を切っていくような“光の射すままに”よりもゆったりめの〈お部屋〉感。程良い湿度を湛えたコーラスが耳に心地良い。

 「南葉さんも新潟まで来てくださって、一緒にレコーディングしました。この曲も最初は難しそうだなあと思って。コーラスが細かく細かく入っていたので、これは大変だぞと。当初のデモよりもキーを変えたほうがいいかもって、やりとりしながらイイところを探して……っていう感じで。サビの掛け合いのところで英詞が入ってくるんですが、英詞の歌が得意なほうではなく(笑)。そもそもの発音も苦手だけど、歌になるともっと難しい。ここも南葉さんにどういうふうにやったらいいのか訊きながら仕上げていきました」。

 コンスタントにリリースを重ねる一方で、地元のTVやラジオ出演、企業とのコラボレーションなどでも忙しいKaede。とはいえ、このご時世で、家にいる時間も少しは増えた。そんななかで、音楽を聴く時間も増えた?と問うと……。

 「そのぶん増えたということはないですね。自分の好きなアーティストさんのCDが出たら買うぐらいの感じです。聴けば聴くほど音楽ってたくさんあるなって思うと、じゃあ、私が新しい歌を出す意味ってなんだろうって。そこはあまり考えないようにしたほうがいいなと思うし、聴けば気持ちがまぎれてきたりするので、好きなものばかり聴いてる感じです」。

 〈不要不急の……〉ではないけれど、音楽に限らず本当に好きなものだけをチョイスするということについては、いま同感できる人も多いだろう。ミニマムな生活、断捨離に精を出す人もここ最近よく目にするけれど、少なくともKaedeの作品は、邪魔にならないどころか、生活のなかに寄り添っていてほしいぬくもりがある。

 「そう思ってもらえると嬉しいですね。〈人々を元気にしよう〉っていう、そういう楽曲ではないですけど、リラックスしたいときに聴いてほしい、今回もそういう曲が出来ました」。

Kaedeの近作。
左から、2021年のシングル“サイクルズ”、2021年のミニ・アルバム『Youth - Original Soundtrack』、2020年のミニ・アルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』(すべてT-Palette)

 

左から、グソクムズの2021年作『グソクムズ』(Pヴァイン)、The Recreationsの2021年作『The Recreations』(felicity/Pヴァイン)