NegiccoのMeguが、2021年11月9日(火)にCD+フォトブック『So good』をリリースする。

〈例えばchelmicoさんの曲だったり、スチャダラさんとネバヤンさんがやってるゆるめの曲だったり、ああいうやつに挑戦したいです〉と話したというMeguの言葉通り、“So good”はMeguが初めて本格的にラップに挑戦した楽曲で、アーバンなトラックに、キュートでクールでチルいラップが乗せられていく。本作のプロデュースはlyrical schoolプロデューサーであるキムヤスヒロ、作詞は大久保潤也(アナ、OLD Jr.)、作曲・編曲は上田修平がそれぞれ手掛けており、アートワークはlyrical schoolのデザインでもおなじみのmasataka yoshida(VAV)が担当(ちなみに、キムヤスヒロとmasataka yoshidaによるNegiccoメンバーのビジュアルプロデュースは、2013年2月にリリースされたNegicco『愛のタワー・オブ・ラヴ』以来約8年振り)。また本作は、6月にリリースされた前作『太陽と星の狭間で』同様、36ページの豪華フォトブックが付属した完全生産限定盤としてリリースされる。

そんな『So good』の制作秘話からコロナ禍における近況、グループについての話題まで、音楽ライターの南波一海がMeguに訊く。 *Mikiki編集部

Megu(Negicco) 『So good』 T-Palette(2021)


 

SNSとの関わり方

――久しぶりのインタビューなので、新曲はもちろん、近況もうかがえたらなと思ってます。

「でも最近はそんなにトピックスがないんですよ」

――Instagramで猫の写真をたくさん上げたりしていて。

「自分の写真よりもね(笑)。〈これやってます!〉みたいに載せるものがなくて」

愛猫・ろろちゃん
 

――変化としては、コロナ禍に突入して以降、Negiccoの活動がかなり落ち着いたというのがあると思うんです。

「そうですね。去年〈NEGi FES 2020 ONLINE〉があって、今年の2月にサトウ食品さんのライブ(〈サトウ食品 Presents Negicco 1日限りの特別配信ライブ〉)があって、そこからNegiccoとして3人でのライブ活動はやってないんですよね。そんな状態です。(コロナ禍は)最初、結構早く終わるのかなと思っていたんですけど、去年の冬くらいに、まだまだ長引きそうな雰囲気だなと思うようになって、そのまま今年を迎えて。夏くらいが感染者のピークだったじゃないですか。今は落ち着いてるだけで第6波があるかもしれないからなんとも言えないですけど」

――少なくとも現段階では今年の夏がピークでしたよね。

「そのときに、さらに1年長引いたらどうなるんだろうと思って。Negiccoとしては2年後(2023年)が結成20周年になるのでそこに向かってどんどん盛り上げていきたいのに、時はどんどん進んでいくし、でも活動ができてないし……という不安もあり。人前に立てないぶん、今まであまりやってなかったSNSとかYouTubeとかで発信しようと思ってたんですけど、SNSが苦手だなということがわかって(笑)」

――結構長くやってきたけれど。

「いまさら(笑)。今まで気にしなかったようなことも目に入るようになって、今年は自分らしくできてないなと。インスタは写真がメインなので自由にやれてますけど、Twitterは発信しなきゃいけないお仕事のこととか以外のプライベートなことはあんまり呟かなくなっちゃいました」

――ともあれ、何かを発信したいという気持ちがあって、それを模索していたと。

「そう思ってましたね。自分も何か動かなきゃいけないというタイミングがばっちり合って、今年の6月に3年振りに自分のソロ曲(“太陽と星の狭間で”)がリリースされたり、今回の新曲も出せることになりました。でも、これはきっかけがSNSなんですよね」

――そうだったんですか?

「新潟でやってるラジオ番組(FM-NIIGATA「ネギstyle」)があって、ラップグループの曲をかけたんですね。そこで私がぽろっと〈ラップかっこいいな〉〈やってみたいな〉ということを言ったら、かえぽ(Kaede)が〈lyrical schoolさんのところに修業に行ったら?〉みたいなことを言ってくれたんです。そのやりとりをファンの人がTwitterに書いてくれて、それをキムさん(lyrical schoolプロデューサーのキムヤスヒロ)が気にかけてくれて、手伝えることがあったらやりますよということで発展していきました」

――そんな流れなんですね。苦手と言いつつも、なんだかんだTwitterがあってよかったという。

「そう(笑)。結局SNSがあってよかったという話になっちゃいました」

 

自分が止まってるままだったらダメだな

――前作『太陽と星の狭間で』はどうして制作することになったのでしょうか。もちろん誕生日記念ということもあったとは思うのですが、久々のリリースでしたよね。

「2020年は3人でのライブ活動がちょっとお休みになるという話が出てきたなかで、じゃあ個人の動きをどうするかとなった時、熊さん(Negiccoが所属するEHクリエイターズ会長の熊倉維仁)が〈ソロで歌やらないの?〉と言ってくれたんです。かえぽやNao☆ちゃんがソロでリリースしている間、私のほうは動きが止まっていたので。やっぱり、ふたりの作品を聴くとすごくよかったし、自分は出すのに自信がなかったというか、自分はまだいいかなと思っていたので、熊さんに提案されたときは〈やりたくないです、すみません〉という感じで話も進まなかったんですよね」

――一度断ってるんですね。

「はい。それが去年の話です。で、今年の年明けにミーティングがあって、ゆっきー(Negiccoのディレクターの雪田容史)にどうするか訊かれて。去年〈やりたくないです〉と言ったあと、考える時間があったんですよね。その間に、自分ができることでファンの方に喜んでもらいたいし、自分の挑戦という意味でもやりたいかなと思うようになってきていたので、そのミーティングのときに前向きなことを言ったんです。〈やりたい方向で……〉みたいな、曖昧な感じで(笑)。そうしたら、ゆっきーから〈こういうアーティストさんのこういう感じはどう?〉という提案をもらって、〈自分で聴いてみて、できそうだったら挑戦したいです〉という話になりました」

――Meguさんからの前向きな言葉を待ってたんですね。ただ、そこに行き着くまでにかなりのためらいがあった。

「そうですね。自分の思うようにライブができない期間があったので、ソロでリリースなんてちょっと考えられないと思ってました。だから去年のミーティングの時は絶対無理だと思ってたんですけど、状況はどんどん変わっていくし、自分が止まってるままだったらダメだなと思うようになりました」

――メンバーそれぞれのソロ活動についてはどう思っていたのでしょうか。

「色んな意味でいいなあって。曲がいいなというものあるし、リリースできていいな、とか。自分はその段階ではないと思ってたので。ライブもひとりでやってるのもすごいと思ってました。嫉妬みたいな気持ちではなくて、尊敬とかそっちのほうだったんですけど、羨ましいなという気持ちはあったかも」

――様々な思いがあるなかで、このタイミングでひとりで歌ってみたら何か得られるものがあるはずだと。

「それはあったかもしれないです。気持ちが何かしら変わってくるかなと」

――そうしてconnieさん作詞作曲、THE MICETEETHが編曲と演奏で参加した“太陽と星の狭間で”が生まれました。やってみていかがでしたか?

「自分で言うのもなんですけど……チャレンジしてよかったなって素直に思えました。Negiccoの3人の中では元気なイメージがあると思うんですけど、ああいうしっとりな感じの曲調に挑戦できたのもよかったし、自分にもまだできることがあるんだなと思えました。ラヴァーズロックという新たなジャンルにも出会えましたし」

――それは本当によかったです。ここまでの話を聞いていると、歌入れのときに不安がなかったわけではないと思うんです。

「不安はありましたよ。でも、レコーディングは長年Negiccoを見てきてくれているconnieさんが一緒にいたので。すごくいいよという言葉をもらったり、アドバイスをしてもらいながら進めていったので、歌っていて楽しかったです」

――そこで手応えがあったことで、ソロ活動という選択肢が新たに視野に入ってきての今作なわけですね。

「そうですね。キムさんが協力しますよと言ってくれて、ゆっきーにどうするか訊かれたときも、〈やりたいです〉とすぐに答えが出たので。6月のリリースがなかったらそうなってはいなかっただろうな、と思います」

――そうして気持ちに変化が起きている中で、世の中の状況も変わってきたことで人前に出られる機会も少しずつ戻ってきましたよね。

「かえぽがお客さんを入れるライブをするようになったり、私もトークライブをやらせてもらったり、ちょっとずつやり始めました。それは自分にとってもかなりよいことだったというか。ライブはお客さんがいないと成立しないなと改めて思いましたし、長い間待っててくれてありがとうという気持ちです。お互い元気じゃないと会うことができないので。ただ、ファンの人はNegiccoの3人が見たいんだなと思う瞬間は何度もあって」

――そうなんですね。グループでなかなか動けないというのはどう思っているのでしょうか。

「長年ずっと止まらずに3人で活動してきたので、それぞれの体調だったり、色んな悩みもあったりしますよね。これは1回止まらないとよくならないし、最悪の場合、辞めなきゃいけないってことだってあるじゃないですか。これからも長く続けていきたいので、それを前提に、一度整えるために必要な期間なんじゃないかということになりました。ファンの方には待たせてしまって申し訳ないんですけど、Negiccoとして続けていくために、今はそれぞれができることをやろうという気持ちで取り組んでいます」