音楽の博覧会的アルバム『EXPO』
TMN期、最後のオリジナルアルバムとなった『EXPO』は、それぞれの楽曲が持つ多様性を〈音楽の博覧会的パビリオン〉として表現した1枚だ。
先行リリースされたシングル『Love Train/We love the EARTH』は、オリコン1位にも輝き、TM NETWORK~TMN時代を通じて最高の売り上げ枚数を記録した。結果、アルバムでも“Love Train”はアレンジされず、シングルバージョンのまま収録されている。
アルバムは、TMNへリニューアルしたことで制約を外し、ハウス、ロック、フォーク、ラテン、ニューミュージック、メタル、プログレやシアトリカルな台詞曲(!?)、全編英語詞によるナンバー、木根尚登や小室の歌唱曲など、1曲1曲が博覧会のパビリオンのようなイメージを持つ作品として、〈EXPO〉をコンセプトとした。
小室は、TM NETWORK期のアルバムはSFファンタジー的、無国籍風のサウンドだったが、『EXPO』では東京=TOKYOがアイデンティティになったと表明している。音楽産業が成熟し、ミリオンヒットが続出するマスへ目を向けながらも、TOKYOという世界でも類を見ない、何でも手に入るごった煮の街。そんな世界観に似合うストリートサウンドの表現手法を、当時は意識していたのかもしれない。
1991年から1992年にかけて、過去最大規模となる約70公演を行った全国ツアー〈TOUR TMN EXPO〉では、小室はシンセサイザーブースになんと、当時では珍しくターンテーブルを設置していた。ライブ中にレコードをスピンし、スクラッチノイズをプレイしたことは時代の先駆として誇れる試みだったと思う。
『EXPO』の2曲目に収録された“We Love The Earth (Ooh, Ah, Ah, Mix)”は、当時世界の主流だったハウスミュージックに影響され、シングルバージョンから大きくリプロダクションされたナンバーとなった。エコロジーをテーマにした楽曲でもあり、洋楽に負けない音作りを意識し、エンジニアにはゲイリー・ライトを迎え、アルバムバージョンではニューヨーク・サウンドを導入したのだ。90年代初頭のマドンナのシングル曲“Vogue”“Rescue Me”などと聴き比べると、その意図は伝わりやすいだろう。低音の効いたキックとベースによるブレイクビーツのループでグルーヴを構築する手法は、当時の日本の音楽シーンでは画期的な音作りだった。
今から思えばリニューアル後のTMNの活動とは、結果的に1994年に東京ドームでラストライブを迎えるTMN終了へ向けたラストスパートだったように思う。そもそも、『EXPO』のジャケットイラストを見ればわかる通り、TM NETWORKはピアノ型のロケットで宇宙空間から地球を俯瞰し、手を振りながら去っていくイメージを打ち出していた。それは、小室が考えていた〈俯瞰して地球を見られるぐらいのゆとりや冷静さが大切〉という、アルバムの裏のメッセージを言いあらわしている。
3人がデビュー時から思い描いていた完成イメージ
『RHYTHM RED』でのバンドサウンドへの回帰、『EXPO』でのダンスミュージックやオールジャンルへのアプローチ。それは音楽のみならず、まるでアミューズメントパークのような体験の提供となった。それこそが、1984年から思い描いていたTM NETWORKらしい最新カルチャーの完成イメージだったのである。
こうした背景を持つ『RHYTHM RED』と『EXPO』が、時を越えて2024年に初めてアナログ化される意義は大きい。
アルバム作品とは、どんなカルチャーにも溶け合えるプロットとなる原液だ。
時が時なら、この2枚のアルバムから派生して映画やアニメ、コミック作品が生まれていたかもしれない(作詞に坂元裕二が参加した“月はピアノに誘われて”は木根尚登によって小説化され、当時は映画化も企画されていた)。そんなマルチメディア展開のタネとなる情報密度の濃さ。TMヒストリーのミッシングリンクを埋めるアナログレコードのリリース、それが『RHYTHM RED』『EXPO』なのである。
2024年、デビュー40周年を迎えたTM NETWORKは2年がかりの全国ツアー〈FANKS intelligence Days〉シリーズを完走し、先日もテレビ朝日系「EIGHT-JAM」に仲良く3人で出演するなど活動を継続している。ソロ活動でも元気な小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登という3人組ユニット=個の連帯。あらためて、TM NETWORKが存在するこの現実に感謝をしたい。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2024年8月21日(水)
品番:MHJL-350〜351
価格:5,940円(税込)
完全生産限定盤、アナログ2枚組(DISC 1〈黒盤〉、DISC 2〈不透明赤盤〉)、33 1/3RPM
TRACKLIST
DISC 1
Side A
1. TIME TO COUNT DOWN
2. 69/99
3. RHYTHM RED BEAT BLACK
Side B
1. GOOD MORNING YESTERDAY
2. SECRET RHYTHM
3. WORLD'S END
DISC 2
Side C
1. BURNIN’ STREET
2. REASONLESS
3. TENDER IS THE NIGHT
Side D
1. LOOKING AT YOU
2. THE POINT OF LOVERS’ NIGHT
リリース日:2024年8月21日(水)
品番:MHJL-352〜353
価格:5,940円(税込)
完全生産限定盤、アナログ2枚組(DISC 1、DISC 2〈不透明白盤〉)、33 1/3RPM
TRACKLIST
DISC 1
Side A
1. EXPO
2. We Love The Earth (Ooh, Ah, Ah, Mix)
3. LOVE TRAIN
Side B
1. Just Like Paradise
2. Jean Was Lonely
3. Crazy For You
DISC 2
Side C
1. 月の河/I Hate Folk
2. あの夏を忘れない
3. 大地の物語
Side D
1. 月はピアノに誘われて
2. Tomorrow Made New
3. Think Of Earth
PROFILE: TM NETWORK/TMN
小室哲哉(キーボード)、宇都宮隆(ボーカル)、木根尚登(ギター)によるユニット。前身のSPEEDWAYを経て、1984年“金曜日のライオン”でデビュー。圧倒的なパフォーマンス、シンセサイザーを多く導入した前例のない音楽性、歌詞表現、ミュージックビデオに人気が集まる。2021年10月、約6年ぶりの〈再起動〉を発表。2024年、40周年イヤーの活動に注目が集まる。
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