いつだって自分の見た目を肯定できたらいいのにな、と思う時がある。日本の女子の平均よりも高い身長、大きな手のひらと足。何も気にならない日もあれば、お気に入りの服を着て外へ出かけても、やけに道行く人たちと自分を比べてしまう日もある。

 そんな考えても仕方ないような悩みは、韓国のラッパー、イ・ヨンジが先日リリースした『16 Fantasy』というアルバムに出会って、風船が萎んでいくように小さくなっていった。

LEE YOUNG JI 『16 Fantasy』 Kakao Entertainment (Kakao M)(2024)

 イ・ヨンジは韓国で一番のラッパーを決める番組「高等ラッパー3」の優勝者で、2002年生まれとは思えない貫禄とユーモアセンスで一躍注目を集めた。

 バラエティ界でも大活躍で、彼女が自宅にK-Popアイドルや俳優などのスターを招き、お酒を飲みながら語り合うYouTubeチャンネルは国民的な人気を誇り、初対面のゲストでも、以前から飲み友であるかのように打ち解けることができるフランクな性格の持ち主だ。

 そんな人柄を知っていたからこそ、アルバムの収録曲“Small girl (feat. D.O.)”では、彼女の意外な一面に少し驚いた。

 背が高く、騒がしい性格をしているけれど、時には小柄で可愛らしい女の子のことを羨ましく思う時もある、という彼女のリアルな心境が表現されている。

 対して、フィーチャリングを務めるEXOのD.O.は、愛で包み込むように〈僕に微笑んでくれるだけでいい〉と歌う。彼も出演するこの曲のMVは、甘酸っぱい青春をテーマにしたショートムービーのようで胸がキュッとなるので、ぜひ一度観てほしい。

 ほぼすべて英語で書かれた繊細な歌詞が乗った、うっとりしてしまうようなメロディー。普段のイ・ヨンジの明るいキャラクターとのギャップに心を打たれる。何よりも、次世代のディーバである彼女が、自身の少し消極的な内面を作品にしてくれることだけでも心強い。そのままのあなたで大丈夫だ、と語りかけてくれるかのように、あらゆるコンプレックスを持つ全てのリスナーに寄り添ってくれる曲だ。

 


【写真と文】hana:8人組のHIP HOPユニット、lyrical schoolでMC/ヴォーカルを担当。lyrical schoolは現体制で初のアルバム『DAY 2』(ビクター)が好評リリース中。この夏も各地でライヴしつつ、全国ツアー〈DAY 2 TOUR〉もまだまだ継続中です。定期公演やその他諸々の最新情報は〈https://lyricalschool.com/〉にて。