浅野ゆう子、清水健太郎、あべ静江などサブスク未解禁のレア曲
それに対してDISC 2は、いわゆる〈第1次ディスコブーム〉期に生まれた楽曲が主軸となる。先述したように、当時は本場でもディスコサウンドのフォーマットが定型化される前の段階ということで、ここでも同時代のUS産ソウル/ファンクに影響された和製ソウルナンバーが並んでいる。それゆえに〈和モノ〉〈レアグルーヴ〉といった文脈で再評価されてきた人気曲も多く、穂口雄右がフィラデルフィアソウル調に仕立てたキャンディーズ“その気にさせないで”(1975年)はその象徴だが、このDISC 2で特にフィーチャーされているのが筒美京平の手による名曲群だ。
日本でも人気を博した本場フィリーの3人組、スリー・ディグリーズの日本語歌唱曲“にがい涙”(1975年)をはじめ、同曲を作詞した安井かずみとのコンビ作品では、“17才”との対比で成熟した主体性を濃厚に匂わせる南沙織のソウルフルな名曲“20才の立場”(1975年)、笠井紀美子のアンニュイなメロウクラシック“夏の初めのイメージ”(1977年)も圧巻。橋本淳が作詞した平山三紀“愛の戯れ”(1975年)もバリー・ホワイト風味な大人の品格を湛えた人気曲だ。
さらに筒美ナンバーでは、定番の“東京ららばい”に続くヒットとなった中原理恵の刹那的な“ディスコ・レディー”(1978年)と、リリカルな風情の漂う太田裕美の“ドール”(1978年)があり、これらは名コンビの松本隆が作詞を担当している。そんな〈京平ディスコ〉群においてもっとも直球な1曲が浅野ゆう子“セクシー・バスストップ”(1976年)で、これは彼がJack Diamondの変名で手掛けたオリエンタル・エクスプレス名義のインスト曲に橋本淳が歌詞を付けたカバー。ヴァン・マッコイ“The Hustle”など本場のヒットを意識した原曲のサウンドデザインを受け継ぎ、後に女優として大成する浅野にとっても歌手としての代表曲となった。
なお、その“セクシー・バスストップ”や先述の“にがい涙”を含めてサブスク未解禁の楽曲はDISC 2でも充実している。後にベーシストとして活躍する松原秀樹が曾我泰久(現THE GOOD-BYE)と組んでいたリトル・ギャング“アイ・ラブ・ユー”(1975年)は馬飼野康二らしい和製バブルガムソウルだし、つのだひろ作の清水健太郎“きっと今日からは”(1977年)は同じく馬飼野の編曲したアルバムバージョンで収録(翌年シングル化された際は大野雄二が編曲を担当)。さらに、あべ静江“ヘイ! セニョリータ”(1979年)はフィンランドの歌手マリオンが欧州各国でヒットさせた“Señorita Por Favor”のカバーで、このあたりの曲はサブスクどころか近年はCDでも入手困難だったものだ。
南佳孝、バブルガム・ブラザーズらのタイムレスなグルーヴ
他にも、バリー・マニロウ“Copacabana”を思わせる坂本龍一の編曲も見事な南佳孝の代表曲“モンロー・ウォーク”(1979年)、萩田光雄アレンジによる久保田早紀の幻想的な“真珠諸島”(1980年)、シュガー・ベイブのカバーとなるEPOの“DOWN TOWN”(1980年)あたりはいわゆるシティポップなどの文脈でも認知される定番曲で、時代の変化に応じてディスコ由来の軽快さが街の日常へフィットしていく様子も窺い知れる。
そこから先述の西城秀樹“HIDEKI DISCO SPECIAL”を挿んでラストに置かれているのは、このコンピ内で唯一の平成ソングとなるバブルガム・ブラザーズの“WON’T BE LONG”(1990年)。ゴーゴーのリズムを導入した同曲は1991年に入ってヒットしたもので、夜遊びのグルーヴが改めて歌謡曲(J-POP)に浸透していく時代の幕開けを告げる一曲になった。
改めて現在の視点に立てば、度重なるリバイバルを経たディスコサウンドがすでに普遍的なアレンジの選択肢として定着しているのは言うまでもないわけで、ここに並ぶ楽曲にも世代を選ばず楽しめる懐の深さが用意されている。パッションに溢れた時代が生み出したタイムレスなグルーヴの魅惑を、心ゆくまで堪能していただきたい。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2024年9月11日(水)
品番:MHCL-3097/98
価格:3,850円(税込)
TRACKLIST
DISC 1
1. 西城秀樹/YOUNG MAN(Y.M.C.A.)
2. 原田潤/ぼくの先生はフィーバー
3. 桑名正博/セクシャルバイオレットNO.1
4. SHŌGUN/As Easy As You Make It
5. サーカス/ムーヴィング
6. ジュディ・オング/麗華の夢
7. 渡辺真知子/たとえば…たとえば
8. A BOY/大滝裕子
9. 朝比奈マリア/ディスコ・ギャル
10. クリッパー/キャットマン・ディスコ
11. 郷ひろみ/HELL OR HEAVEN(地獄か天国)
12. フォーリーブス/ブルドッグ
13. トライアングル/キャプテンZAP
14. アパッチ/怪盗アリババ
15. 俺をよろしく/沖田浩之
16. ラッツ&スター/夢のディスコティック
DISC 2
1. スリー・ディグリーズ/にがい涙
2. リトル・ギャング/アイ・ラブ・ユー
3. キャンディーズ/その気にさせないで
4. 南沙織/20才の立場
5. 平山三紀/愛の戯れ
6. 浅野ゆう子/セクシー・バスストップ
7. 清水健太郎/きっと今日からは
8. 中原理恵/ディスコ・レディー
9. 太田裕美/ドール
10. 南佳孝/モンロー・ウォーク
11. あべ静江/ヘイ! セニョリータ
12. 笠井紀美子/夏の初めのイメージ
13. 久保田早紀/真珠諸島
14. EPO/DOWN TOWN
15. 西城秀樹/HIDEKI DISCO SPECIAL
16. バブルガム・ブラザーズ/WON’T BE LONG
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