チェロの音世界が広げる人生の風景

 2022年11月に最後の日本公演を終えてそれぞれの道を歩み始めた2CELLOSの2人。このうちハウザー(ステファン・ハウザー)は今年の4月、4枚目となる最新作『クラシックII』を引っ提げてバンドと一緒に初の単独来日公演を開催し、会場を怒濤のラテン・ナンバーで巨大なダンス・フロアに変貌させ、聴衆を総〈踊り〉立ちにして沸かせたのも記憶に新しい。

 一方で、既に2022年6月に日本で単独公演を成功させていたルカ・スーリッチが、この度待望のソロ・アルバム第2弾をリリース。凄腕の〈音の魔術師〉と化したハウザーに対し、ルカは自ら作曲&編曲を手がけるコンポーザー・チェリストとして、全10曲からなる珠玉のオリジナル作品集で魅せる。

LUKA SULIC 『Life』 Platoon/ソニー(2024)

 『Life』と名づけられた本作は、4人の子どもを育てながら故郷のスロヴェニアに暮らす彼が、日々の暮らしの中で心に浮かぶ感情や風景を日記のように、弦楽器とピアノからなるアコースティックなサウンドと共に綴ったもの。実はYouTubeの公式チャンネルには、スロヴェニアと国境を接するオーストリアはケルンテン州の、風光明媚な山中に佇む古城跡で撮影されたフル・アルバムの映像版や、各々に趣向を凝らして制作された主要曲のミュージック・ビデオがアップされており、早くから話題を呼んでいた。

 特に、夜の橋の上で女性ダンサーとコラボする夜想曲“ノワール”や英国コーンウォールの海岸でひとりチェロを奏でるルカをドローン空撮でダイナミックに捉えた“ブルー・ハート”のようなアルバム前半の内省的なナンバーが息を呑む美しさで、草原や森のみどりに抱かれた中盤の“ドリーマー”や“ブロッサム”にも癒やされる。

 そして荒涼たる大地をバックに情熱的に奏でられる“フェニックス”は、まるでドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のワン・シーンのよう……とヴィジュアルの話ばかりして恐縮だが、もちろんCDにじっくりと耳を傾けるだけでイマジネーションは無限に広がる。