©Olaf Heine

今年は結成10周年! ビリー・アイリッシュら若手アーティストのヒット曲を演奏!

 それぞれのソロ活動を経て、結成10年目の今年に〈2CELLOS〉として再始動し、3年ぶりとなる新作『デディケイテッド』をリリースした。ソロ活動ではそれぞれのルーツであるクラシックに取り組んだが、〈2CELLOS〉では世界中の人が知っているような英米のヒット曲を取り上げている。

 「念頭にあったのは原点回帰だった。2台のチェロで音楽を紡ぐ。余計な音は足さない。チェロでロックするのが僕らの原点だから」(ステファン)

2CELLOS 『Dedicated』 Masterworks/ソニー(2021)

 たしかに原点回帰ではあるが、選曲に新たな傾向が見られる。ビリー・アイリッシュとか、エド・シーラン&ジャスティン・ビーバーのような若手アーティストのヒット曲を取り上げていることだ。

 「僕らは常に7歳から77歳までをターゲットにしているからね(笑)。収録曲は、僕らの故郷クロアチアで人気の曲でもあるんだ」(ステファン)

 「コロナ禍でツアーが中止となり、多くの時間を自宅で過ごした。スタジオ設備を揃えて、レコーディングも練習も思う存分出来るようになった。そのなかで学ぶこと、得られるものが多かったと思う」(ルカ)

 「ライヴが全て中止になったから、新作は作れたと思う。ツアーの合間にスタジオに入って、という環境では絶対に作れなかったアルバムだよ」(ステファン)

 選曲には2人の意見が反映されていて、イマジン・ドラゴンズの“ディーモンズ”のような美メロの「ゾンビの葬式を彷彿させる暗い曲」は、ルカの好みだとステファンは笑うが、1曲だけそれぞれソロでも演奏し、今回あらためて取り上げた曲がある。レディー・ガガ&ブラッドリー・クーパーの“シャロウ~「アリー/スター誕生」愛のうた”だ。朗々と奏でるチェロからまさに歌が聴こえてくる演奏が素晴らしい。

 「ルカはピアニストと、僕はシンガーとカヴァーしているけれど、〈2CELLOS〉ヴァージョンが欠けていたからね。この曲は本当に名曲。名曲に出会ったら、迷わず取り上げないと(笑)。しかもバラードというのは最近珍しいから貴重なんだよね」(ステファン)

 ところで、タイトルの『デディケイテッド』は英語で〈捧げる〉という意味だけれど、誰にこの新作を捧げているのだろうか。

 「そういう意味もあるけれど、僕らは結成10年を迎えたので、Decade(10年)という言葉にも引っかけているんだ。言葉遊びだよ。音楽とファンに〈2CELLOS〉を捧げてきた10年を祝うという意味もある」(ルカ)

 「ルカ、君は天才!!」(ステファン)

 今の状況で来日公演をすぐに実現させるのは難しいけれど、彼らの思いとしては「僕らの夢は、もう一度武道館でライヴをやることだから」と話してくれた。