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ここに集まれ、みんなで踊ろう

 『In Waves』は、ジェイミーのディスコグラフィーのなかでもっとも〈ダンス〉への志向性が強い作品である。パワフルなビート、ぶっといベースライン、華やかなウワモノ、シンプルかつエモーショナルな言葉……ここに収録された12曲のほとんどは、ミラーボールの下に最高の瞬間を作るためのものだ。〈ダブステップ時代の憂いを映したインディー・ポップ〉といった雰囲気でThe xxが2009年に登場して以降、バンド(と各メンバー)は少しずつ音楽性にポップな色味を加えてきた経緯があるといえ、ジェイミーがソロ作をかくもフロア仕様に仕上げたことを意外に思うファンもいるのではないか。

 ダブル99による97年のクラブ・ヒット“Ripgoove”でもおなじみのティナ・ムーア“Never Gonna Let You Go”を声ネタとして使った“Wanna”で幕を開ける『In Waves』。以降はスピード・ガラージの“Treat Each Other Right”、ロミーとオリヴァーをゲスト・ヴォーカルに迎えたThe xx集合のベース・チューン“Waited All Night”と続くが、序盤のハイライトはビヨンセの作品に貢献するなど、いまをときめくDJ/プロデューサーのハニー・ディジョンと共作した“Baddy On The Floor”だ。ディジョンのメンター的な存在であるルーク・ソロモンも参加したラップ・ハウス調のバンガーで、ゴキゲンなホーンがとことん盛り上げる。

 中盤以降も、LAのケルシー・ルー、ロンドンのジョン・グレイシャー、そしてパンダ・ベアというユニークな並びの3人が歌を重ねるドリーミーなダブ“Dafodil”、ヒプノティックなテクノ“Still Summer”、ボールルームのエレメントを注入したロビンとの“Life”など強力な楽曲を揃えている。アルバム全体としてキャッチーなフックを作っているのが、JJ・バーンズやアストラッド・ジルベルト、ディヴァイン・スタイラー……ソウル、ディスコ、ブラジル、ラップなどをサンプリングしたフレーズだという点も改めて強調しておくべきだろう。

 その意味でも、10曲目の“All You Children”を共同プロデュースしたアヴァランチーズの参加は必然だった。サンプリングを奔放に組み合わせ、夢の中へとリスナーを誘うかのようなポップソング~ダンス・ミュージックを作り出してきた彼らをお手本に、若き日のジェイミーは音楽を作りはじめたという。曲中で引用されている〈子どもたちよ、集まれ/みんなで輪になって踊ろう〉という言葉も含めて、本作を象徴する一曲と言えるはずだ。

 オリヴァー・シム、ロミー、そして今回のジェイミーxxとメンバー各人がソロ・アルバムをリリースしたことで、『I See You』以降のタームが完結した感のあるThe xx。3人の関係は良好なのだと思うが、2018年夏に前作のツアーを終えて以降、バンドとして表立った動きはない。だが、今年の7月にジェイミーは3人でスタジオに入っていることを明かしており、彼らも次の道へと歩みはじめているようだ。遠くないうちに何かが届けられる気もしているが、はたしてどうだろうか。

ジェイミーxxの作品。
左から、ギル・スコット・ヘロンとの2011年作『We’re New Here』(Young)、2015年作『In Colour』(XL)

ジェイミーxxの近年の参加作。
左から、スクリレックスの2023年作『Quest For Fire』(OWSLA/ Atlantic)、ムスタファの2021年作『When Smoke Rises』(Regents Park Songs)、タイラー・ザ・クリエイターの2021年作『Call Me If You Get Lost』(Columbia)