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日本とアメリカ、そしてヨーロッパ……。世界を舞台に活躍するジャズシンガー、Rico Yuzen(友膳莉子)。初めてニューヨークを拠点としたときに作った2003年の『Inside A Silent Tear』、ヨーロッパ時代を経て再びニューヨークに戻り制作した2017年の『I Wish You Love』に続く最新作『To The Sky』は、〈ニューヨーク3部作〉を締めくくる集大成的なアルバムだ。プロデューサーとしての評価も高いピアニストのアート・ヒラハラをはじめ、第一線で活躍する気鋭のプレイヤーたちを迎えた本作は、ボーカルアルバムの域を超え、まるで歌もひとつの楽器であるかのように、各メンバーのエネルギーが交錯する充実の1枚となった。これまでの歩みと本作について、また今後の展望について彼女に伺った。

Rico Yuzen 『To The Sky』 Yuzen(2024)

 

人との縁やつながりが結実したニューヨークでの活動と3部作

――最初に、Ricoさんがニューヨークで制作したアルバムについてお話を聴かせてください。3部作の最初の1枚は、2003年の『Inside A Silent Tear』です。

「『Inside A Silent Tear』はニューヨーク3部作の1作目であると同時に、私にとって最初のアルバムでもあります。元々、私は歌が好きではありましたが、ジャズを始めたのは遅くて、大学を卒業してからなんです。そして、私はジャズを歌うようになった頃から、〈最初のアルバムはニューヨークで作りたい!〉という思いがあったのですが、最初は漠然としたものでしかありませんでした。でも、2003年に〈もう現地に行くしかない!〉と自分で自分の背中を押して、渡米したんです」

――まさに一念発起、という感じですね。

「そうなんです。現地では、友人から〈ジャズをやってるんだったら行ってみない?〉とピアニストのクニ三上さんがトリオで出演するブルーノート・ニューヨークの〈サンデー・ブランチ〉というコンサートに誘われて、控室で挨拶もさせていただきました。そこでクニさんに〈ジャズをやっているんだったら、いちど私のスタジオに遊びに来なさい〉と声をかけていただきました」

――そこからアルバム制作につながっていくのですか?

「はい。クニさんのスタジオに行って〈アルバムを作りたいんです〉という話をしたら〈じゃあ何か歌ってみてよ〉となって、それで歌ったら〈君、良いじゃん!〉と言っていただいたんです。〈僕がメンバーを集めてアレンジもやるから、選曲しておいてよ〉って。

その頃、私の先生だったナンシー・マラーノがブロッサム・ディアリーがホームグラウンドにしていた〈Danny’s Skylight Room〉というライブハウスに出演されていて、私も出入りさせていただいてました。そこでブロッサムが歌うキュートな“Inside A Silent Tear”を聴き、〈私もこの曲を歌いたい!〉と強く思いました。ブロッサムと私とではボーカルのスタイルは異なるけれど、選曲面でとても影響を受けましたね。

そして、クニさんのトリオとの共演で、マンハッタンでライブデビューしたのが2003年でした。ありがたいことに、ライブは満席になりました。クニさんには本当に感謝しています」