(左から)舩越悠生、古賀礼人、平野 駿

滋賀県出身の3人組、ゴリラ祭ーズがNEWFOLKからリリ-スしたニューアルバム『The Drifter』。栗コーダーカルテットなどから影響を受けた室内楽ポップ的なインストゥルメンタルが中心のバンドだった彼らが、ついに挑戦した全編ボーカル曲の作品だ。

初期の星野源を思わせる古賀礼人の歌心、卑近な事柄への優しい眼差しから社会への鋭い視座までを含んだ歌詞に特に耳を奪われるが、サポートメンバーのNanamiki(ベース)とkiyori(ドラムス)が参加した豊穣かつ緻密なアレンジの演奏、paya & いしし(幽体コミュニケーションズ)、わがつまというゲストの参加もアルバムが見せる景色をぐっと広げている。

そんな風通しのいい見事なポップアルバムを作り上げた3人に、レーベル移籍のキーパーソンにもなったライター松永良平(リズム&ペンシル)がインタビューした。 *Mikiki編集部

ゴリラ祭ーズ 『The Drifter』 NEWFOLK(2025)

 

このままではフェスのトリに出られへん

――そもそもゴリラ祭ーズは、ギター、リコーダー、鍵盤ハーモニカによるインスト曲でスタートしました。やがてそこにギターの古賀くんが作るフォーキーな歌ものが入って、2021年にはニッポン放送が主催した〈有楽町うたつくり計画〉に応募した“有楽町のうた”が最優秀賞を獲得。デビューからはインスト主体ながら歌ものも魅力的というその両輪でやってきたと思うんですが、NEWFOLKからの第1弾となるサードアルバム『The Drifter』はついに全曲歌ものになりました。高校時代からずっと一緒にやってきた3人の中では葛藤や決断がいろいろあったのではないかと。

古賀礼人(ギター/歌)「おそらく転機はセカンドアルバム(『EXTREME ENNUI SUPER ULTRA POP』、2023年10月)を出してすぐくらいだったと思います」

舩越悠生(鍵盤)「ぼんやり次のアルバムの妄想をしてるときに、何となくそんな話が出ました」

平野駿(金管楽器/リコーダー)「〈次は歌ものだ!〉って(笑)。セカンドはインスト7曲、歌もの3曲だったんですよ」

古賀「当初は全部歌にするつもりではなかったんです。〈次は歌を多めにしようか〉くらいの軽い感じだったかな。でも、その時期の僕には、自分としてはいい歌が作れているなという感触はあったのに、世間的には〈インストバンドの歌もの〉という見られ方になってしまうのがちょっと悔しい思いがあった。同世代で、歌ものでやっているバンドの人たちと同じフィールドで僕らも歌ものアルバムを作ってみて、どう思われるのか試してみたい気持ちが個人的にはありました」

――古賀くんは自分で歌を作って歌う人なので、その思いはわかるんですが、平野くんや舩越くんは歌ものをやることに対してどういう気持ちだったんでしょうか?

平野「僕としては、ゴリラ祭ーズというのは何でもできるバンドなので、その中で〈次は古賀アルバムを作ろう〉という気持ちで動きましたね」

舩越「〈まあ一回やってみるか〉という感じでした。抵抗感もなければ、〈めちゃ歌でやってやるぞ〉みたいな感じもなく」

平野「とにかく、やったことないことにトライできるのがうれしかったですね」

――つまり〈これからは歌だ!〉というより、〈一回これで作ってみよう〉という気持ちのほうが大きかったということ?

古賀「まさにそうです」

平野「セカンドを作る時点では、〈これからもインストバンドで行くぞ〉と普通に思ってましたから」

――セカンドを出してしばらくして、2024年の春についに3人とも大学を卒業したんですよね。それまではメンバーも離れ離れで活動も制限されてたのが、ようやくバンドに専念できるようになった。だから、いざ自由を手にしてこれからどうなるのかを、いろいろやりながら考えていく時期でもあったんでしょうね。

古賀「本当にその通りかも。ライブの本数も増やしたいし、やれることはいっぱいやりたいというのがありました」

平野「自分たちだけでも、(サポートのリズム隊を加えた)5人でも、いっぱいやっていこう、と。3人のときは、みんながいろんな楽器をやったり」

舩越「(転機としての)最初は、2024年に京都で出たフェス〈ナノボロ〉(8月31日~9月1日)やない?」

古賀「そうやね。〈ナノボロ〉に初出演させてもらって、そのときは3人でいろんな楽器を演奏する、いつものライブをしたんです。でも、その日のトリの水平線っていう京都のロックバンドを見ながら、僕が漠然と感じたんです。〈自分たちはこのままのスタイルやったらフェスのトリでは出られへんやろうな〉って。ゴリラ祭ーズはあえて望んでニッチな路線でやってきて、それは誇りでもあったんですけど、あの日はなぜかめちゃめちゃ自分で悲しくなっちゃった(笑)。その日のうちに2人にもそれを言った気がする」