味園ユニバース閉店前に開催されるNEWFOLK主催イベント〈utanoyukue vol.3〉
ライブイベント〈NEWFOLK presents “utanoyukue vol.3” -特別編-〉が、2025年3月22日(土)に大阪・千日前の味園ユニバースで開催される。Mikikiは2024年に設立5周年を迎えた東京のレーベル/プロダクションNEWFOLKの特集をおこなってきたが、同公演の紹介をもって一連の記事の締めくくりとしたい。
まず、イベント自体について。〈utanoyukue〉はNEWFOLKの主催イベントとして過去2回開催されており、〈vol.1〉は台風クラブとmotoki tanaka(band set)のツーマンライブで、2024年11月3日に神戸・月世界で開催された。〈vol.2〉は本日休演とKhakiのツーマンライブで、同月23日に東京・渋谷のLa.mamaでおこなわれた。いずれもNEWFOLKが作品をリリースしてきたバンド、もっと言えば10年強活動してきたアーティストと、今インディシーンで注目を集めている新鋭との対バン。出演者がレーベル所属アーティストだけではない点に風通しのよさがあり、志向/嗜好や世代の異なるミュージシャンおよびオーディエンスの交差を試みる野心を感じさせる組み合わせだ。
そもそも〈utanoyukue〉は〈うたのゆくえ〉というタイトルで、NEWFOLKを主宰する須藤朋寿が開催していたイベントだった。2018年3月3日に東京・渋谷TSUTAYA O-nest(当時)におこなわれた記念すべき初回は、〈東京と京都のうたを紡ぐ〉というテーマを掲げて石指拓朗、折坂悠太(合奏)、カネコアヤノ(バンドセット)、台風クラブ、ドミコ、中村佳穂(バンドセット)、西村中毒、バレーボウイズ、本日休演、ラッキーオールドサン(バンドセット)が出演。さらにライターの松永良平と岡村詩野がトークセッション〈東京のうた、京都のうた〉をおこない、ココナッツディスク吉祥寺店も出店。単なるライブイベントに留まらない、〈うた〉を立体的に伝えて繋げる志の高い催しだった。
ちなみにこの日は、〈Mikiki DJs〉として田中亮太と私が幕間で選曲を担当した。豪華かつエッジの効いた出演陣の組み合わせの妙、それぞれの気迫に満ちたパフォーマンスもあいまって、忘れがたい一日になった(特にカネコアヤノ、台風クラブ、バレーボウイズの演奏が印象深いが、バレーボウイズは残念ながら2020年に解散してしまった)。
〈第二回 うたのゆくえ〉は2019年3月30、31日に京都・三条VOXHallで開催された。〈東西のうたを紡ぐ〉イベントとして初日はEasycome、石指拓朗、ウエル、UlulU、キイチビール&ザ・ホーリーティッツ、柴田聡子、四万十川友美 & best friends、台風クラブ、西洋彦、西村中毒バンド、バレーボウイズ、牧野ヨシ、家主、ラッキーオールドサン(バンドセット)、Sheeps5(ex-星のクズさまたち)(クロージングアクト)、2日目はゑでぃまぁこん、EMERALD FOUR(バンドセット)、折坂悠太(重奏)、カネコアヤノ(バンドセット)、ギリシャラブ、黒岩あすか、すばらしか、東郷清丸、中村佳穂、本日休演、マーライオン、mmm、山本精一 & THE SEA CAME、吉田省念、小川さくら(オープニングアクト)が出演。膨大な数の音楽家が集められ、出演者リストを眺めるだけでイベントに対する気概が感じられる。前回に比べて拠点も音楽性も世代もさらにバラバラで、現場では〈うた〉の〈交差〉というよりも〈交錯〉に近い幸福な状況が生まれていたのではないかと予想する。
今回はそれらに続く〈utanoyukue〉の第3回にして特別編。会場は味園ユニバースだ。1950年代に建設された大阪・千日前の味園ビル、その中のキャバレー〈ユニバース〉は1960年代から営業していた老舗だったが、2011年に閉店。その後〈味園ユニバース〉としてライブスペースに生まれ変わり、インディペンデントでエッジーなミュージシャンたちが連日出演してきた名ライブ会場だった。しかし味園ビルは老朽化によって解体されることになり、同店も2025年6月末に閉店する。そんなタイミングで特別に開催されるのが〈utanoyukue vol.3〉だ。