(左から)山本啓太、石塚淳、伊奈昌宏、須藤朋寿

2025年2月9日(日)に京都・拾得でワンマンライブを開催する台風クラブ。2023年に2nd『アルバム第二集』をリリースして以降、メンバーの生活などは変化や転機を迎えながらも、さまざまな場所でライブをおこない、新曲も演奏してきた。

〈現在のメンバーで活動を始めてから10周年〉という点は3人にとってあまり意味がないようだが、そんな2025年を前に、バンド練習後の3人が2024年末の忘年会で語り合った。聞き手は、レーベルNEWFOLKを主宰する須藤朋寿が務める。 *Mikiki編集部

★NEWFOLK設立5周年記念の記事一覧はこちら


 

人生の凸と凹にはまるのが台風クラブ

――じゃあ、お願いします。

石塚淳(歌とギター)「2024(にーまるにーよん)、お疲れ様っした!」

(全員で乾杯)

石塚「(ビールを飲んで)あっ、うまい~! (メニューを見て)概ねいけますわ。一巡ぐらい」

――お刺身頼みまーす。

石塚「(即答で)ブリと中落ち。(店員に)すみませーん! 牛すじ大根と、アジの南蛮漬けと、中落ちと、ブリの刺身と、ニラ玉水餃子」

山本啓太(ベース)「お刺身は2人前ずつお願いします」

――あとクジラ刺し。

石塚「揚げナス」

伊奈昌宏(ドラムス)「牛すじ大根」

石塚「それ言った!」

――2人前お願いします。

山本「あとハイボールください。角ハイで」

――早いですね。

山本「3杯までいけるから」

――では改めて……。3人揃ってのインタビュー取材は2ndを出すタイミングに受けたものが最後なので、1年以上経っています。その後、ツアーで全国各地を回り、さらにメンバーの住まいが東西に分かれて遠距離になったじゃないですか(現在、石塚が京都在住、山本が埼玉在住、伊奈が東京在住)。バンドの体制が変わってからは大変でしたか?

石塚「おれは運転ができるから好都合」

――練習するにしても都合を合わせるのが大変になったと思うのですが、意外と苦労はしてない?

石塚「そうでもない。己の人生の凸凹の、凸と凹にはまるのが台風クラブやから」

――……ほかの2人は全然ピンときてない(笑)?

山本「そんなことないよ」

伊奈「おれはピンときてない」

石塚「遠距離になるって決まったときのほうが大変やった。でも、無理くりスケジュールを入れて」

山本「もうおじさんやから、経費とかおいといて、1台の車で移動せんでええのは気持ち的に楽。石塚だって移動の途中でいろんなとこに寄ったりしてるやん。バンドは大事だけど、活動の前後にある個々の楽しみも大事だから」

石塚「(店員に)すみませーん。生2つください」

――そして、そんな中でも新曲もできてきて。……できたよね(笑)?

山本「別にタブーじゃないから、新曲は(笑)」

伊奈「須藤さんは〈曲数が少ないぞ〉って言える立場だからね」

――そういう圧じゃないです(笑)。活動が停滞しなきゃいいなとは思ってましたが、なんだかんだで2024年も10本以上ライブをやりました。みんなを取り巻く環境が変わっても。

石塚「1年で3回転職するって、だいぶやで。でも、台風クラブは凹にはまるから大丈夫」

伊奈「それ、まだピンときてないわ」

石塚「つまり、停滞とか進歩とかは関係ない」

伊奈「なるほどね」

山本「今年はおれも会社辞めたし」

――みんなの生活スタイルが大きく変わった時期を経て、台風クラブとしての活動をこの先も続けられそうな感触はあります?

石塚「続けられそうかどうかはぜんぜん関係ない。8年ぐらい活動できなくても9年目にスタジオに入れる。今日が最後の練習やったかもしれん」

――(笑)。そんな中、2025年で現メンバーでの活動10周年という節目を迎えますが。

石塚「ほんまにおれは進化論的な考えがまったくなくて。いまバンドやアーティスト界隈でよく投げかけられる言葉、語られる言語は、おれらにはまったくかすらん」

――10周年とかそういう区切りはまったくピンときてないと。

石塚「でもZeppを押さえてるで」

――ぼくに内緒で? 勘弁してくださいよ(笑)。

石塚「もう2,000万払った」

――どうやっても赤字じゃん(笑)。じゃあ、10周年の抱負も展望も特にないですか?

石塚「(手を挙げて)はい、石塚です」

――お願いします。

石塚「ない!」

――ありがとうございます(笑)。伊奈さんと山本さんもないですか?

山本「……ないことはない。10年やったバンドなんて自分は一個もないから」

伊奈「おれもないわ。もう10年経ったんだって」

――感慨はある?

伊奈「感慨はないですね」

石塚「ほんまにない」

山本「10年やってたら、もっとうまくなるもんやと思ってた」

石塚「なっ! これは声を大にして言いたいけど、ジャリ臭さが売りですから。大変よ」

山本「売りなの(笑)?」

――もう10周年の話はこのへんにしましょうか(笑)。

伊奈「すみませんね。おれが台風クラブに入った時は趣味のバンド活動みたいな話やったから」

石塚「そやで。趣味ですよ。NO LIFE, NO MUSIC.よ」

山本「逆に言うと、だからずっとやれてるんですよ。命削ってやる仕事ではないから、ほんとによかったなと」

 

手が届かんもんに手を伸ばす

――さっきも少し話をしましたが、みんなの生活スタイルが大きく変わったじゃないですか。京都にいる石塚さんも、職がかなり変わったり……。

石塚「もう、転々ですよ」

――その変化とともに、曲の作り方にも変化はありましたか?

石塚「うーん。“南区”(新曲の“京都市南区”)とかはフィジカルっぽい曲を台風クラブなりにやろうと思って作ったっすね」

――それはトラックの運転手になったり、自分の車でも頻繁に運転するようになったりしたことも反映されて?

石塚「ブリッジミュートしかない、と」

――(笑)。運転するようになって聴く音楽も変わったんですか?

石塚「いや、ぜんぜん変わらん。何聴いても気持ちいいから」

――爆音だもんね(笑)。

山本「おれは車がなくなったやん。だから、まったく音楽聴かなくなったね」

石塚「やっぱり、車をちゃんと愛してあげてほしいね。道具として見ずに。こっちが言ったことは絶対車に聞こえてるから」

山本「車が動かなくなって、めっちゃバッドやったよ」

――新曲の話に戻しますが、“京都市南区”と、あと最近のライブでも演奏している“身も心も”がありますよね?

石塚「そやな。あれは信貴生駒スカイラインってとこで作った。車のトランクにアンプを積んでるから、大概ギター持ってどっかに弾きに行ってて」

――出先でもギターを触ることはありますか?

石塚「めっちゃ触る。“南区”も“身も心も”も今日やった新曲も、車乗ってった先で作った。いい停め場がいっぱいあるから」

山本「車乗りはじめてから、こいつの進歩を感じてる。風呂行くんや、とか」

――石塚さんだけはツアー先で頑なに風呂に行かなかったもんね。

石塚「湯舟嫌いやったもん。でも、冬場の露天風呂はほんま素晴らしかった」

――歌のテーマも含めて新曲は1st(2017年作『初期の台風クラブ』)の頃とはちがうものになってると思うんです。

石塚「そやね」

――その変化を山さんと伊奈さんはどう受け止めてるんですか?

山本「……難しい。“南区”も石塚がトラックの運ちゃんになってできた曲やなって思ってて。おれはそんなマッチョ系じゃないからさ」

――ブリッジミュートも……。

山本「苦手。したこともないし。難しいなあ」

石塚「いや、むずないて」

山本「むずいって。この前、〈おれらはこれにはなれへんな〉って話をしたやん? あれを“南区”に感じてまうから」

石塚「いや、台風クラブは元からそうやで。1stのときから手が届かんもんに手を伸ばすことだけをしてるから」

――伊奈さんはどうですか?

伊奈「(即答で)なんも考えてへん」

石塚「(店員に)すみません! 生を」

――“南区”や2ndの“野良よ!”のドラムって伊奈さんはあんまりやってなかったタイプですよね?

伊奈「まったく通ってなかったね。だからおれの少ない知識のなかで、〈たぶんこうなんでしょ?〉って考えてやってる。ただ、この数日でドラムが上手になる予感がしてる。ちょっと見つけたんですよね。東京に引っ越してきて3人揃わんから、それまでスタジオに1人で行くとかせえへんかったけど個人練をするようになって、ちょっとずつ上手になってきてる」

――ちなみに、今日やってた新曲も運転や旅がモチーフになってましたよね?

石塚「あれはスターバックス鴻ノ池店で作ったな。駐車場で」

伊奈「鴻ノ池ってどこ?」

石塚「奈良。奈良があちーんだよ! あちあち! 奈良奥山ドライブウェイが最高で。奈良奥山ドライブウェイ抜けたら奈良の市街地の南に出るんやけど、何か食べるにしても安くて美味いし、いい本屋もあるし」

伊奈「いろんな手段あるけど、移動ってすごい音楽と関係あるよね」

山本「じゃあ、はよ車直さなあかんな」

石塚「ただ、ロードノイズなしで家でレコード聴くとやばいで。ドラッグやで。16分(音符)のタンバリンとか聞こえっからね」

山本「家で聴くと〈めっちゃええ音やな〉ってなるよな」

 

年齢で測っちゃダメ

――ツアー先で印象に残っている場所はありますか?

石塚「別府、尾道。町の味わいがはまる」

山本「別府はそうやな。町も最高やし、友達もおるし」

――伊奈さんは?

伊奈「おれも別府ですね。町並みもよかったけど、あの風呂が好き。もともと天井が高い温泉に入りたかったんだよね」

石塚「別府で風呂入ったっけ?と思ったけど、おれ、快活(クラブ)しか行ってないわ」

伊奈「朝でもええから温泉行ったらええやん、って言ったのに」

山本「まだ抜けてへんねや。なんで風呂行かんの?」

伊奈「快活にも温泉あるのかと思った(笑)」

石塚「温泉あったで。ライオンからぶわーってお湯が出てくるシャワー室が」

山本「別府はおれ、住めるな。お風呂、映画館、ライブハウスがあったら暮らせる」

――別府といえば、THE HOLDENSというバンドがいて……。

石塚「あ~、名前聞いたことある」

――うちでリリースもさせてもらってるんですが……(笑)。

石塚「CDも買いましたよ、渋谷で」

山本「MVも作りましたよ」

――そして何度か共演もしました(笑)。そのTHE HOLDENSを筆頭に、京都のゾッキ、大阪のThe Dahliaとか、年齢が一周り以上若いひとたちと共演することも増えました。彼らから刺激を受けることはありますか?

石塚「先輩後輩感はまったくないね。ライブをすると、全員先輩に見えるもん、マジで。さっきの周年とかと一緒で、年齢とかで測るからダメ」

山本「おれは、かわいくてしゃあないですね。お金を一銭も払ってほしくない」

石塚「おしっこ行きたい」

――どうぞどうぞ。

 

ビジネスとの相性はクソ悪い

山本「逆に、須藤さんはどう思ってるの? おれらのこと」

石塚「扱いやすいんじゃないの」

山本「扱いやすないやろ?」

――まあ、扱いやすいとか思ったことは一回もないですよ(笑)。

石塚「おかしなことはせんやん。何かを飛ばすとか」

――最低限の人としてのモラルや仁義はありますよね。ちゃんと筋は通すというか。

山本「おっさんやからね」

石塚「ただ、おれらはビジネスとの相性はクソ悪い。凸凹すぎて」

――ビジネスだと思ってやってないから。四国ツアーの収支なんて笑いながら計算しましたよ、赤字すぎて(笑)。

石塚「そのゆとりがあるかないかはデカいと思う。そういう精神的にゆとりがないレーベルだと、おれらなんて叩き出すでしょ」

山本「仕事のように収支見てバンドをやれってもし言われたら無理や。おれはできへん」

――ぼくはファン目線のほうが強いから……。

伊奈「しっかりやれよ!」

石塚「ケツ叩かな辞めるぞ!」

――勘弁してください(笑)。ツアーとは別で、今年はレーベルメイトであるバンド・家主と沖縄、そして台湾にもライブをしに行きました。2ndをリリースしてからは、初めて行く土地でライブをすることも多かったなと思います。

山本「それで言うたら、今年のライブで凹んだのが2回だけあって。それが台湾の初日と岡山。おれが気にしすぎなんかもしれへんけど」

伊奈「おれなんて、それ聞いて〈えっ、そうなんだ?〉って思ったけど」

――台湾に行ったあと、6~8月の3か月間はライブをしなかったじゃないですか。岡山についてはそういったブランクが原因で、うまくいかない瞬間もあったんですかね。

石塚「他人が怖いからね。そもそも論」

――遠距離になって頻繁に集まれなくなったことは特に問題ではない?

石塚「8年空いても大丈夫やけどな」

――そうでしたね(笑)。

伊奈「(店員に)芋ソーダください」

石塚「2つください」

店員「佐藤と黒霧がありますけど、どっちにしますか?」

石塚「黒霧で」

山本「でも岡山のときは、超右腕もTHE HOLDENSもちゃんとやってて」

石塚「マジで対バン全員うまい! これだけは声を大にして言っておきたい」

山本「ほんまにうまいね。おれらはNEWFOLKで1、2を争うぐらい下手やな」

伊奈「2がわからんよ」

――でも、演奏の下手さに対してメタ的になったらダメじゃないですか。

石塚「下手さを演じはじめたら終わりやで。おれらは必死やねん」

伊奈「めっちゃ必死でライブしてるよね」

山本「それがおもろいなあ、とは思う」

――みなさんにとっての台風クラブというバンドのおもしろみってなんですか?

石塚「(即答で)エレキバンド」

――それに尽きる?

石塚「尽きる。すべてのバンドが借りてるイメージ、それそのままがずっと最高」

――伊奈さんはどうですか?

伊奈「ちょっと言うの恥ずかしくなってきてるけど、まず演奏してて楽しい曲が多い。それと、ライブで遠くに行けるのが楽しい。あとおれは9月以降、個人的にポップじゃない活動をいろいろやってて。詩の朗読とおれのドラム、とか。もしそういう活動しかやってないひとだったら、説得力がなくなるような気がしてて。上手だったらまだええかもしれんけど、おれは下手くそだし。そういうときに台風クラブみたいなポップ……だと思うんですけど、ポップなこと、筋が通ってることを一個やってるから、おれにも説得力が出るなと思ってて。それはすごい助かってる。縋ってるって言ったら言い過ぎだけど……」

――自分にとっての軸になってる?

伊奈「うん。あってくれてよかったと思ってる」

――山本さんは?

山本「なんやろなあ……。伊奈と関東に来て、それで成り立ってるバンドは初めてやな。伊奈の話とも近いけど、屋台骨みたいというか」

伊奈「バンドやライブが楽しいってより、人生の凸凹に台風クラブが存在してることで、おもしろいことがいろいろ発生してるとは思うな」

山本「そのひとつにはなってる。感慨深さはないけど、10年前の〈よっしゃベースやるわ! なんやようわからんけど!〉っていう前のめりの、とりあえずやってみる姿勢を学んだのはあるかな」

 

まともなデパートで買える商品ではない

――続いて、次の作品について少し。いまある新曲をどういうふうに録りたいとか、どういう作品を作りたいとか、考えていることはありますか?

石塚「ビリー・チャイルディッシュの……なんやったっけ? ヘッドコーツの前の……あっ、マイティ・シーザーズや。マイティ・シーザーズがめっちゃかっこよくて。一発で録りたい、っていうのはある。開放弦が鳴る感じ」

伊奈「絶対いいね」

山本「石塚はギズモスが好きよね」

石塚「ギズモスは最高。ギズモスとビリー・チャイルディッシュ。……ギズモスとビリー・チャイルディッシュ」

――2回言いましたね(笑)。

山本「ギズモスもさ、絶対真面目にやってるよね」

石塚「だから、おれらが真面目にやってないと受け取られても非常に困る。大真面目、大必死やし。アーティストらしいインタビューの言葉とかバンド界隈の言語とかを否定するのも、おれらなりの真摯さやから」

山本「たまに、お客さんに〈ちゃんとやってください!〉って言われるけどな。その日のライブがよくなかったんだろうけど」

石塚「そんな手厳しい……いいお客さんがいるの?」

――適当にやってるわけではないですからね。

石塚「おれらはマジで必死やけど、たまにマジで下手な日もある」

山本「だからずっと言ってるんやけど、スタジオ見に来いって」

石塚「むちゃくちゃうまいときあるからね!」

伊奈「スタジオは上手よ、ライブより。それは毎回そう」

山本「だから、ほんまに台風クラブを好きなんやったらスタジオ見に来いと。見に来てええって前から言うてる」

石塚「台風クラブは、まともなデパートで買える商品ではないんです。手作りやから、ほつれがあるときはある。……ないときもある」

山本「時代には合わんけどな。おれはその感じのまま続けたいな」

石塚「続けるのが目的ですらないけどね」

山本「ないない」

石塚「次のアルバムが2036年でもええと思ってる」

山本「いまってSNSとかになんでもすぐ上げよるやん。おれは映像も撮ってるけど、死んでから、終わってからどっかで見てほしくて。そういうのがええなって思ってる」

 

拾得も台風クラブも営み

――2月9日に京都の拾得でワンマンをやるじゃないですか。地元というか、台風クラブにとって所縁があり、由緒もある場所でライブをやることに関して襟を正す部分はありますか?

石塚「拾得はうれしい。ぜんぜんできへんかったし」

――台風クラブは、自分たちがワンマンライブを行うことに対してのアレルギーがあったじゃないですか。それについては和らいだ部分はあります?

石塚「それに関しては吾妻(光良)さんのトリオが拾得で2部制でやっとって、それを見て〈あっ、ぜんぜんいける〉と思って。1部と2部の合間に酒頼んで、料理頼んで、で2部が始まって……結局5,000円ぐらい使ったもん」

山本「1日で1万は消える計算やな」

石塚「2部制最高!」

――ワンマンは悪いもんじゃない、それはそれで楽しみ方はあると。

石塚「2部制にすればね」

――2人はどうですか?

山本「むっちゃ楽やで。時間もあるし、リハもちゃんとやれるし」

伊奈「たしかに細やかな気遣いはいらんもんね」

山本「おれもワンマンはそんなにやったけど、ツーマンとかスリーマンとかやっても結局ほかのバンドをぜんぜん見れへんし、じゃあもうええやんって」

伊奈「拾得で〈イナ祭り!〉(2015年)っておれが全組に出るイベントをやったときは4組出たんですけど、そのとき拾得の方は〈多くて2組、できたらワンマンをやりたい〉って言ってて。なぜワンマンがいいかというと、お客さんがその雰囲気に浸れると。なるほどって思ったな」

石塚「どこ行っても思うけど、ライブハウスで座って飯食える文化って京都だけやんな」

山本「おれ、あれは好きだな」

伊奈「あと須藤さんが言ってたけど、台風クラブはワンマンを求められるフェーズに入ってるよね。だから、それをご提供する時期ではあるかなと思ってる」

山本「台風クラブは趣味で始まったけど、流されつつやってきて、お客さんが〈ワンマン見たい〉って求めてくれるなら……」

伊奈「はい、やりますって」

石塚「頑固はよくないな。(店員に)すみませーん!」

――生ビール1つください。

石塚「黒霧のソーダ割りください」

伊奈「2つで。〈ワンマンやってください〉って言われるのは照れるよね」

山本「当初はひねくれてて、他人に言われてやるのは嫌やなと思ってた」

石塚「誰かに言われてバンドをやってるわけじゃないしな」

伊奈「石塚が〈ワンマンやるのはいいね〉って繋がったことが、いちばん説得力があると思った。石塚が繋がったんなら、じゃあやろうと」

山本「それはそうやな」

石塚「前売り予約、大変でしたよ。いまおれ、Xまったく見てないんですけど、〈1日で3万稼げる〉とか〈セックスしたい人妻〉とかのDMがすごい来てて。そのDMに紛れた前売りの人に返信する作業、マジで気い狂うかと思った」

伊奈「ちなみにワンマンの告知から売り切れまでの間、おれぜんぜん知らんくて。シェアハウスのみんなとスイパラに行ってケーキの写真を上げてて、〈なんでこいつ宣伝しないでケーキの写真上げてんだろ?〉みたいな雰囲気だったと思うんだけど(笑)」

石塚「大丈夫だよ」

伊奈「でも、それがめっちゃいいと思った(笑)」

山本「それが台風クラブ(笑)?」

石塚「ほんまそうや」

山本「おれは拾得がほんま好きで。ミーハーかもしれんけど外道とか、京都のバンドのライブといったら拾得だから。おれらはもう京都に住んでへんけど、京都のバンドの拾得のライブ盤は欲しい。だから使う使わへんはわからんけど、その日は撮影もして一応記録を残しときたいなと」

伊奈「日本最古のライブハウスとかとは別に、普通に先輩のライブを見に行ってたところだからね」

石塚「拾得も台風クラブもね、営みですよ」

 

台風クラブにプロフィールはない!

伊奈「〈ワンマンやります! すごいでしょ!〉みたいなのはサムいなって思う。〈渋谷クワトロワンマンを成功させた〉とか、おもんないバンドの経歴やで」

石塚「……台風クラブにプロフィールはない!」

――プロフィール文がないから、求められた時は毎回メンバー名とパートだけ提出してますからね(笑)。

山本「あと今年、石塚が弾き語りで出たイベント(〈OUR FAVORITE THINGS reprise〉)のチラシを見たら〈トラック運転手〉ってひと言だけ書いてあって(笑)」

――〈京都市南区のトラック運転手〉ね。

伊奈「あれはよかったね~!」

石塚「あれも表現のひとつや」

山本「そのイベントに石塚の弾き語りを初めてちゃんと見に行って、撮影もして。ソカさん(曽我部恵一)が褒めてたのはめっちゃ覚えてる。〈弾き語りってバンドとちがうことせなあかんと思ってたけど、石塚くんそのまんまやったね。伊奈くんと山さんがいないだけじゃん。これでええんや〉って」

伊奈「おれは聖蹟桜ヶ丘でのライブ映像を見せてもらって、めっちゃええやんって思った。アコギの弾き語りに目覚めたんちゃうかと思ったな」

石塚「目覚めてないよ。まったく目覚めてない」

伊奈「2人がおらんだけの台風クラブをあえてやろうとしたのかと思ったんだけど、そこまで考えてない?」

石塚「ない。だから弾き語りは無理なんです」

山本「でもソカさんは打ちのめされてたよ。〈台風クラブがまた見たくなるもんね〉って」

――つまり、石塚ソロのライブでバンドが浮かび上がってきたってことだ。

石塚「やっぱバンドがいちばんかっこええな」

山本「悩んだときソカさんがいつも助言くれるんやけど、今年も会社辞めるときに悩んでて、ソカさんとちょうど会ったときに〈ライブ映像を出そうと思ってるんです〉と相談したら〈やったらいいじゃん! やりなよ!〉って言ってくれて」

――曽我部さんのそういう姿勢は、ぼくもめちゃくちゃリスペクトしてます。

山本「ソカさんとか鮎川(誠)さんとか……」

石塚「正、プラスのエネルギーがすごいよね。おれは一生ああならん」

伊奈「なれへん」

山本「ならん」

――自分がレーベルをやってても、やっぱり曽我部さんのROSE RECORDSのあり方は意識します。〈やりたいことを、やりたいように、とりあえずやってみる〉という姿勢は大事ですね。

石塚「ソカさんのあの軽さはすごいよな。2004年頃のDIYに振り切ってるソカさんや曽我部恵一BANDもすごいし、それを〈置いときまして〉ってふっと抜けるときもある。それがすげえいい。ソカさんのエッセイで〈エアコンを消して窓を開けると、ふっとカーテンが揺れる、風が入ってくるのがいい〉みたいな、すごいええ一文があって。ただ、本人は〈おれ、ガンガンクーラーつけてるけどね!〉って」

――(笑)。

山本「おれもソカさんの映像撮らしてもらってて。“満員電車は走る”がめっちゃ好きでさ」

石塚「最っ高やんな」

山本「あの頃のソカさんは見た目もどんどん変わっていって、ソカバンの3rd(2012年作『曽我部恵一BAND』)のときのMVを見てめっちゃ感動したな。この前撮らせてもらったときも〈ほんとこのひとええな〉と思った」

――曽我部さんには音楽だけじゃなく、人生観的な部分でも影響を受けつづけてますね。

石塚「生き方やね」

山本「好きなバンドは世代が離れすぎてて近寄られんし、山口冨士夫とかはみんな死んでるし。ソカさんだけなんだよな、リアルタイムで話もできてリスペクトできるひとは」

――ずっと同じ目線だけど常にちょっと先にいて実践をしつづけている、みたいな感じですよね。では、ぼくも飲んだり食べたりしたいので、そろそろこのへんで締めたいと思います。

石塚「まったくまとまらんなあ!!」

 


LIVE INFORMATION
台風クラブ 定期演奏会 in 拾得
2025年2月9日(日)京都 拾得 ※SOLD OUT
開場/開演:17:30/18:30
出演:台風クラブ
前売・当日:3,000円

 

NEWFOLK presents
“utanoyukue vol.3” -特別編-

2025年3月22日(土)大阪・千日前 味園ユニバース
開場/開演:15:15/16:00
Live:台風クラブ/本日休演/前野健太/家主/天国旅行(OPENING ACT)
DJ:入岡佑樹(Super VHS)
前売チケット:4,500円
学生チケット:3,500円
(共にドリンク代別途必要)
※小学以下無料

■チケット
一般販売(2025年2月8日(土)10:00〜)
イープラス:https://eplus.jp/utanoyukue-vol3/