天国旅行
(左から)室井晴人(ベース)、田澤寿詩(ギター/ボーカル)、今村岳(ドラムス)、室崎智也(ギター)

須藤朋寿が主宰するインディレーベル、NEWFOLK。2019年2月にスタートしてから5年が経ち、ラッキーオールドサン、田中ヤコブと家主、台風クラブ、山二つ、工藤将也などなど、多彩なアーティストの優れた作品をリリース、所属アーティストを増やしつつ拡大を続けている。Mikikiは、5周年を記念してNEWFOLKの特集をお届けする。

初回はNEWFOLKのニューカマー、北海道・札幌で活動する天国旅行のアルバム『くたばれ』(2022年)、『TOUGHNESS ROMANTIC』(2024年)がCD化されたことを記念する対談を掲載。現在、本日休演とフー・ドゥ・ユー・ラブの新作を制作中であり、ラブワンダーランドなどでも活躍する岩出拓十郎と、天国旅行のボーカリスト/ギタリストである田澤寿詩が語らった。近年、交流を続けてきた2人の対話から彼らの表現のコアに迫った。

★NEWFOLK設立5周年記念の記事一覧はこちら

天国旅行 『くたばれ』 PersianRug/NEWFOLK (2022)

天国旅行 『TOUGHNESS ROMANTIC』 NEWFOLK(2024)

 

天国旅行の結成、NEWFOLKへの愛と偶然の出会い

――まず、天国旅行について教えてください。元々は田澤さんの宅録プロジェクトで、2018年に始まったと聞いています。

田澤寿詩「そうです。1人でやってる感じにしたくなかったので、勝手にバンドでやってる風に見せてました。実質的には1人でやってて、iPhoneのGarageBandで録音した曲をCD化したのが1人での活動の最後です」

――その後にベーシストの室井晴人さんが加わり、バンドとして活動していったと。個人的な活動で完結させるつもりはなかったんですね。

田澤「札幌って今はバンドをやってる人が多いイメージがあると思うんですけど、当時は自分のマインドに合う人、一緒にやってくれそうな人を知らなくて。ライブハウスでちょっとずつ声をかけていってメンバーを集めました。1stアルバム(2021年作『キッズ・アー・オールライト』)を作った時は今の4人でしたね」

――活動を始めた頃はコロナ禍が丸被りでしたが、影響はありましたか?

田澤「ライブをたくさんやってたわけでもなかったので、逆に自分たちがやることに集中できましたね」

――ちなみにNEWFOLKの主宰・須藤さんが天国旅行の作品をリリースするに至った経緯は?

須藤朋寿「家主のアルバム『DOOM』(2021年)の制作中、タイトルの候補に〈遠投〉というワードがあって、同じタイトルが他にあるか調べたんです。そしたら天国旅行の1stに“遠投”という曲があって、聴いてみたら〈知らないバンドだけどいい曲じゃん〉という話になったんですね。

その後、2022年に札幌で台風クラブと家主でツーマンライブをおこなうことが決まった際、田澤くんから〈僕ら、めっちゃいいライブするのでオープニングアクトとしてぜひ出させてください!〉ってDMが突然来たんです。時間の都合もあって出てもらうことは叶わなかったんですけど、2ndの『くたばれ』を聴いて〈やっぱりめっちゃいいじゃん!〉と思いました。1stより磨きがかかってて個性を獲得しつつあるなと。さらに点と点が繋ったんですけど、UlulUのメンバーにも〈天国旅行っていいバンドがいるんです〉と言われて。

それからライブで一緒になったり企画で呼んでもらったりと交流が生まれて、NEWFOLKの4周年イベント(2023年)に出てもらいました。それで彼らの手伝いや手助けをできるんじゃないかなって思いが、そういう交流の中で芽生えていきました」

――田澤さんが売り込みかけたのは台風クラブと家主が好きだったからですか?

田澤「そうです。一番はNEWFOLKが好きだったからで、僕らのことを知ってくれないかなってずっと思ってたんですね。考えてるだけだったらもったいないと思って連絡してみました」

 

本日休演
(左から)樋口拓美(ドラムス)、有泉慧(ベース)、岩出拓十郎(ギター/ボーカル)

他人事と思えない文章だったんです

――岩出さんと田澤さんの出会いは4周年イベントですか?

岩出拓十郎「そうですね。楽屋で会って、誰だかわかってなかったけど天国旅行って若いバンドの人なんだって認識して。

生活の話とかしたよね。田澤くんは若いのに子どもがいるって聞いて〈やるな〉と思った(笑)」

田澤「〈どんな音楽が好きなの?〉と岩出さんが聞いてくれて、僕は〈ビートが強烈なやつが好きです。ジェームス・ブラウンとかジェームス・チャンスのコントーションズとか〉って言ったんですよね。でも〈奇を衒って変なこと言っちゃったな〉ってあとで後悔して(笑)。

本日休演はもちろん元から好きで、その時のライブを見て本当にいいバンドだなって思いました。人生で一番よかったライブの一つですね」

岩出「嬉しいな。あの時のライブはよかったね。あれを超えられないわ(笑)。

俺は天国旅行を見て〈バンドだな〉って感じました。ギタリストが2人いて不況和音が印象的だったけど、歌はしっかり歌ってて、かっこよかったから〈やるな〉って(笑)。あと田澤くんは豊田道倫さんのアルバムについて書いた記事にすごく反応してくれて」

田澤「あの記事は書いてあることにわからないことがない、ぐらいの感じでした。バンドをやってる身近な人が書いた文章なのに全部入ってきて〈この言い方、僕しか使わないんじゃね?〉みたいなことが書いてあって、すごく親近感が湧きました」

岩出「嬉しくて〈よくわかってるやつだな〉って思いました(笑)」

田澤「勝手ながら他人事とは思えない文章だったんです」

 

札幌での共演で深まった天国旅行と本日休演の絆

――今年3月に天国旅行と本日休演でツーマンライブをやっていますね。

田澤「NEWFOLKの4周年ライブがめっちゃよかったので、〈絶対一緒にやりたい〉と思って声をかけさせてもらいました。

あのツーマンは2日やったのもよかったです。1日目は弾けそうなスリルがある感じでスパイ映画みたいだった。2日目は〈全力少年〉って感じで駆け抜けて。北海道の友だちに本日休演を見てほしかったんですけど、みんな〈めっちゃかっこいい〉って言ってくれて嬉しかったですね」

――本日休演は北海道でのライブは初?

岩出「初でした。雪がすごくて大変でしたね。長靴が壊れちゃって買い直したり、機材を入れたスーツケースのタイヤがダメになって転がせなくなったり。

けどライブは楽しかったです。会場には知らない人しかいなかったし、1日目は疲れてたこともあって探り探りだったけど、2日目はスパークして。天国旅行のみんなとも1日目に仲よくなって打ち上げで飲んで〈明日もこの人たちとライブなんだ。嬉しいなあ〉〈青春してんじゃん、俺ら〉とか、そういう気持ちでやれました。俺と有泉(慧/ベース)はサウナにも行って、メンバーみんなが店の前まで送ってくれたのを覚えてます。

実は無理言って俺のソロで3日目もライブを組んでもらったんです。千歳の料理屋でやって、しかも田澤くんたちの伝手がある店でもなくて(笑)。人は全然来てなかったけど天国旅行のみんなが見にきてくれました。店主の人がシチューを出してくれたけど不思議な距離感だったよね」

田澤「職人みたいな人で親しげに接してこないけど、シチューは出してくれる距離感が面白かったですね」

岩出「ライブのあと僕は函館に行って鈍行で帰ろうと仙台まで行ったんですけど、時間がかかりすぎて疲れたから諦めて新幹線で帰ったんです(笑)。それを含めて思い出に残ってるし、ほんと楽しかった。またやりたいね。今度フー・ドゥ・ユー・ラブで対バンする予定があるから、それも楽しみ」

――本日休演よりフー・ドゥ・ユー・ラブの方が音楽的に天国旅行に近い気がしました。

岩出「どうだろう? 俺は『TOUGHNESS ROMANTIC』の1曲目の“エリーの嵐”が好きで、あのコード感はほんと好きな感じ。そのへんは本日休演に近いかなって思います」

田澤「どっちも親近感があるし、影響を受けてる部分もあって。曲によって〈これはフー・ドゥみたいでいいな〉って勝手に感じたり、本日休演を参考にしたりする時もあります」

岩出「でも似ない方がいいよ」

田澤「真似たいとは思ってないんです。2組ともスタイルがあるし、一緒の時代にバンドをやれてよかったって思ってます」

岩出「ありがとう」

 

田村隆一の人間的な詩からの影響

――今回、天国旅行『TOUGHNESS ROMANTIC』のCD化に際して岩出さんがライナーノーツを書いているんですよね。

岩出「どんなことを書いたっけ(笑)? 北海道ツアーが楽しかったこととメンバーの人柄がいいこと、あとツアーで見た光景や、CDを聴いた時に札幌の景色が見える気がすることとかを書きましたね。

やっぱ1曲目が好きで、〈予言めいた悲しみ〉って歌詞がすごく好きなんです。自分の生活にも心当たりがあって、不協和音を含んだロックでこういうことを歌ってくれてるのは救われるなって。そういうことも書きましたね」

田澤「あんな風に言葉にしてもらったことはないので、ほんとに嬉しくて、めちゃくちゃ感謝してます。子どもが大きくなったら読んでほしいって思ってます」

――天国旅行は田澤さんの歌詞が独特だと思っているのですが、そのあたり岩出さんはどうですか?

岩出「俺も聞きたかったんだよね。田澤くんが歌詞をどうやって作ってるのかって。気になります」

田澤「逆に僕も聞きたいです(笑)。自分の場合、歌詞は最後にできるか、作ってる時にもう入ってるかですね。弾き語りのアイデアの段階でできてる曲もあれば、セッションしながら曲も歌詞も一気に完成する曲もあって。

僕は言葉のリズムが変になるとすごく嫌で、2ndを作ってた頃からそれを一番気にして大事にしてます。あと日常的に思いついた変な感じの言葉、〈いいな〉って思った言葉をメモってます」

――天国旅行の歌詞って固有名詞が出てきたり具体的な情景描写があったり、岩出さんの歌詞とは結構ちがいますよね。

岩出「俺は……よくわかんないんですよね(笑)。曲が先で歌詞を最後に入れて完成させるから、全体を通して内容がある感じにまとめちゃいたくなる。だから、わざとらしく作ってる感じになっちゃうんです」

田澤「そこは意識的、意図的なのかなって思ってました。完全に自分の世界のものだけにしないようにしてるのかなって。そこがポップス的でもあって……絵本的というか。岩出さんの作る曲はスタンダードだなって思います。僕もスタンダードなものを作りたいって思ってるから、勝手に共感してたんですよね」

岩出「俺にはそれしかできないのかもしれないけどね。あと最近、歌詞のテーマがほとんど恋愛だけになってきてて、6年ぐらい前から同じことを歌ってる気がする」

――岩出さんの歌詞や曲名はシンプルな言葉が使われてるから普遍的に感じるというか、岩出拓十郎という人間の個性から解放されているように思います。

田澤「わかります。〈個性からの解放〉ってめっちゃいい言葉ですね。

岩出さんに聞きたかったんですけど、僕はやりたい音楽が常に変わるんです。その時々で音楽的に影響を受けるアイドル的存在がいて、『TOUGHNESS ROMANTIC』だったらディアンジェロとか。でも歌詞に関しては影響を受けるもの、いいと思ってるものが変わらないんです。岩出さんも色んな形の音楽をやってて、でも歌ってることは変わらない感じがする。言葉が常に軸を持ってる感じを受けるんですけど、意図的ですか?」

岩出「あ~。歌詞に対する意識や言葉遣いが変わった時があるんだよね。ちょうど埜口が死ぬ前ぐらいから田村隆一って詩人にハマって……※」

※本日休演のキーボーディスト、埜口敏博は2017年に死去した

田澤「えっ! 僕も好きです!」

岩出「寝る前とか夜中に真っ暗な中で、スマホで田村隆一の詩を読んでた時期が続いてて。田村隆一の詩って〈虹色の渚〉とか〈秋の光〉とか謎の言葉が色々出てくるんだけど、〈こっちの詩でこう言ってるからこういう意味かな?〉ってパズル的に解釈できるんだよね。

俺は歌詞で〈夢〉って言葉をよく使ってて、ほぼ全曲に出てくるかもしれないんだけど、そういう情景が何かしら軸になってるかも。田村隆一はデカかったかもね」

田澤「僕は〈空から小鳥が墜ちてくる/誰もいない所で射殺された一羽の小鳥のために/野はある〉(『幻を見る人』)というのを読んだ時に衝撃を受けて。悲しいけど傷だらけな真実の感じがするし色んなものを含んでて、それを隠そうともしてない感じがめっちゃ〈人間〉ですよね。人間が書いてるなって。前野健太さんも〈田村隆一が好き〉って書いてて納得した覚えがあります」

岩出「俺は友だちと3人ぐらいで鎌倉へ田村隆一の墓参りに行ったんだよね。墓場が広すぎてどこにあるかわからなくて、1時間ぐらい探して自分だけ諦められなくて最後に見つけたり、すごくドラマがあった日だった。帰りに見た夕日が綺麗だったり、一年中クリスマスをやってる変な店に入っちゃったり、横浜中華街で食べた食い放題がやけに安くて〈田村隆一がサービスしてくれたんじゃないか〉って思ったり(笑)」

 

舞城王太郎とジョジョ、自分が持つ唯一の球を投げるスタイル

――田澤さんの歌詞の幹になる部分や影響を受けた人を教えてもらえますか?

田澤「言葉の面では、舞城王太郎が使う日本語がすごくしっくりくるんです。読んでて単純に面白いし、ぶっ飛ばして物事が進んでくんですけど、文章がずっと同じ顔をしてる感じなんですよね。物事がすごく速いスピードで進むんだけど、最終的に伝えたいことをちゃんと持ってるというか。エンタメ性もスピード感もあるけど、それと真逆の魂も持ってて不思議なんです。

あと僕は『ジョジョ(の奇妙な冒険)』がめっちゃ好きです。『ジョジョ』って変なことをしようとしてるわけじゃなくて、〈それしかない〉ってスタイルを持ってて自分の球を投げてるだけなのが好きで。僕もそうしたいと思ってるし、岩出さんもそうかなって思ってます。

他人からしたら変なスタイルかもしれないけど、そいつが持ってる唯一のスタイルでやるっていうのが好きなんですよね。ゆらゆら帝国とか。そういうのを持ってる人に憧れるし、それが解放的だなって感じる。小学生の頃、自分は運動も勉強もできるわけじゃなかったから〈僕のことをやるしかない〉って思って、そういうものに惹かれていきました」

 

人間の普遍的な〈めちゃくちゃ性〉

――自分が持っている唯一の球を投げるスタイル、というのは2組にとって重要な話ですね。

田澤「僕、建築関係の仕事をしてて。ある時、遠い現場から車で帰ってて、おじいちゃんを乗せてたんです。その時、ラブワンダーランドのアルバムをかけてたんですよね。そしたら、おじいちゃんがノってきて、ペットボトルで膝を打ち鳴らしはじめて。でも、おじいちゃんだからリズムが取れないんですよね」

――ラブワンダーランドはレゲエですしね(笑)。

田澤「それで、人間って年老いてくと最終的にめちゃくちゃになっちゃうんだって思ったんです。人間って生まれた時もめちゃくちゃで、子どもの頃もそうじゃないですか。大人になるにつれて〈めちゃくちゃ性〉を抑えて過ごすようになるけど、結局、人間って生まれてから死ぬまでめちゃくちゃだって思うんです。

良い人とか悪い人とか、犯罪者とか聖職者とかミュージシャンとか、色んな肩書きがあるけど、実際、誰も枠に収まることはできないなって。そういう、人間がそもそもめちゃくちゃだってことは、全員に共通してると思うんです。

それで、本日休演のライブを見た時もめちゃくちゃだったんですよね」

岩出「(笑)」

田澤「ほんとにプリミティブな衝動があって、僕はそれを普遍性って言うんじゃないかなって思いました。〈一般的である〉ってことと真逆なんじゃないかなって。

僕はそういう表現をやりたいと思ってるし、そういう人間の普遍的な〈めちゃくちゃ性〉がリアルに伝わってくる表現を見られるのが一番嬉しいんです。それが〈生〉、生きるってことかもしれないし、そういうのをやるしかないってずっと思ってるんですね。〈生きる〉なんて言うと大袈裟だけど、でも壮大なイメージじゃないんです」

岩出「……感動したわ」

田澤「(笑)。それをスカムと言うのかもしれないし」

岩出「なるほどね。スカムはいいよ(笑)」

田澤「この前、岩出さんたちと下北沢のカレー屋さんに行った時、ジェームス・チャンスが死んじゃってすぐの頃で、岩出さんに〈ジェームス・チャンスは最近もMVを出してた〉って教えてもらって」

岩出「あれヤバいよね(笑)。最高」

田澤「手を前にやったりうしろにやったり、足をちょっと上げたりしてるだけの映像で。めちゃくちゃになっちゃってて悲しいけど、悲しすぎて笑っちゃう感じが衝撃的でした(笑)。あの面白さが本日休演にも通じるって思ったんです」

岩出「最終的にああなれたらって思ってるから(笑)。あそこまで行かないとね」

――田澤さんが言った〈めちゃくちゃ性〉は面白いですね。私たちは社会的なペルソナやキャラクターを作り上げて他人とコミュニケーションを取り、社会生活を送っていますが、実際、内面では色々なものがとぐろを巻いている。天国旅行の音楽は、そういう内側でとぐろを巻いている混沌としたものを表現している感じがします。

田澤「そうなってたら嬉しいですね」

岩出「2ndの1曲目の“激突”は、一音聴いただけでそんな感じがしましたね」

 

音へのこだわりを貫く本日休演の新作

――ところで現在制作中だという本日休演の新作はどんな感じになりそうですか?

岩出「自分でミックスやボーカル録りもやろうと思ってます。レコーディングスタジオだと時間を気にしたり、遠慮しちゃって〈これでいいか〉ってなったりするから、そういうのがないからいいかなって。自分が出したい音の質感はあるけど、それをエンジニアの人に言葉で伝えるのが苦手で、一回自分でとことんやりたいんですよね」

田澤「最近の本日休演の曲はパンクな感じじゃないですか?」

岩出「そういう曲もあるね。でも、どうなるか俺も全然わかんないわ(笑)。メンバーが3人になって余計な音を入れないでいいんじゃないかって気持ちにもなったし」

田澤「3ピースってめっちゃかっこいいと思います」

岩出「サンキュー」

 

メタなアートではない純粋なバンドへの回帰

――最近の本日休演はどんなコンディションなんですか?

岩出「メンバーが関東に移り住んで練習をぎゅっと密度濃くできるようになったから、息が合ってきてますね」

田澤「いいな~」

岩出「天国旅行のメンバーはみんな札幌でしょ(笑)?」

田澤「いや、息が合うってすごくいいなって」

岩出「天国旅行は息が合ってるでしょ」

田澤「そうですか? 最初は全然合わなくて、苦しくて息ができなくて水面に上がれない感じでした。最近はガッシリしてきてやりやすいですね」

岩出「バンドとして〈この4人だな〉って感じがするけどね。アー写がいいよね。あれ、アー写を撮る時にマックを買ってきたってこと(笑)?」

田澤「いや、マックを食ってる時にアー写を撮ったんです(笑)」

岩出「あれはいいよね。それとバンドって長くやるのも大事だし」

――本日休演は10年以上続けているのがすごいですよね。同世代で続けているバンドは少なくなってきましたし。

岩出「バンドって非効率的だし、難しいですよね。自分だけでやった方がいいのにって思うこともありますが、なかなかバンドを超えられない」

――形を変えながらも本日休演が活動を続けているのはすごいことだと思います。

岩出「1人だとさみしいですからね」

田澤「3人でステージに立った時、バーンって決まってる感じが自然でかっこいいと思います」

岩出「本日休演のライブって緊張するんだよね。フー・ドゥはやることが決まってるし、あんま緊張しないんだけど、休演は何が起こるのかわからなくて。自分でコントロールできないから怖い。盛り上がらなくて微妙な感じになったら落ち込むし、未だに安定してないんです」

――埜口さんがいた頃から本日休演のライブは危うくてスリリングでしたよね。

岩出「あいつが〈どうにかしなきゃ〉って思ってやってくれてたのかもしれないけど、有泉と樋口(拓美/ドラムス)は全然そういうことをしてくれないから、〈俺がやるしかねえ〉って色々やっちゃうんです(笑)」

田澤「こないだのライブでも岩出さんが有泉さんに突撃して、めちゃくちゃになりながらベースを奪ったのに、お客さんにすぐ渡しちゃうっていう(笑)。何がしたいのかわからなくて、めっちゃ面白かった。そういう跳躍力、なんかやっちゃう感じに勝手に共感してます。

僕は曲作りでも自分の中で笑えるか笑えないか、スベるかスベらないかギリな感じが面白いと思うんですよね」

岩出「でもメタでスノッブになりすぎるのもよくなくて、俺らは一時期そっちに行きかけたので。メタ的なアートの型にハマっちゃった時期もあったからこそ、純粋なバンドに戻れたのもあります」

――たとえばジェームス・チャンスとかノーウェーブ系のミュージシャンには、ひねくれているように見えて〈不器用だからこれしかできない〉というピュアさ、まっすぐさを感じるんです。

岩出「たしかに。やりたいことに芯が通ってて、単純にかっこいいですよね。音に強さがあって、それまでに生きてきたことが表れてて。小手先でやってないってことなのかな?」

田澤「最近、自分は天国旅行を受け入れるしかないって漠然と思ってますね」

岩出「元すばらしかの加藤(寛之)くんから聞いたんだけど、真のバンドは人生で一回しかできないっていうからね。だから田澤くんの真のバンドが天国旅行なんじゃないかな」

 

ニヒルにはなりたくない

――最後に岩出さんから田澤さんに聞きたいことはないですか?

岩出「子どもは元気?」

田澤「めっちゃ元気で、毎日『ジョジョ』のオープニング曲を歌ってます(笑)」

岩出「子どもを育てるってどんな感じ?」

田澤「リードして育ててる感じはしないですね。並列に走ってる感じです」

岩出「影響を受けたりする?」

田澤「子どもがアンパンマンのちっちゃいギターを首から提げてるのを見た時は〈かっこいいな〉って思いました(笑)」

――(笑)。でも天国旅行の表現から〈家族〉〈父〉〈子ども〉みたいな要素は感じないんですよね。

田澤「自分がやることは色んなものから隔絶されてる感じがあるんです。変な言い方かもしれないけど、悪いことをしてる感じもするんですよね。やっちゃいけないことをやってるんじゃないかって。社会性から逸脱した行為がバンドの根幹にある感じがして。マインド的には普通に生きてる中でやってることじゃないんです」

岩出「なるほどね。でも、それって大事だよね」

――はぐれものであるというか。

田澤「友だちが言ってて、〈めっちゃわかるな〉ってずっと共感してる言葉があって。〈犯罪者みたいな顔した美容師にしか髪を切られたくない〉っていう」

――……どういうことですか(笑)?

田澤「チームで何かをやる時、他人と何かをやる時は何でもやっちゃう可能性があるやつとの方が楽しいと思うんですよ。だから、生ぬるいカットをされるくらいなら最終的に髪がぐちゃぐちゃにされるかもしれない美容師に切られた方がいい、っていう極端な意見なんです。その方が生きてる実感が得られるんじゃないかって。

それが自分にとってはバンドで、ある程度社会から隔絶されてる〈めちゃくちゃ性〉があるんですよね」

――なるほど。私は天国旅行と本日休演の表現から〈結局、人は一人であって、わかり合えないんだ〉ということを感じるかもしれません。

岩出「でも、わかり合いたいですね。ニヒルにはなりたくない」

田澤「たしかに。ニヒルにはなりたくないですね」

――なるほど。天国旅行と本日休演の本質に迫れた対談になった気がします。本日はありがとうございました。

 


RELEASE INFORMATION

天国旅行 『TOUGHNESS ROMANTIC』 NEWFOLK(2024)

■デジタル
リリース日:2024年5月15日(水)
配信リンク:https://linkco.re/G9mACYb5

■CD
リリース日:2024年8月7日(水)
品番:NFD-012
販売価格:2,000円(税込)

TRACKLIST
1. エリーの嵐
2. ダウン・ダウン
3. 八!!
4. 背中のブラザー
5. 転校生
6. タフネス・ロマンチック
7. デストロイヤー

 

天国旅行 『くたばれ』 PersianRug/NEWFOLK (2022)

■CD
リリース日:2024年8月7日(水)
品番:NFD-013
販売価格:2,000円(税込)

TRACKLIST
1. 激突
2. カフカ・スー
3. 太陽の少年
4. hey?
5. ベルリン
6. 予感
7. 笑うな

 

LIVE INFORMATION
本日休演企画「夢 vol.2」

2024年12月14日(土)東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
開場/開演:18:30/19:00
出演:本日休演/天国旅行
予約/当日:3,300円/3,800円(+1 DRINK)
予約:http://haremame.com/reserve/
公演ページ:http://haremame.com/schedule/78329/

 

■天国旅行
最終回象天国
2024年11月16日(土)北海道・札幌 brew it
開場/開演:20:30/21:20
出演:zo-sun park/天国旅行
チケット:2,000円

天国注射 × 天国旅行
2024年12月1日(日)大阪・難波 ベアーズ
開場/開演:19:00/19:30
ライブ:天国注射/天国旅行
DJ:ast midori 
当日/23歳以下:2,500円/2,000円

 

■本日休演
Hammer Head Shark × SuU SPLIT TOUR 『SLOW SWIM』
2024年11月17日(日)京都 nano
開場/開演:18:00/18:30
出演:Hammer Head Shark/SuU/本日休演
前売り:3,500円(+D)
一般販売:https://w.pia.jp/t/hammerheadshark-suu/

“utanoyukue” vol.2
2024年11月23日(土・祝)東京・渋谷 La.mama 
開場/開演:18:00/18:30
出演:本日休演/Khaki
チケット:e+ https://eplus.jp/sf/detail/4189650001-P0030001

 

■天国旅行
X:https://x.com/TENGOKU_RYOKO
​Instagram:https://www.instagram.com/tengokuryoko
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCzkvyCi-Jx0NojfmrPpJpcw

■本日休演
オフィシャルサイト:https://honjitsukyuen.wixsite.com/qyen
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