(左から)秋田温奏、野﨑千鶴、金子凌大、河上憲将

グローカルミュージックの想像力というのは、何も地方や郊外の専売特許ではなく、都市の真ん中であっても花を咲かせるものだ。首都・東京に限れば、ひとつ前のディケイドではceroやシャムキャッツのような東京インディーの役者たちが次々に登場し、さらに遡れば渋谷系という今や世界中の音楽マニアが認知しているムーブメントがあった。数多のプレイヤーが入り乱れることによって発生する交雑を彼らは歓迎し、独自のシーンを築いていた、らしい。

座布団忍者は、それを知っていた。2025年に早稲田大学の軽音サークルで結成された現役大学生による4人組バンド。3人のソングライターを有し、レゲエにロックステディからブルーアイドソウルにチーチャ/クンビアetc.と興味の赴くままに音楽を手に取りながら、日本語詞のキャッチーなメロディーでそれらを料理する若き才能。須藤朋寿率いる〈NEWFOLK〉よりデビューアルバム『Still, You Dance』を発表し、下北沢・BASEMENTBARでのリリースパーティーはソールドアウトした。こうやって並べると眩く映るかもしれないが――実際、ステージの上の彼らは眩い――座布団忍者は澄み切った眼で自分たちの鳴らす音を実直に観察している。自意識と照らし合わせて、理知的に、2026年の東京における〈ポップミュージック〉の在り方を考えながら。

『Still, You Dance』という大変に聴き馴染みよく、それでいてステップをさりげなく誘う作品の裏側に張り付いているフィロソフィーは、とてもではないが一言で説明できない。以下にお届けするのは、そんな怪作を生み出した座布団忍者の初となるインタビューだ。先に言っておくが、少し長くて、どこか拗れている。しかし〈ワールドミュージック〉というラベルとの距離感と〈東京の大学生〉という4人の本人性を、『Still, You Dance』という泣きながら微笑みかけるポップアルバムの栞として記憶の隅に留めておくことは、あなたのダンスを妨げることと全くイコールではない。

断言してみよう、少し頭でっかちの方がダンスフロアは楽しい。疑問に思うならば、今日は『Still, You Dance』という3つの単語を覚えてもらうだけで結構。ただ、その呪文はついて回る。そしてあなたは必ず帰ってくる。彼らの用意した、高温多湿の天国に。

座布団忍者 『Still, You Dance』 NEW FOLK(2026)

 

バラバラでもない4人の出身

――早稲田大学の軽音サークルで結成されたそうですが、みなさんの出身はバラバラですか?

秋田温奏(ギター/ボーカル)「僕は茨城です。今日も土浦から来ました」

金子凌大(ドラムス)「高校まで土浦にいて、秋田くんともその時に知り合いました」

野﨑千鶴(ベース/ボーカル)「私は東京出身です」

河上憲将(ギター/ボーカル)「僕も東京、聖蹟桜ヶ丘。そんなにバラバラじゃないけど、大丈夫ですか?」

――大丈夫です(笑)。とはいえ、茨城出身の方が関東の大学サークルで結成されたバンドに2人いるのは珍しいというか。

秋田「同郷の田山ショーゴっていうシンガーソングライターと地元にいる頃から交流があったんです。それで大学に入った時に早稲田のサークル事情を聞いて、今入っているRock Climbingや中南(中南米研究会)をオススメしてもらいました。知らないサークルでしたけど、高校の頃からダブとかロックステディが好きだったので、何とか馴染めました」

金子「僕は秋田くんと同郷だけど高校は別で、顧問不在の軽音同好会で出会ってるんです」

秋田「当時は上手いドラマーが自分の高校にいなかったから(金子)凌大さんを呼んでたんです。それで〈大学でバンドをやろう〉って決めた時、別のサークルから凌大さんを引っ張ってきました」

――当時から金子さんは上手かったんですか?

秋田「上手かったですねぇ。○○の人に教わっててね」

金子「それ言っちゃダメじゃない(笑)?」

――〈某有名バンド〉としておきましょう。

金子「(笑)。高校に入ってドラムを始める時にレッスンの先生を探して、そこで色々教えて貰ったんです」

秋田「ポリスを聴いていて、レゲエのフィーリングもわかるドラマーって茨城の高校生にはいなかったんです。凌大さんは(スチュワート・)コープランドも好きで、かつ手堅いドラムを叩く人で。なので大学に入ったら誘おうと決めていました」

――秋田さんはどうやってダブやロックステディを知ったんですか?

秋田「最初はポストパンクが好きだったんですよ。ポップ・グループとかスリッツとかオレンジ・ジュースを聴いていたら、ある日デニス・ボーヴェルというプロデューサーの名前がそのレコードに書いてあることに気づいたんです。それでUKダブを知って、レゲエやロックステディを辿ってハマりました」

 

中南米研究会の楽しさと居心地のよさ

――それで中南に行き着くんですね。ラテンミュージックを専門にしているという点で特殊なサークルに見えますが、東京出身のお2人はなぜ中南に入ったんですか?

河上「僕は入るつもりじゃなかったんです。ソウルとかファンク寄りの軽音と、お笑いサークルに入ろうと思ってて。でもお笑いの方は一瞬で入会が締め切られて、もう一個の軽音も元気がなくて……それで高校の先輩が入っていた中南を選びました」

――なるほど。

河上「中南って、入る前からレゲエやラテンが好きな人が全員ではないんです。 僕もボブ(・マーリー)ぐらいしか聴いてなかったし。でも居心地がよかったし、新入生歓迎会のジャムでOBのSouth Penguinの磯部(拓見)さんが叩いていたり、初めてのフィールに触れられて、楽しかったんですよね」

秋田「野口(文)さんもいたよね」

河上「そうそう、一緒に“Black Cinderella”演ったわ」

――中南に入る前はその辺りも知らなかった?

河上「そうです、中3〜高1くらいはオルタナ小僧ですよ。ライドをマジで聴いてました」

――ライドを、マジで。

河上「いや、今も本気で好きですよ(笑)。ただ当時も並行して、スタイル・カウンシルとかは聴いていて。あとは幼少期からソウルミュージックは好きでした。スタカンの音楽にはボサノバの要素も入ってるし、その後に繋がっているはず」

――野﨑さんはなぜ中南に入ったんですか?

野﨑「早稲田に入学して軽音サークルを探していた時、中南のOBにSummer EyeとかCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINがいると聞き、Instagramを見たらめっちゃ楽しそうで。

私自身、高校の頃はゆらゆら帝国とかを聴いていたんですけど、軽音学部にそういうのを好きな人が誰もいなくて。コンパクトエフェクターを持っているギタリストが1人しかいなかった」

河上「え、全員アン直※?」

※〈アンプにギターを直接繋ぐ〉の略

野﨑「そう、全員アン直」

秋田「ウィルコ・ジョンソンだ。ピックは持ってた?」

野﨑「持ってた。NUMBER GIRLみたいな音でVaundyのカバーをやってた」

(一同爆笑)

――カッコいいじゃないですか(笑)。

野﨑「そう、ある意味、尖った人ばっか……。それで〈大学に入ったら面白いサークルに入りたいなー〉と思ってて、中南を見つけました」

 

何が好きかより何が嫌いかで自分を語れよ!

――そもそも、みなさんの趣味って重なってるんですか?

金子「割と合ってはいるかと」

河上「お寺とか好きだよね」

野﨑「うん、好き」

秋田「そうね。まぁ音楽の趣味は近いと思う。居酒屋でもずっと音楽の話をしてますし。あとは……ラーメン?」

河上「僕、ラーメン二郎の直系はあまり食べられてないけど、それに関してはどう? マジで……〈もう何でもいいや〉みたいな日に資本系のラーメンを結構食べちゃうんだよね。〈中村とうよう:0点〉みたいなラーメンよ? 〈2026年という時代にこんなにも安っぽいラーメンが作られたことを後世の歴史家のための資料として永久保存しておくべき一杯〉的なさ」

秋田「『Thriller』ラーメンね※」

※マイケル・ジャクソン『Thriller』のリリース時、『ミュージック・マガジン』の当時の編集長・中村とうようがクロスレビューで0点をつけて酷評した

河上「うん。というか、ラーメンよりカレーかも。カレーはみんな好きだよね」

秋田「恥ずかしいけどね、カレーが好きなインディーバンドって、今となってはちょっとステレオタイプすぎる気もするよね(笑) 」

河上「確かに! やめた! カットで!」

――その自意識は何なんですか(笑)。

河上「すみません、自意識過剰なもんで……」

――もしかして、過去にステレオタイプな扱われ方をして嫌な思いをしたんですか?

河上「いや、そういうわけではなく。自意識が無さすぎる人を見て〈うわぁ……〉って思うことが多くて。表現活動をなさっている方々が、果たしてどれくらい自分の作品を客観視しているのだろうかって、いつも疑問で。自分に対してもそう思ってしまうだけなんです」

秋田「僕らは性格が悪いのかもしれないけど、〈同じ時代を生きているバンドとしてどうなんだろう〉とか考え込んじゃうタイプで、自分たちの振る舞いも意識しちゃうんですよね。2026年にギターを天に掲げて轟音のシューゲイザーをやっているバンドを始める人とか考えられないじゃないですか」

――そんな超常現象みたいな言い方で……(笑)。

秋田「いや、意味があることが全てではないし、意味のないことも素晴らしい。自己実現も大事です。でも、独自性や同時代性を加味すると、何も考えていないようにも見えてしまって、楽しいのかなって」

河上「AI生成のレポートと一緒だよね」

秋田「〈単位は取れるけどさぁ〉みたいな……」

――めっちゃ大学生っぽい喩え(笑)。好きなものじゃなく、嫌いなもので目線を合わせるタイプなんですか?

河上「めっちゃそうです」

秋田「〈何が好きかより何が嫌いかで自分を語れよ!〉みたいな」

河上「逆・偽ルフィ!」

 

ポップに幸あれ!

――(笑)。その点、中南でレゲエやダブを持ち出せば他のインディーバンドとの差異化は図れるじゃないですか。座布団忍者では、どうやってそういったジャンルとの距離感を保っているんですか?

秋田「確かに差異化は簡単にできるかもしれませんが、いわゆる〈ワールドミュージック〉をガサツに取り入れることはしたくないんです」

河上「品性がないよね」

秋田「そう、何も考えないと渋谷系仕草になるというか。90年代に渋谷系が色んなものを引用できたのは、バブルの余波と消費することに開き直る若者精神みたいな、そういう時代背景があったからだと思うんです。

ただ、今の露悪的で情勢の荒れている世の中では、何かを引用する上での重たさも必要になってくる。批評性が全てとまでは言わないけど、批評性のない人が増えすぎているなというのは感じますね」

河上「僕らのこういうスタイルに関してさ、叱ってくれる人もいなくなったじゃん? 色んなものを引用したら〈あんた偉いね!〉とか〈サブスク世代の星や!〉みたいな感じで。自分たちのレビューを見てても〈サブスク時代ならではの音楽〉ってよく書かれてるんですけど、むしろ自分たちが影響を受けた音楽はサークルとか属してるコミュニティや親族から口伝で教わったものが多かったりして。土着的なものこそないですけど、自分たちの音楽には必然性があると思ってるんです」

――批評性や野心を抱えている上で、座布団忍者はルサンチマンをガーってぶつけるのではなく、とても聴き馴染みがいい形でアウトプットしているじゃないですか。例えばアルバムでは、聴き馴染みのよさを保つというバランス感について意識しましたか?

河上「めっちゃ考えたよね!? 〈ここまでやったら聴いてくれないんじゃないか?〉みたいなギリギリのラインを探したというか」

秋田「田中宗一郎さんのすごい好きな言葉があって。〈ポップの役割は果てしなく広がる無知と無関心の地平に語りかけること〉っていう。色々な鬱憤があるけど、それをアバンギャルドなものとして吐き出すよりも、我々はポップなものが好きで育ってきたわけで、ならポップであることを放棄しないっていうカッコよさを追求したいなと考えていました。それで……俺この前良いこと言ったんだよな……ちょっと待ってくださいね(Xを開く)」

――自分の名言を引用するんですね(笑)。

秋田「……あ、出てきました。〈ポップミュージックとは軟弱の裏返しではなく、あらゆる思惑を封じ込め、強い威力を持ちながら幅広くリーチすることが可能な魔法。ポップに幸あれ!!〉ですね。本当にそうだなって。ひ弱に思われたくはないですね。バシッと決めてガンってくるポップが一番強いと思います」

河上「わかる。最近練習が楽しくてね。この前のリリースライブは8人編成だったんですけど、それが本当に良かったんですよ。中南の先輩とか後輩を呼んだんです、ダブワイザーも入れましたし」

――今の20代のバンドって、ダブワイザーと一緒にライブする方がジャンルを問わず多いですよね。

河上「確かに。ライブで卓がバーンってあるのって良くないですか?」

野﨑「楽しいよね(笑)」

秋田「なんというか……サイケとかシューゲイザーにみんなが求めているものが大きすぎて、結果的にダブにもそれに該当するものがあるってことに気づき始めた人が多いんだと思います。2010年代から続いていたドリームポップのような音が頭打ちになったら、80年代のようなノリでもう一回いわゆる〈ワールドミュージック〉が来ると思うんです。それでリバーブとかディレイの快感を同時に求めたらダブに行き着くっていう」

河上「空間を広げるだけじゃなくて、抑制する気持ちよさがダブにはあるよね。それでスネアがパンって鳴るっていう」

 

衒っても仕方ない

――座布団忍者には3人のソングライターがいますよね。作曲の段階から、そういった自分たちのポジショニングについては考えているのでしょうか?

秋田「僕と(河上)憲将は文脈とか構成を考えちゃうけど、(野﨑)千鶴ちゃんの曲は普段の暮らしから出てきた感じで、衒ってない感じがリアル」

野﨑「まぁでも〈生活〉みたいに思われるのは嫌というか……」

秋田「ごめん!」

野﨑「(笑)。まぁ事実ですね。衒っていても仕方ないなというか、自分がカッコつけたところで良いものができた試しがないんで。何も考えずに作ったものに〈それいいね〉って言われることが多いので、もう何も考えないようにしています。“快速電車”とかはそのまんまの歌詞ですね」

河上「千鶴ちゃんには勝てない部分があるなって思います。80年代後半に教授(坂本龍一)と村上龍の対談で、忌野清志郎がどんなに〈愛し合ってるかい?〉って言っても、中島みゆきの〈お風呂を出て髪をとかしています〉みたいな一節に勝てないっていうニュアンスのことを言われてて。それは女性であることに限らずとも、自然体でいるという点で似たものを千鶴ちゃんには感じます」

――では河上さんは清志郎側というか、奇を衒うタイプなんですか?

河上「歌詞に関してはナチュラルに出せないですね。むしろイライラしてる時にボロって出てくる。アルバムのラストの“貴方は踊るのをやめない・愛のありか”はそんな感じで作りました。イライラしている時ほど優しい歌詞が出てくるなって、最近気づいたんですよね」

秋田「良いやつだ」

河上「はい、良いやつです」

 

チーチャとアフロポップと歌謡曲に共通する批評性

――作曲はどうですか? リファレンスを設定して進める方式でしょうか?

河上「リファレンスはありつつ、結果的に今ある音楽とは違うものになるようにはしています」

秋田「渋谷系的な作り方ではないよね」

河上「そもそも、僕らいいとこの坊ちゃんでもないし(笑)」

秋田「〈ロックステディのこの感じが欲しいな〉とかは思いますけど、特定の曲に似た曲をオシャレにやりたい気持ちは微塵もない。むしろ曲の中にあるパッションの部分を引っ張ってくることを考えてます」

――その点、アルバム冒頭の秋田さんが作った“Mr.Dの逆襲”は、チーチャのスタンダードなフレーズから始まりますよね。

秋田「チーチャとアフロポップと歌謡曲をやりたくて。でも、そういうのは節操ない風に思われがちというか。僕は批評性みたいなものを考えるタイプなので、その3つは繋がっているという認識なんです。ペルーのチーチャというのは、コロンビアの音楽であるクンビアにアメリカからやってきたサーフロックのエレキギターを取り入れた音楽です。アフロポップも、西洋のポピュラーミュージックの波を取り入れつつアフリカらしさを保っている。歌謡曲も、元を辿れば西洋からの外圧のようなものから影響を受けていますよね。

そういうごちゃ混ぜの感覚が大事だと思ってるんです。自分のルーツを大切にするのは良いことだけど、〈外のものを取り入れちゃいました〉みたいな感覚も大事にしたいし、ダンスフロアはそうあるべき。ダンスを軸にしたアルバムの1曲目だからこそ、〈ダンスにおいてはごちゃ混ぜの方が面白いぞ〉って言いたかったんです」

――それで『Still, You Dance』というタイトルに繋がると。

河上「出来た曲を、あまり考えずにポンポン入れていったので、思ったよりコンセプチュアルなアルバムにならなかったけど、〈ダンス〉は軸になってると思います。ただ、次はアルバムを見据えて曲を作りたい」

秋田「今回は〈ごちゃ混ぜ〉がキーフレーズというか。Gacha Popかも」

河上「今になってGacha Popを名乗るのはヤバい(笑)※」

※Spotifyプレイリスト〈Gacha Pop〉が話題になったのは2023年

秋田「(笑)。作品としては時系列で並べてるつもりなんですよね。アフロポップから千鶴ちゃんの“待合室”でドゥーワップになって、それからロックステディとダブに行ってギターポップとAOR、そこからディスコも入って現代のインディに戻るっていう」

――時代を下って、そこからまた戻ってくるというか。

秋田「それで一応まとめた感じですね。あと、今のインディにはダンスが足りてないって前に話したよね?」

河上「うん」

秋田「ダンスに嫌悪感のあるようなタイプの人もいるかもしれないけど、もっと根源的で、部屋の中で踊れるようなものを目指したかったというか」

 

フェイクにソウルが宿るカッコよさ

――なるほど。金子さんはドラマーとして様々なジャンルを叩く必要があるじゃないですか。そこで悩むことはなかったんですか?

金子「単に言われた通りにやっただけなんです。もちろん、作曲者の意図を汲み取って自分なりに解釈はしたけど、3人が作家なんで、僕は演奏家に徹しているという」

河上「〈スネアロールじゃない、32分音符の刻みなんだ!〉とかね」

金子「そうそう(笑)」

――ドラムを起点に展開が決まった曲はあります?

秋田「“Vanishing Girl 2”はライドとかXTCを意識していたんですけど、途中でつまんなくなっちゃって、そこからリズムを変えたんです」

河上「千鶴ちゃんがワールドミュージックに傾倒している時期のポール・サイモンの曲を流していて、それが面白かったんですよね」

――『Graceland』ですか?

河上「そう。フェイクにソウルが宿るカッコよさがあった。そういうのが好きなんです。サンバなどを取り入れたレッド・ツェッペリンの『In Through the Out Door』とか、聴くと爆笑しちゃうんですよ」

秋田「憧れを持って近づこうとすると誤解が生まれるんだけど、むしろそれがすごくカッコいいというか」

――しかも、座布団忍者の場合、色んなものをごちゃ混ぜにした音楽に日本語のメロディが乗るという面白みもありますよね。

秋田「俺たちが英語でロックステディをやっても面白みはないし、リアルさがないんですよね。嘘をついているような感じがして」

――嘘は嫌だけどフェイクは好きなんですね。

河上「そうそうそう」

須藤朋寿(NEWFOLK)「偽物が本物になる瞬間が好きなんだよね」

秋田「そうです。プラスティックソウルというか」

 

Lil 乳業あらため座布団忍者

――バンド名も純和風ですし。そもそも、なんで〈座布団忍者〉なんですか?

秋田「エゴサしやすいから……。〈座布〉って〈ダブ〉みたいだし(笑)」

河上「あと〈忍者〉って入ってれば海外ウケもしそうだなって(笑)。それもセルフオリエンタリズムというか、〈忍者って本当にいるの?〉みたいな曲解されたイメージをあえてやったというか」

金子「最初は〈Lil 乳業〉だったよね?」

河上「そう、最初は〈Lil 乳業〉だ! でもラッパーすぎるからやめました」

――(笑)。座布団忍者としての活動が始まったのが約一年前で、それでアルバムを出してリリースパーティーもソールドアウトとなると、バンドとしてとても順調なのでは?

秋田「どうなんでしょう。NEWFOLKも大好きですし、タワレコにポップを書いてもらったり、ゆるふわギャングのレイヴに呼ばれたりとか、嬉しいことは多いんですけど、もっと凄いことになるのを想像していましたね」

――シーンを作りたいとは思わないんですか?

秋田「僕は体力があるから頑張りたいけど、みんなフットワークが重いから足並みが揃わないと思います(笑)」

野﨑「レコーディングの時もね、10時間くらい運転してて」

河上「そうそう。僕らはシーンに興味がないけど、たまに秋田くんに悪口を言うよね。〈こんなん出てきたんだけどさぁ、これさぁ!〉みたいな(笑)。〈この人たちとやっていきたい〉って思えるシーンがあるわけではないんです」

秋田「東京インディーの時代とか楽しそうだったなって、未だに思ってます」

河上「うん、2010年代への憧憬はあるかもしれない」

秋田「〈『下北沢インディーファンクラブ』というイベントが開催されていると聞いたのですが……〉みたいな。それでライブハウスに行ったら……ねぇ?」

河上「参っちゃうよね」

秋田「wanbedとか生活の設計とか、から探しとか、友達のバンドはカッコいいし好きなんですけどね。ただ……みんな悪口を言わなすぎという感じはありますよね」

 

あ、なんかいい風

――では、最後にざっくりした質問を投げたいんですけど、〈いいもの〉って何だと思います?

秋田「えー、んー……」

(おもむろに服を脱ぎ始める)

秋田「……クサい言い回しをすれば、急に視界がパッと開けて、根拠のない希望が湧き上がってくるもの。でも、その上で文脈だったり批評性は無視しちゃいけないと思います」

河上「ブルー・ナイルの“Let’s Go Out Tonight”です」

野﨑「私も……」

河上「ブルー・ナイル?」

野﨑「いやいや(笑)。なんというか、次の世代が音楽を作る原動力になるようなものを蔑ろにしたくないなって気持ちはあるんですけど、まぁ自分が良いと思ったらそれで良いというか。各々好きにしてほしいです。他人のことはわからないので!」

――(笑)。批評性であったり〈蔑ろにしたくない〉という想いであったり、客観性が強いですね。

野﨑「そういったものを蔑ろにしてるのって、自分が馬鹿にされてる気分になることもあるし。〈こいつ何も考えてないな〉って」

秋田「例えば、ギターをフルテンにしてジャーンって弾いて拳を突き上げるみたいな、そういうのもカッコいいと思うんですけど、批評性とかを踏まえた方が感動にありつけると僕は思っちゃうんです。サニーデイ・サービスとかが紆余曲折を経て今の3人でガーンってやってるのは説得力があるというか、無条件でカッコいいと思えます」

河上「そう、本当にリアルな人はカッコいい」

――金子さんはいかがですか?

金子「僕はバンドだと3人の意見に大きく頷く係だから、あまり意見を聞かれないんですよね。ただ……〈いいもの〉って絶対的ではなくて、自身の経験に基づいて何かが呼び起こされるものを〈いいもの〉と呼んでいるような気がするんです。言語化できない反応というか」

野﨑「〈知ってるわ、これ〉みたいなね」

河上「そうそうそうそう! 〈知ってた気がする〉みたいに感じると嬉しい」

金子「だから〈いいもの〉に権威があるわけではない」

秋田「あ、さっきの発言違ったわ」

――えっ(笑)。

秋田「〈いいもの〉は……〈あ、なんかいい風〉ですね」

河上「おっ」

秋田「それは小学校の校庭で感じた風かもしれないし、まだ知らない風かもしれない。けど、なんかいい風。そういうものなのかもしれない」

野﨑「私もそれで。じゃあ、ここまで全部嘘でした」

河上「うん、全部嘘です! バンドなんてやってません、アルバムも出してませーん」

 


RELEASE INFORMATION

座布団忍者 『Still, You Dance』 NEW FOLK(2026)

■DIGITAL
リリース日:2026年4月15日(水)
配信リンク:https://linkco.re/606z0dDd

■CD
リリース日:2026年6月3日(水)
品番:NFD-028
価格:3,000円(税込)

TRACKLIST
1. Mr.Dの逆襲
2. 待合室
3. Summertime
4. 雑踏の中で
5. Vanishing Girl 2
6. 誰かが見た幻
7. ロボット
8. 快速電車
9. 川を下って
10. 貴方は踊るのをやめない・愛のありか

CD版のみボーナストラック
11. Introduction In a Waitng Room, Only With You
12. 誰かが見た幻(lovely ver)
13. 快速電車(Demo)
14. 雑踏の中で(Demo)
15. 誰かが見た幻(Demo)

■Credits
- 座布団忍者 -
秋田温奏 - guitars, vocals (M6)
野﨑千鶴 - electric bass, vocals
河上憲将 - guitars, vocals, percussions, synthesizer, programming, etc.
金子凌大 - drumms, percussions

- Guest musician -
安藤玲音 (from brooks) - keys (M1, M7, M8, M10) synthesizer (M7)
小野真央 - flute (M4, M8)

Mix & Recording: 樫村治延
Mastering: 風間萌 (studio Chatri)
Artwork: ミウラタイチ
Photo: kanoparo

 

■Link
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