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進化を遂げたクリエイティブ面での〈成長〉

2つ目は〈成長〉。毎年大きな飛躍を遂げている藤井 風だが、今年はクリエイティブな面で成長、進化したように思う。紅白で披露される“満ちてゆく”は藤井 風が放つ王道のバラードでありながら、これまで“帰ろう”などでも描いてきた死生観に加え、映画のストーリーを要約するかのように深い愛にまつわる表現が見て取れる。

そして7月に配信リリースされた“Feelin’ Go(o)d”では、“花”でもコラボレートしていたA.G.クックを再びプロデューサーに起用。これまでの藤井 風の楽曲からは聴こえてこなかった煌びやかなシンセサウンドや、R&Bとエレポップの成分を調合したような独自のリズムトラックは新鮮で、藤井のボーカルも1曲の中でさまざまな発声・歌い方を駆使している。

楽曲でなくライブでのパフォーマンスにも成長の跡が見える。8月に開催された日産スタジアム公演〈Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”〉は、2日間で14万人を動員。観客がどよめいた驚愕の登場の仕方、演劇的な要素が含まれたパフォーマンス、誰もが想像し得なかったアレンジで披露された“旅路”など、随所にエンターテイナーとして成熟していく姿が見られた。この公演の模様はBlu-rayとCD、それぞれ好きな形態で当日の興奮を何度も味わうことができる。

藤井 風 『Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”』 HEHN/ユニバーサルシグマ(2024)

藤井 風 『Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”』 HEHN/ユニバーサルシグマ(2024)

 

〈挑戦〉に満ちた2024年を経て2025年へ

3つ目のキーワードは〈挑戦〉だ。ここまで綴ってきたこと全てに当てはまるが、藤井 風の活動は1つ1つが挑戦に満ちている。ピアノ1台でのアメリカツアーも、会場規模がアリーナクラスで行われたアジアツアー〈Best of Fujii Kaze 2020-2024 ASIA TOUR〉も、その全てが挑戦だ。

10月にオンエアされた特番「NHK MUSIC SPECIAL 藤井 風 ~登れ、世界へ~」には、ひたむきに挑戦する藤井 風が映し出されていた。今後発表される予定の3rdアルバムの制作を行う藤井だが、そこにはさまざまな壁にぶつかり苦悩する姿があった。順風満帆に見えるが、彼が自らに課しているハードルは我々が思う以上に高いようだ。

「もう頑張らない理由が何もない」――藤井 風はNHK特番の中で少し涙ぐみながらそう口にしていた。〈アメリカ〉で制作され、2024年の〈成長〉と〈挑戦〉が反映されるであろう次なるアルバムは、藤井 風をどこへ向かわせるのか。2025年の藤井 風は、私たちの想像をはるかに超えたものを届けてくれるに違いない。