指揮台に上がると空間が浄化された静寂と緊張感と歌心を体感できた指揮者アバド。音楽家としての基礎となったノーノやポリーニと友人関係を築いて行ったミラノでの活動、特にノーノ作品上演に対する静かな闘志や、当時の芸術・音楽と政治の環境の詳細な記述が目を引く。また卒業論文がムソルグスキーのオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」の研究だったことやポリーニがショパンコンクール後国際活動せず自省と学びの時間を確保したことと同様、アバドもアメリカのクーセヴィツキー指揮者コンクール1位を獲得後それを確保したこと、家庭のことなど、これまで刊行されたどの書籍よりも踏み込んだアバド伝記だ。