一切デジタルで洗われていない、アナログそのもののサウンドが鳴り響くLPレコードが誕生!

 ドイツ・グラモフォンが最高の状態のマスターから最高品位のLPレコードを制作する〈オリジナル・ソース・シリーズ〉を立ち上げた。

 第1弾は1⃣クライバー指揮ウィーン・フィル/ベート-ヴェン:交響曲第7番、2⃣カラヤン指揮ベルリン・フィル/マーラー:交響曲第5番、3⃣アマデウス四重奏団&ギレリス/シューベルト:ピアノ五重奏曲“ます”、4⃣アバド指揮ロンドン交響楽団/ストラヴィンスキー:“春の祭典”の4タイトル(筆者は4⃣のみ未入手)。

CARLOS KLEIBER, VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA 『ベートーヴェン:交響曲第7番』 Deutsche Grammophon(2023)

HERBERT VON KARAJAN, BERLIN PHILHARMONIC ORCHESTRA 『マーラー:交響曲第5番』 Deutsche Grammophon(2023)

AMADEUS STRING QUARTET, EMIL GILELS, RAINER ZEPPERITZ 『シューベルト:ピアノ五重奏曲『ます』』 Deutsche Grammophon(2023)

CLAUDIO ABBADO, LONDON SYMPHONY ORCHESTRA 『ストラヴィンスキー:バレエ『春の祭典』』 Deutsche Grammophon(2023)

 とにかく鮮度の高い音だ。筆者はまず3⃣に針を降ろして、その生々しさに驚嘆した。これまでに聴いたLP、CDにも増して、アマデウス・メンバーの迸るような弓の走り、コントラバスの鮮烈なリズム、ギレリスの清冽で力強いピアノに息を呑んだ。ここまでくると歴史的名演のナマに立ち会うのと同じ〈体験〉である。

 1⃣は、まさにCDのネイキッド・バージョンだ。音に潤いがあり耳に快いのはCDだが、お化粧抜きの今回のLPは音の立ち上がりのスピードが圧巻! 名門ウィーン・フィルのメンバーが能力の限界ギリギリまで攻めた演奏をしているのが目に見えるようだ。

 2⃣は冒頭のトランペット・ソロから音色の輝き、緊張感が凄く、続いて現れるオーケストラの総奏のド迫力、色彩の爆発に圧倒される。カラヤンがこの録音に賭けた本気度が音からひしひしと伝わってくる。CDは豊かさと安定感のある音にマスタリングされていた。

 これらは元々1970年代の4チャンネル録音で、これまでのLPやCDは2チャンネルにトラック・ダウンした二世代目のアナログ・マスターを用いていた。今回は世代を遡った4チャンネルのオリジナル・マスターをそのまま使い、高品位のアナログ・プロセスで2チャンネル化し、カッティングしたという。つまり一切デジタルで洗われていない、アナログそのもののサウンドが鳴り響いているのだ。すべての音楽ファンに心からお薦めしたい!