来日ツアーを開催中のアース・ウィンド&ファイアー。彼らの6作目のアルバム『That’s The Way Of The World』(邦題:暗黒への挑戦)が、1975年3月3日のリリースから半世紀が経った。ソウル/ファンクといったジャンルを超えて聴き継がれているこの名盤の音楽性に、初の単著「J-POPの音楽的冒険 レアグルーヴ感覚で楽しむ日本のメジャーポップス」が話題の音楽家TOMCが迫る。 *Mikiki編集部
“September”などダンスクラシックだけではないアルバムアーティスト
アース・ウィンド&ファイアー(EW&F)という名前を聞いて、まずどんな音楽が浮かぶだろうか──多くの方は、“September”(1978年)や“Let’s Groove”(1982年)といったダンスクラシックを想像するかもしれない。
多数のディスコヒットを持つミュージシャンの宿命か、EW&Fは素晴らしいアルバム作品を送り出してきたにもかかわらず、楽曲単位での注目が先行しすぎてきたきらいがある。幾つものキラーチューンが今なお高い知名度を誇る一方、オリジナルアルバムの単位で彼らが親しまれる機会は、現代ではめっきり少なくなった印象だ。今回、EW&Fの最初の大ヒットアルバムかつ不朽の名盤である本作『That’s The Way Of The World』がリリース50周年を迎え、光を当てるチャンスをいただけたことを心から嬉しく思う。
ジャズ、ブラジリアン、アフリカ音楽を織り交ぜて大成功した名盤
元々、本作は同名の映画のサウンドトラックとして企画されており、監督はブラックスプロイテーション映画の代表格「スーパーフライ」(1972年)でプロデューサーを務めたことでも知られるシグ・ショア。カーティス・メイフィールドによる「スーパーフライ」のサントラ盤が(ときに映画との関連性が忘れ去られてしまうほど)多くの音楽ファンに愛されているように、EW&Fの本作もまた、非常に大きな成功を収めることとなった。アルバムおよびシングル“Shining Star”は、ビルボードアルバムチャートの総合/ソウル部門の双方で1位を記録。米ローリング・ストーン誌が選ぶ〈The 500 Greatest Albums Of All Time〉(2012年/2020年)にもピックアップされており、いわゆる〈歴史的名盤〉の誉れ高い作品である。
アルバムは冒頭からタイプの異なる2大ヒットシングル──ハードかつ洗練されたファンク“Shining Star”と雄大なスローナンバー“That’s The Way Of The World”が畳み掛けるように配され、その後もアッパーな“Happy Feelin’”・“Yearnin’ Learnin’”・“Africano”とバラード調の“All About Love (First Impression)”・“Reason”が交互に並ぶ。加えて、ジャズシーンでの経験に裏打ちされた高度な演奏技術やブラジリアン/アフリカンテイストのごく自然な挿入、切れ味鋭いサウンドプロダクションなど、さまざまな要素が掛け合わさることで、EW&Fは同時代のファンクバンドの中でも頭ひとつ抜けた存在へと上り詰めていった。
このEW&Fの成功に、少なくない貢献を果たしてきたのがチャールズ・ステップニーである。