アース・ウィンド&ファイアーの来日ツアーが、東京・大阪・愛知にて開催された。前回からおよそ8年ぶりとなった今回の来日公演には、ナイル・ロジャース&シックを特別ゲストとして迎え、極上のファンクステージを各地で繰り広げられた。そんなゴージャスなツアーより、音楽ジャーナリストの林剛が目撃した横浜公演初日の模様をお届けする。 *Mikiki編集部
総勢12名で展開する〈ベスト・オブ・EW&F〉
前身バンドの結成から今年で56年目となるアース・ウィンド&ファイアー(EW&F)。2016年に他界したリーダーのモーリス・ホワイトが第一線から退いた後も、モーリスの弟ヴァーディン・ホワイト、フィリップ・ベイリー、ラルフ・ジョンソンの古参3人を中心にツアーを続け、近年はヴィクトリア・モネの曲に客演するなど若手とも交流を深める彼らが8年ぶりに日本公演を行った。今回は昨年9月にも来日したナイル・ロジャーズ&シックを帯同してのツアー。ソールドアウトとなった横浜公演の初日、会場のぴあアリーナMMには幅広い層のファンが詰めかけた。
来日メンバーは2017年の公演と基本的には同じだが、直前になってヴァーディンが〈医療処置が必要なため〉との理由で今ツアーへの参加をキャンセル。代役をレイモンド・マッキンリーが務めることになった。レイモンドは、シーラ・E.のバンドで活動し、日米混合ファンクバンドのNothing But The Funkにも参加しているオークランド出身の凄腕ファンクベーシストだ。
ナイル・ロジャーズ&シックが外部プロデュースを含むヒット曲連発の華やかなステージを披露した後、セットチェンジを挟んでEW&Fが登場。往年の名曲がダイジェスト的に流されるイントロを経て”Shining Star”でスタートしたライブは70年代のヒットを中心とした〈ベスト・オブ・EW&F〉的な内容で、それらを総勢12名で展開していく。バックスクリーンも効果的に使い、曲やアルバムをイメージしたカラフルなCG映像でEW&Fの世界に観客を没入させる。
ステージには、後列両サイドにミュージカルディレクターを務めるキーボードのマイロン・マッキンリーとドラムのジョン・パリス、後列中央にアース・ウィンド&ファイアー・ホーンズの3人(サックスのゲイリー・バイアス、トランペットのボビー・バーンズ、トロンボーンのレジー・ヤング)、中列にギターのモーリス・オコナーとサージ・ディミトリジェヴィク、最前列にメインボーカル兼パーカッションとしてフィリップとラルフ、フィリップの愛息フィリップ・D・ベイリーJr.、B・デヴィッド・ウィットワースの4人が立つ。フィリップは故モーリス・ホワイトのパートもこなし、曲によっては他の3人とリードを分け合う。

”That’s The Way Of The World”から”September”まで、EW&Fの存在の大きさを改めて知った贅沢なライブ
”Let Your Feelings Show”で軽快に滑走し、80年代後半のR&B No.1ヒット”System Of Survival”を軽くプレイして”Serpentine Fire”へと移行。ここでは代打で初参加となるレイモンドの見せ場も早々に用意され、ファンキーなベースソロが披露された。この流れで”Jupiter”へと続き、小気味よい”Sing A Song”やビートルズのカバー”Got To Get You Into My Life”も含めて、前半ではファンクバンドとしての力量を改めてアピール。”Kalimba Story”ではモーリスの愛器であったカリンバ(親指ピアノ)をフィリップが演奏し、幻想的な音色を響かせた。
観客にスマホのライト点灯を促し、会場をスピリチュアルな空気で包み込んだ”Devotion”をはじめとするバラードタイムも忘れ難い。フィリップ最大の見せ場となる”Reasons”ではファルセットの美声を響かせ、ゲイリー・バイアスのサックスとも掛け合う。力強いインスト”Rock That!”を挟んで、AORマナーの”After The Love Has Gone”、グループのアンセム”That’s The Way Of The World”といったスケールの大きいバラードも歌い上げ、優美なEW&Fワールドへと誘う流れは格別の尊さだ。

軽快なスキャットソング”Beijo aka Brazilian Rhyme”を演奏しながらのメンバー紹介を経て、終盤は、日本で人気の”Fantasy”を筆頭に、イントロが流れただけで歓声が上がる定番曲を連発。”Boogie Wonderland””Let’s Groove””September”のダンスナンバー3連発でディスコ全盛期に連れ戻し、華々しいクライマックスを迎えた。再び高揚感を煽ったラストの”In The Stone”まで、あっという間の90分。高度なスキルによるパワフルで壮大なショウは、EW&Fの存在の大きさを改めて知る贅沢な時間だった。
SETLIST
EARTH, WIND & FIRE JAPAN TOUR 2025
2025年4月19日(土)神奈川・横浜 ぴあアリーナMM
1. Intro (Video)
2. Shining Star
3. Let Your Feelings Show
4. System Of Survival
5. Serpentine Fire
6. Jupiter
7. Sing A Song
8. Got To Get You Into My Life
9. Kalimba Story
10. Departure
11. Devotion
12. Reasons
13. Rock That!
14. After The Love Has Gone
15. That’s The Way Of The World
16. Beijo aka Brazilian Rhyme
17. Fantasy
18. Boogie Wonderland
19. Let’s Groove
20. September
21. In The Stone
4月19日(土)ぴあアリーナMM公演セットリストのプレイリスト:https://sonymusicjapan.lnk.to/EWFJPTour2025