©Gilad Hekselman

4人組として新たな領域を獲得した移籍作をマイケル・リーグ率いるグラウンドアップからリリース!

 昨年もリーダー公演で来日しているベン・ウェンデル、ミキサーやシンガー・ソングライターとしても活躍するネイト・ウッドら、個人活動でも知られる強者ミュージシャンたちで結成されたグループがニーボディだ。ビート・サイエンティストたるデイダラスとのブレインフィーダー盤『Kneedelus With Daedelus』(2015年)他いろんな指針を持つアルバムを出している彼らだが、その音楽性を説明するなら創意に満ちた現代エレクトリック・ジャズ・バンドとなるだろうか。結成25周年を迎えるニーボディを代表して、テナー・サックス奏者のウェンデルがメール取材に答えてくれた。

 「このバンドを始めたときはみんな若かったので、長続きするとは思ってもみませんでした。私たちはお互いの曲を覚えること、友人たちをライヴに呼ぶこと、ツアーのブッキング方法を考えることだけに集中していました。バンドの民主的な成り立ちが私たちを支えてくれています。なぜなら各メンバーの意見が反映され、私たちはみんな音楽に平等に貢献していると感じているからです。バンドとして25年目を迎え、この瞬間が私たちと私たちの物語の一部となってきたオーディエンスにとってどれほど特別であるかを心から実感しています」

 結成時と現在、バンドとして不変の部分がある一方、変化してきているところもあるだろう。

 「私たちのバンドは、何よりも自分たち自身のサウンドを見つけることに重点を置いてきました。そして、それは何年たっても変わりません。変化したことは、逆境に直面した際により容易に対処できる成熟度です。ですので、トラブルに際してもより集中して前向きでいますね」

 ところで、不動のクインテットとして活動してきた彼らだが、ここにきて大きな変化が訪れた。なんとエレクトリック・ベーシストのカーヴェー・ラステガーが脱退。そこで、マルチな才能を持つドラマーのネイト・ウッドがベース奏者を兼ねるようになった。ウッドは、ギタリストのウェイン・クランツの2016年の来日公演にはベーシストとして同行していた。

 「カーヴェが去った後、私たちは後任のベーシストを雇うことを検討しました。しかし、その時点ではネイトがfOUR(ベースとキーボードとドラムを同時に操りながら歌うプロジェクト)をしていたので、彼がベースとドラムを同時に演奏する方がやりやすかったのです。また、新しい人物が我々のレパートリーや広範な流儀を学ばなければならないのは気が遠くなりますね。我々には学ぶことがたくさんあるんですよ」

KNEEBODY 『Reach』 コアポート(2025)

 4人で作られた2025年作は、新たな意欲がみなぎる内容に仕上がった。ネイト・ウッドの新しい役割は、ニーボディにどんなものをもたらしたのだろう。ウェンデルが作った“アナザー・ワン”という曲はそれを考慮に入れた曲であるという。

 「ベーシスト兼ドラマーとして新たな役割を担うようになったネイトは、グループのサウンドにおいてより中心的な存在となっています。彼は作曲上の決定をより多く行い、マテリアルを開発し、今まで以上にグループの舵取りをしていますね。それは悪意のある人物の手に渡れば強大な権力になりかねないのですが、幸いにもネイトは聞き上手で音楽がどこに向かうべきか、他のバンド・メンバーが何をしようとしているかについて優れた直感を持っています」

 パンデミック明け初のアルバムとなるアルバムは、『リーチ』と名付けられた。

 「『リーチ』という言葉には様々な意味がありますが、私たちにとっては新しい領域を求め発展し続けていることを意味します。これほど長い間一緒に活動しているバンドがあるというのは素晴らしいことです。なぜなら、物事は思いもよらない方向に展開していくことがあるからです」

 そんな今作は、マイケル・リーグ/スナーキー・パピーのグラウンドアップからのリリースとなる。ネイト・ウッドの2023作『Step Aside』も同社から出ているが、どういう経緯でグラウンドアップからのリリースとなったのだろう。

 「実は、私たちは常にスナーキー・パピー・ファミリーと素晴らしい関係を築いており、彼らのレーベルや音楽のプロモーション方法に大きな敬意を抱いています。もちろんネイトとのつながりもありましたが、なによりグラウンドアップは私たちの音楽にぴったりだと思ったからです」

 


ニーボディ(Kneebody)
現代ジャズ・シーンで活躍するトップ・プレイヤー達~ベン・ウェンデル(サックス)、シェーン・エンズリー(トランペット)、アダム・ベンジャミン(キーボード)、ネイト・ウッド(ドラムス&ベース)によるUSインスト・ジャズ・シーンを代表するグループ。2019年まではカーヴェー・ラステガー(ベース)が在籍していたが、現在はこの4人で活動している。2001年に東海岸のイーストマン音楽学校と西海岸のカリフォルニア芸術大学に通っていたメンバーたちが10代後半に出会い、リーダーが存在しない共同体的グループとしてロサンゼルスで結成された。R&B/ロック/ヒップホップ/エレクトロニクス等各メンバーの幅広い音楽性のもと、2005年のグリーンリーフからのデビュー作を皮切りにその後もドイツのウィンター&ウィンター、メジャー・レーベルのコンコード、フライング・ロータス設立のブレインフィーダー、U.K.のエディション等から次々とアルバムをリリース、グラミー賞にもノミネートされ既にベテラン・グループとして高い評価を得ている。2025年にマイケル・リーグが主宰するグラウンドアップに移籍、最新作『Reach』をリリース。