
ずっと同じことをしてるのが理想だけど、どうしても変わっちゃう
――越境する感覚、再定義する感覚に近いですね。その思惑はデビュー当初から持っていたのですか。
「『エス・オー・エス』(2010年)をリリースした頃は毎回メンバーを変えよう、ぐらいに思ってたんです。 自分なりの外交性がバンドに影響を与えるんじゃないかなと思って。でも、そのやり方は現代的ではないかも……という気もしてきたんです。ライブを見にきてくれても毎回メンバーが違うとお客さんも戸惑うだろうな、同じメンバーでやった方がわかりやすいかもって。それで同じメンバーで録音したりライブをやるようになったんです。で、今またライブごとに編成が違ってきてるんですけど(笑)。でも、それも偶然というか、自然にそうなった感じ。
当時、『ストーリー』(2011年)にかなりの手応えがあって、多重録音ではなくメンバーを固定してやっていくんだったら、新しい要素を入れないで、ひたすら同じようなアルバムを作っていく方が逆にリスキーだろう、そっちの方がワイルドサイドだろうと思ったんです。というのは、僕の好きなミュージシャンはアルバムごとに形を変えるんですよ。だから、そこも好きな先輩を反面教師にした感覚に近くて、逆張りなんです。シーラカンスじゃないけど、何千年と形を変えないものを目指す方がいいんじゃないか?と思って、実際、そうやってました」
――今、澤部さんがサポートしているムーンライダーズはまさに作品ごとにスタイルを変えてきたバンドの典型です。
「本当にそうです。もし、僕が作品ごとにガラッと変えていく音作りをしていたら、今、ムーライダーズにはいないかもなとも思います。僕らの周りだとceroとかがそういうタイプじゃないですか。すごく憧れるんですよ。でも、開店以来タレを継ぎ足し継ぎ足し作っていく老舗みたいな感覚の方がやってみたいと思ったんです」
――それはいわゆるスタンダードとはちょっと違う。
「もうちょっとビザールなものですね、自分の感覚としては」
――以前、〈良質なポップ〉という言い方がとても嫌だと言ってましたが。
「今もそうです。好きじゃないですね」
――タイムレスだとかエバーグリーンだとか。
「嫌ですねえ(笑)。出来上がったものがスタンダードになる、いろんなことをやってて結果それがスタンダードになる、エバーグリーンなものとして受け入れられるというのはわかるんです。でも、スタイルをガラッと変えないことはスタンダードを目指すこととは違う。
あくまで我々はバンドという形式をお借りしてるだけという感覚に近い。1960年代以降の幻想として、バンドはまだ有効なのでは?って。バンドをやってる人って、みんななんだかんだ飽きていろんなことをやるようになるんだけど、バンドという形式を借りてもっといろいろやれると思うんですね。
でも、難しいことに、僕ら(スカート)はバンドじゃない。特に始めた頃は〈バンドごっこ〉ですよ。なんだったら今でもそうかもしれない。我々の世代には昆虫キッズみたいな、本当にカッコいいバンドがいたわけじゃないですか。4人が集まって音を出さないと表れない魅力を持っているのが本来のバンドだと思うんです。そういう意味でスカートは、メンバーの替えはきかないんだけど、でも、替えもきいちゃう、そういうバンド。変えるつもりはないんだけど、どうしても変わっちゃう。本当は20、30年経っても同じことをやってるのが理想なんですけど、どうやったって変わっちゃうんだなと思いましたね」
――変わっちゃうのは残念なことなんですか。
「どっちもあります。残念な部分もちょっとある。基本的には、別にそういうもんだったんだな、結局抗えなかったか、うん、わかる、わかる、みたいな感じかな(笑)。でも、こういう形だったからこそ、こういう音楽を作ってこられたんだなとも思います」